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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
始まりの魔術
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後始末は強制労働

まさかの3部構成になってしまいました。それでも楽しんでいただければ幸いです。

 響き渡る鉄同士がぶつかり合う強烈な音。


 その次に響き渡ったのは鉄が地面を跳ねる音だった。


 周囲がそれを確認すると、それは剣の刀身であった。

 すぐさまキッドと兵士とキッド学園いる方に顔を向ける。


 キッドに振り下ろされた兵士の剣。その刀身は根元から無くなっており、兵士は信じられないものを見たかのように固まっている。


 逆にキッドは持っていたカタナを高々と掲げ、ニヤリと頬を緩めていた。どうだ?やってやったぞ。っとでも言っているかの表情で、兵士の顔を見据えていた。


 すると、1人の客が歓声の声を上げる。その歓声は拡散するように次の客。また次の客へと広がっていった。


「・・・!き、貴様!調子に乗るな!」

「へ!何度やっても同じだ!」


 は!っと意識を取り戻した兵士は未だに動揺していたが、わずかに距離を取りグラトンを看病している兵士の剣を奪い取り、再び剣を振り下ろす。


 キッドも兵士の行動に答えるように再びカタナを構え、返り討ちにしようと試みる。




「てめぇらいい加減にしろ!!」




 突如響き渡る野太い声に2人の動きは止まり、周りの客も静まりかえる。


 店の奥から聞こえた声の主は、仁王立ちでどっしり構え、キッド達を睨めつけながらこちらの方に歩き始めた。


「や、やべ〜。おやっさんだ」

「喧嘩沙汰だからな…当然といえば当然か……」


「おやっさん?おやっさんってのはどういう意味だ?」


 周囲の声が耳に届いたのか、疑問に持ちながらもそんなことを呟き、ソラに問いかける。


「え?ああ!おやっさんってのはここのオーナー兼料理長で、この店を1人で切り盛りしている人だよ」

「まじか!じゃああのうまい飯はあのあいつが作っているってことだな!?」


 ソラの説明に嬉しそうな言葉を口にするキッド。逆にソラはやってきたおやっさんにヒヤヒヤしていた。


「とりあえずてめぇら、まずはその剣をしまってくれませんかね」

「何を貴様!こやつは貴族である」

「うちはねお客さん。喧嘩ご法度なんだよ。そんな物騒なしまっちゃもらえませんかね?」


 やって来たおやっさんの声はとても静かで、途轍もなく思い声色だった。


 キッド、同じ兵士はそんなおやっさんに言いようもない恐怖が体全体に走り、すぐさま剣を鞘に収める。


「それじゃあ兵士様。未だそこに転がっている貴族様を連れてとっとと帰りな」

「な!亭主!こやつは!」

「最初に手を出して来たのはそこに転がっている貴族様だ。貴族様がソラにあんな仕打ちをしなかったらこんなことにならなかった」


 おやっさんの言った言葉にぐうの音も出ず、押し黙る兵士。そんな兵士の様にそれ見たことかと踏ん反り返っているキッド。


「だが、机及び残りの皿を割った坊主には後で話はあるがな」

「な!」


 だが、今度はキッド向けて言ったおやっさんにキッドは絶句する。

 それを見守る周りの者も、仕方ないよな。自分でやったことだもんな。と言った表情を浮かべる。


「もちろん。ソラも残るんだぞ?」

「ええぇぇ!!!ど、どうして!?」

「この坊主を連れて来たのは誰だ?」

「あ……」

「・・・わかったか?」

「・・・はい……」


 キッドが起こした行動にとばっちりを受けたソラは、強く元凶をキィ!と睨めつけ、睨めつけられた本人も悪い悪い。と手さぶりと苦笑いを浮かべていた。


「だが!我々はそこにいる者を捕らえなければ!」

「60万」

『え?』


 俺、キッド、兵士の3人は60万という言葉を聞き、素っ頓狂な声をあげる。


「あんたらが暴れて割った皿と机の代金。しめて60万ガドル。この2人の代わりに払うってなら連れて言っても構わないが…どうする?」

「わ、我々はモンテバーグ様をすぐさま王宮に運ばなければなりませんので!これで失礼いたします!」


 おやっさんの提案に拒否する様に、兵士達はグラトンを連れてそそくさと退散していった。


 兵士達は出ていったのにもかかわらず、ソラの顔は先程よりも真っ青になっていた。


「さて、坊主共。まず聞くが、金はあんのか?」

「俺は一銭たりとも持ってないぜ?」


 キッドは何も考えていないのか、カラカラとした笑顔で答える。


「持ってないって……。よくそこで蹲っている奴の目の前でそんなお気楽なことを言えたな……」

「は?」


 おやっさんの言葉通りに下の方を見てみると、


「6、60万……。60万か……。ハ、ハハ。ハハハ」


 とても暗い表情を浮かべているソラの姿だった。


 何故そんな表情を浮かべているのか?理由は簡単。お金だ。はっきり言って全然足りない。先程の食事代を考えても圧倒的に足りない。それほどソラはお金を持っていなかったのだ。


「それじゃあ、これからしばらくの間はタダ働きな」

「?!あ、あの!おやっさん?!働くのはわかるけど!どうして襟を掴んで連れて行くの?!」

「逃亡防止のためだ」

「そんな殺生な!」

「誰でもいい!誰か!」



「「助けてくれ〜〜!!!」」


 おやっさんに首根っこを掴まれ、逃げることのができない2人の悲鳴は、王都中に響き渡るのだった。

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