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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
形となる思い
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ゴブリン討伐クエスト・勧誘

前回に比べて短いです。

 夕食後は各自自由行動。


 俺は昨日と同じ様に武器の手入れを終わらせた後、早めの就寝しようと1人テントから離れた場所に向かおうとしたが、


「是非! その料理の腕を我らギルドに!」

「そう! その料理の腕はギルドにこそ相応しいわ!」

「あ、アハハ……」


 ギルドの食事処の勧誘を受け、眠ることが出来なかった。



 *



 正直宜しくない展開であった。


 生徒達はこの討伐クエストで自分の有能性をギルドの人、もとい、多くの人に知らしめる必要があった。


 だが、結果はどうだろう。


 有能性を見せ付けるどころか、役に立たない無能さを見せ付ける結果となってしまっている。


 しかも、無能やクズ、落ちこぼれと言われてきたソラの方が、自分の有能性を見せ付けている。力もあり、体力もあり、狩りもできて料理も出来る。そして、いじめを繰り返していた生徒達にも、自分が作った料理を分け与えるという心の広さもある。


 ただ唯一の汚点があるとすれば、魔法が使えないことだけである。


 1人で行動していようと、自らソラに近づいていき一緒にいる者も少なからずいるため、汚点という汚点ならないのだ。


 汚点を見なければ完璧と言える事に今更ながら気付いた生徒達はそれ故に焦る。落ちこぼれと思っていた少年の実力に気付いた生徒達はソラ以上の有能性を知らしめなければならなかったからだ。


 だが、生徒の誰1人としてソラの有能性を上回る力を持っていなかった。


 だからこそ考える。自分の有能性を見せ付けるのではなく、()()()()()()()()()()を……。



 *



「本当にやらないのか?」

「はい…すみません」


 ギルドの勧誘を丁重にお断りしていた。


 それでも尚引き止めようとする人も居た。


「どうしてもダメなの? 少しの間くらいなら別に構わないでしょ?」

「そうだぜ! 前まではギルドで金を稼ぎたいって言ってたじゃねぇか」

「キッド。お前は黙ってろ」


 真面目な話をしている中、口を挟んでくるキッドに低いトーンで黙らせる。


 キッド言葉を聞いていたギルドのメンバーはそれならどうして? っと尋ねてくる。


「・・・確かに、ギルドに入ってお金を稼ぎたいとは思っていました。でも今は、やらなくちゃいけないことがある。それを疎かにするわけにはいかないんです」


 真剣な眼差しでそう答えると、この場にいる全員が残念そうにするも、ようやく諦めてくれた。


「・・・それでは、俺はそろそろ戻りますね」

「ええ〜。せっかくだしもっと話そうぜ」

「そういうわけにはいかないだろう。それにみなさんにも迷惑が……」


かかる。


 立ち上がりながらそう言って退出しようと思っていた。




「うわぁぁぁあっ!」


 そんな声が聞こえてなければ……。

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