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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
形となる思い
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ゴブリン討伐クエスト・移動

 その光景はまさに死屍累々だった。


 数日かかるであろう目的地に向かうため、とある少年の体力を見ながら歩く速度や距離を決めていたギルドの面々。


 だが、それよりも先にその少年以外の生徒達が次々と力尽きていた。


 力尽きている生徒達は、実に重そうな、遠出には向いていない重装備の鎧を身に付けている殆どの生徒達だった。


 残っている生徒も既に限界が近く、すごい汗をかいている。


「ふ、ふん!情け、ないぞ!皆の、者!」

「そうだぞ…みんな…はあ…もう少しだ…頑張ろう」

「ほんと…重装備じゃなくて…よかった」

「先生の姉弟なら先に言ってくれても良かっただろ?」

「まあ、色々あんだよ。・・・というか、なんでそんなに元気なんだ?」


 1人は自分をカッコつけているが、既に疲れ切っているご様子のトム。

 もう1人もかなり疲れている様子だが、まだ動けそうで、倒れている者達よりはかなり軽装備でまだ体力が残っているクラスのまとめ役であるライト。

 未だ動けそうな生徒の中で唯一の女の子エリーゼ。

 そして、残っている生徒中で唯一元気な男でここまで後ろにいたキッドとずっと話していたソラ。


 ギルドの面々は、ずっとソラの体力を見て歩幅や速度を考えていた。その理由はソラが持っている荷物である。


 ソラの背にはいじめか嫌がらせからか、このクラスの殆どの生徒の荷物を背負っている。こちらから見てもすごく重たそうな大量の荷物に、この子に合わせて足を進めることとなったのだが……。


「・・・ところで…何してるんだ?」

「う〜ん…石の上でバランストレーニング?」

「・・・暇人かよ……」


 現在、足を止めて休憩しているのは1番後ろにいたソラが、前にいたクラスの生徒たちを抜いて、ギルドの面々がいる先頭までやってきた為であった。


 ソラが足を止めるように言った時点でもう既に6人しか残っておらず、休憩を入れ開始した時、6人のうち2人が力尽きた。


「カイ、そしてミン。よく頑張ったな!」

「「は、はい……」」

「相変わらず仲がよろしいこと」

「当たり前だ!」

「ソラが言った通り、重い装備じゃなくて良かった……」

「そ、そうなのか?」

「遠出をするなら自分に見合った装備がいいって」


 倒れていない者達は一名を除いて、やっと話せるぐらいまでは回復し、力尽きていた生徒達の中の数名は軽く起き上がる程度には回復した。


「だが、もし君が怪我でもしたら……」

「いや、その者の判断は正しい」

「あなた……」

「ハンスだ。それで、鎧件だが…もし、俺がそいつなら、きっと同じことを言っただろうな」

「どうしてですか?」

「単純に弱くなるからだ。見栄を張って合わない装備をすると、動きが制限されたり、うまく力を使うことができなくなるからだ。・・・ライト君と言ったかな?君も自分に合わない装備を付けてきた口かい?」

「ウッ!!」


 耳に入ってきた会話を聞きながら、任されたクラス全体を見回す。


 クラスのほぼ全員。力尽きていないライト、そしてトムも、お金や権力で着飾ったような無駄に重量がかさむ金属製の鎧を着ていた。


 そういう意味では、ライトそしてトムは他の生徒達よりは体力があるのだろう。


 対照的に、ソラそしてエリーゼはかなり軽装備だ。

 エリーゼは重苦しそうな金属製の鎧ではなく、学校で支給されるような大きめな魔導師のローブ。軽く、それでいて尚且つ丈夫な素材である革を中心とした防具が彼女着ているローブ袖からチラチラと見え隠れしていた。


 それはソラも同じで、胴体が隠れる程度のローブに同じように革の鎧を身に付けている。・・・どうしても、背負っている大量の荷物に目をやってしまうが……。


 そういった点では、この2人は好ましい。片方は指摘されたとはいえ、しっかりと現実的なことを考えられている装備だ。動き易く、戦いやすい上に、防御に対する隙もない。戦闘にとって大事なことはしっかりと理解されている。


 まるで、()()()()()()()()()()()()()ような、よく考えられた武装だ。


 この場にいるギルドの面々は、ソラを評価し、同時にこの少年は戦いというのを知っているのかという疑問が浮かび上がる。


「・・・あれ?ソラは?」

好敵手(ソラ)なら、先程までここに……わあ?!」

「きゃあ?!」

「・・・? どうした?」


 ソラがいないことに気付いたエリーゼが何処にいったのかをトムに尋ねるが、トム知っておらず、あたりを探そうと思い見回そうとすると、木の上から突如ソラが現れた。


「どうしたって…こっちのセリフよ!今までどこにいたの?!どうして木の上から現れるのよ!」

「え?えっと…木の上に登ってあたりを見回してました」

「はあ?!」

「この林を超えた先に川があるから、そこまでは移動しましょう」


 ・・・君が背負っている大量の荷物を持ちながら、どうやって木の上に登ったのか気になるが…君の後ろに見える死屍累々の生徒達の姿を見て、正直、君は鬼かと思うギルドの者達であった。

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