ラベンダーが語る『よくわかる魔学講座』
高々と言い放ったラベンダーを見て、俺は完全に固まり、苦々しい笑みを浮かべるコレット。
「・・・それで? それがどう運がいいって話につながっていくんだよ?」
ラベンダーの勢いに押され気味な俺は、少し身を引きながら話を再開させる。
「それわね…」
「「それは……」」
「……『魔術』なのよ!!」
・・・
「・・・コレット。今日の特訓はここまでみたいだから、先に上がるな」
「え? え?!」
まじめに聞いて損したと思いながら立ち上がり、その場を去ろうとする。
コレットは驚きのあまり声をあげ、こちらの方を振り向く。だが、俺はそんなこと気にも留めず、いつもの走り込みを始めようとする。
「人の話は最後まで聞いておくべきだよ、少年」
「・・・魔法を使えない俺には関係のない話だ。それをいくら聞いても関係ない」
俺はラベンダーにそう言って、いつもの通り走り出す。
「何故魔法が使えないのか理由も知らないのによくそんなこと言えるわね」
・・・・・・何?
俺は思わず足を止めて、ラベンダーの方に振り返る。
「・・・今の、どういう意味だ?」
「魔法を使えない基礎的な原理、それを知らないって言っているのよ」
俺の問いにわかりやすく返してくる。
その原理を知るために、先程までいたコレットの隣まで戻り、元の位置に収まった。
「・・・まず、魔法を発動できないのには、大き分けて2つ。1つ目は魔力がない。もう1つ行使力の2つ。このまではわかるわね?」
話し始めたラベンダーが自分でも知っている範囲まで話し、問いかけてくるので、頷いて答える。
「魔力がない。それで魔法を使えないのは当たり前だけど…魔力行使力だと話は変わってくる」
ラベンダーは言葉を区切り、俺たち。特に俺の方を見てくる。
「形的に、魔法を使うために魔力行使力が必要だと言われているものは、本当のところ、そんな力なんて存在しないのよ」
「「ええぇ!!??」」
あまりにも衝撃な発言に、俺とコレットは大きな声で驚いた。
「ま、待ってください!ならどうしてそれを隠していたんですか?!」
「それは少年が知っていると思うわ」
尋ねるコレットは、ラベンダーの言葉の後に俺の方を見てくる。
俺は少し困った後に、自分の答えを言った。
「・・・排除する存在。自分が安心できるような下等な対象を作り出すため…でしょうか…」
「おそらくそうでしょうね」
「そんな!そんなのひどいですよ!」
俺の予想がまさに的中して、隣にいるお方がものすごく怒っている。比較的怒らない性格を知ったばかりの俺は、彼女がこんなに怒りを露わにしていることの方が行使力が存在する理由よりも、驚きは優っていた。
「そんなものがあるからソラは!」
「まあまあ落ち着いて…じゃあ何か? 実のところ、俺は魔法が使えるってわけか?」
「結果だけ言ってしまえば…その通りよ」
俺は隣にいる、今にも文句を言ってしまいそうな彼女を手で制止させ、ラベンダーに確認を取った。
それを聞いたラベンダーはあっさりと、頷いた。
「でもそれじゃあ、俺が魔法を使えない理由にならないだろう」
「それが案外そうでもないの」
魔法が使えない理由を尋ねると、すごく短く、そして呆気なくその理由を答えた。
「ソラ。あなたはもう既に魔法を発動させているのよ」
「・・・えええええぇぇぇえええ???!!!」
その言葉は、今日一の驚きだった。




