貴族って聞いたら太っている印象が強い
「おいおい!いつまで経っても俺様のところに飯が来ねえと思ったら、テメェらが原因か!クソガキ共!」
突然乱入してきた太々しく太った大柄な男を見て、男が何者なのか瞬時に理解する。
男もソラの存在に気づいたようで、
「?よく見たらお前…ソラじゃねぇか!」
「・・・お久しぶりですね。グラトン様」
「どうしてお前みたいなやつがこんなところにいるんだ?」
グラトンと呼ばれた男が言った言葉に、ソラの向かいに側にいる男の眉がピクッとひそめるが、そのことに誰も気づくことはなかった。
「私だって、美味しいものを食べにきますよ」
「美味しいもの?低能で落ちこぼれのお前が?冗談はいっぱしの冒険者になってから言えっての。おっとお前は!まだ!冒険者にもならなかったんだよな!」
そう言って高笑いをするグラトンに沸々と怒りが込み上げてくるが、おやっさんに迷惑をかけまいと机の下で作り拳を強く握りしめ必死に堪える。
すると、不意に後頭部を触れられる不愉快な感覚と同時に机に叩きつけられる。抵抗して頭を上げようとするがさらに力を込めて机に押さえ付けられる。
机の上に積み上げられていた皿が次々と地面に落ち、どんどん割れていく。
グラトンはそんなこと御構い無しに言い張った。
「貴様みたいな落ちこぼれは、雑草や泥水でも啜ってればいいんだよ!」
グラトンの言葉にこの場にいるほとんどの連中が怒りを露わにするも、誰も口に出すことはない。
理由は2つ、1つはグラトンが貴族であるということ。
グラトンの家系はそこまで強い権力を持っているわけではないが、それでも一領地を収める貴族である。そんなグラトンに手を出せば、逆賊として処罰される為、手を出さない。
もう1つは、ソラだ。
この場にいる誰よりも辛い思いをしているのに対抗するそぶりを見せず、やられ役となっている。
それなのに俺たちがやってしまったら、ソラの頑張りが無駄になる!そう考えると、自然と足が止まり、苦虫を噛み潰したような思いで顔を背けていた。
「さて、こんなところではもう飯は飯は食えんな。おい小僧。俺様が注文した飯代と貴様が落として割った皿の弁証代は貴様が払えよ」
この場にいた一同が何をむちゃくちゃな!っという思い、それを口に出してしまおうとする。
「・・・わかり、ました……」
ソラが口にした言葉には!っとなる。
先程と同じだ。ここで言ってしまえば、もっと大変なことなる。そう思い誰も口にしない。
「おい。ちょっと待てよデブ」
ただ1人を除いて……。