学校生活
コンコンコンコンコンコンコンコン……
魔法学院・とある教室。
先生を含めた教室の者達は、コンコンと聞こえるある一点の場所を見つめる。
その教室に響き渡る音は、黒板に文字を書くチョークのような一定のリズムではなく、ただひたすらに机を叩き続ける音だった。
コンコンと音を立てる主・ソラはクラスの人から注目を浴びるも、その事を一切気にすることなく、何かを考えていた。
「・・・ゴホン!では次の所を…無能。君がこたえ」
「6」
「・・・」
教壇に立つ計算の授業を行う男が、無能と賞させるソラに答えを求める。男は、ソラにこの問題を解くことは不可能だろうと思っており、無能だと蔑ましたのち、他の者に答えさせる腹積もりだった。
しかし、ソラはそんな考えとは裏腹にいとも簡単に問題を答える。
それが間違いならまだしも、答えが正解しているため、これ以上に何か言うことはできなかった。
男は悔しそうに正解だと答え、面白くなさそうに授業を再開するのだった。
*
昼休みとなり、いつものように学校の裏手で食事をするソラ。食べているのは安物の黒パン。学校での食事はいつもこれで済ませている。
校舎の影に座り、買った黒パンを食べながら再び思考する。
あの後、余程悔しかったのか、もしくは恥をかかせたかったのか、あのハゲは何度も俺に問題を解かせた。
考え事をしていた俺は、鬱陶しく思い、出す問題出す問題全てを一瞬で答えた。もっと高度な問題を解いていた古代の人々の教科書を既に目を通し、解いていた俺には足し、引き、掛けの計算問題は楽な部類だった。
俺がいとも簡単に問題を解いてしまい、逆にハゲの方が根を上げ、授業は終了となった。
昼休みが半分終わっても、俺の悩みが終わることはなかった。
その原因は、今日の特訓のことが理由だ。
目標となる出来事…年齢制限的に見ても、俺がギルドのクエストを受けれることが出来ない。だからといって、大きな大会があるわけでも、騎士試験があるというわけでもない。
やはり、クエストを受けることが1番の近道となるのだが…っと同じような思考をぐるぐると回転させ、頭を抱える。
「あ!やっぱりここに居た!」
「!・・・エリーゼさん」
「もう!探したのよ!」
俺を探していたのか、少し息を切らしてエリーゼさんがやってきた。
「ところで、今日は何かあったの?」
「う〜ん。まあ、ちょっと色々と考え事をね」
「ほんと〜?」
「うん。本当だよ」
隣までやってきたエリーゼさんは、その場に腰を下ろしながら今日の俺の悩んでいる姿を尋ねてくるが、それを否定することはなかったが、少し誤魔化すように言い淀んだ。
「ならいいけど…本当は」
「エリーゼ。こんな所に居たのか」
エリーゼさんが問いただそうとしようとする瞬間、突如乱入してきた声に掻き消されてしまう。
・・・エリーゼさん、何故かはわからないですが、怒ってるのはわかったのでそんな怖い顔をしないでください。そんな顔をされるとこっちがビビるのですが……。
「・・・何かあったの、ライト君」
「何って決まっているだろ?3日後にある『ギルド体験・ゴブリン討伐クエスト』の話だよ」
エリーゼさんに話しかけきたのはクラスの…いや、同学年の人気者のライト・ホプキング。成績優秀・容姿端麗。ある種の完璧人間と言われている。
「私がどこにいたっていいじゃない。あなたには関係ないでしょ?」
「そう言うわけにはいかない。君は僕達の仲間だ。そんな君が話に参加しないでどうする」
だった2、3言話しただけで、エリーゼさんはどんどん怒りを露わになっていく。
一言一言に律儀に反応して、大変だな…...。
しかし、さっきから気になる話が飛び出てくる。
「・・・仲間っていうのなら!」
「エリーゼさん」
「え?何?」
「さっきから話の内容が見えないんだが……。体験クエストってどういうこと?」
俺の言葉に、エリーゼさんはより怒りを強め、逆にライトは何を言っているんだ?と言った表情を浮かべる。
「どういうって…先生から聞いてないのか?俺たちの学年はギルドを体験しようということで、1ヶ月前から話を進めてきたじゃないか」
・・・ああ、なるほど。いつものやつか。
理解が完了すると、思わずため息が出る。きっと先生共は当日になってその事を伝えて、あわよくば死んでもらおうとか考えていたんだろう。
「君は元々学校に来ないことが多い。そういう所が聞いた事を忘れる要因になるんだ」
正直、俺はこいつのそういう所が嫌いだ。よく事情も知らないで、仲間だの信頼だのを口にする。そういう所が本当に嫌いだ。
「・・・ああはいそうですね。私が悪うございました。それで、その体験は強制参加なの?」
「う、うん。そうみたいだけど……」
「おい!なんだ!その」
「なら、今日は早退するわ。後、しばらくは家に帰らないから、理事長にもそう伝えといて」
「え?!ちょ、ちょっと?!ソラ!」
ライトもエリーゼさんも何か叫んでいたが、俺はそれを全て無視して、とある場所に向かうのだった。




