ゴブリン討伐クエスト・早朝
月明かりに照らされて、持っていたプレートをあの時と同じ様に空に翳し、そしてプレートを覗き込む。
プレートには何も写っておらず、ただ透き通っているだけだった。
これが本当に役に立つのか? と疑問に思いながらも、そのプレートを丁寧に磨き上げる。
ピカピカに磨き上げたプレートは月明かりで、より一層輝いて見えた。
「・・・さて」
洗い、磨き上げた剣や鎧を丁寧に片付け、持参していた干し肉を食べる。
どうせこうなることは目に見えていた為、事前に持ってきてあったのだ。
事前に持ってきていた干し肉を食べ上げると、着ていたローブを毛布代わりに木にもたれかかり、明日に備えて眠りについた。
「お!こんな所にいたのか!」
・・・眠りについ
「お〜い。・・・ひょっとして、もう寝てるのか?」
眠りに……。
「お〜い。起きろ〜」
・・・
「お!起きたか!いや〜、暇だから俺が飽きるまで付き合ってもらおうと…所で、俺は今どうして頭を掴まれているのでしょうか?」
「さあ、何でだと思う?」
目の前にいるキッドが、「暇」といったあたりから俺はこいつの頭をガシッと鷲掴みにしていた。
「まあ、100歩譲って起こすことはまだいいよ。うん。まだ…ね…」
「い、いやあの、今掴まれている所の力どんどん増していっているのですが……」
「でもな…起こした理由が暇だからなんて言うつまらない理由で怒らせるのは一体どう言うことかな?」
「あはは!そんなもの、俺がただ単に暇以上のそれ以下でも顔が握り潰されるように痛い???!!!」
キッド言葉共に、古代人必殺の『アイアンクロー』を発動。効果は抜群だった。
それからしばらくの間、キッドの痛み悶える叫び声があたり全体に響き渡った。
*
夜が明けて目を覚ました私は、グループテントから出て、山と山の間から差し込む太陽の光を浴びながら、体を大きく使って大きな欠伸をした。
ギルドの人の話では、昨日聞こえた叫び声は特に危険性のないという話らしい。私を含めた数名はそれを確認しようとしたが、
「明日は今日の倍以上の距離を歩く。その為、明日の為に体力を温存して備えるように」
そう言って、本日は解散になった。
叫び声が気になっていた私達も、歩く距離を聞いて顔を青ざめて早く就寝することにした。
早めに目を覚ました私は周りを見渡す。周りには誰もおらず、みんな就寝中だ。
だがやはりというか、当然というか、ソラの姿はどこにも見えない。
そこでふと思い浮かんだのは昨日の叫び声だ。危険性がないのなら、そこにソラがいる可能性が高いと考えた私は、みんなが眠っているので、できる限り大きな物音を立てずにその場所に向かった。
*
結果を言えば、そこにソラ居なかった。
林の中は、薄着では肌寒く感じる程度に寒く、ぶるぶると体が震えた。
しばらく林の中を少し進むものの、誰も発見することができなかったが、誰かの荷物が丁寧に並べられてあった。
その荷物はソラがつけていた鎧やローブだった。
どこを探しても見つけることができなかったソラの荷物を発見して安堵の息が漏れる。
私は安心して、白い息を吐きながら急いでみんながいる場所に戻った。
その少し離れた所では……
「はあ…はあ…」
ぶるぶると震え、真っ白な息を吐いている1人の少年を中心に、触れている地面が凍り、同じように木の幹の一部が凍りついている木が何本もあった。
「はあ…はあ……今日は、ここまでにするか」
そう言って立ち去っていく少年の左腕も、木の幹と同じように凍りついていた。




