あっさりとした終わりと真っ赤な治療
魔族さんの魔法をソラの盾から現れた大きな動物さんが食べ尽くすと、ソラはまるで糸が切れたように前のめりに倒れる。
私は急いで支えようとするが、先にカンナさんがソラを支えて、地面に倒れずに済んだ。それを見た私も急いでソラの側に駆け寄る。
「ええい!あのガキ!また俺の邪魔をしやがって!」
すると、魔族さんが大きな声をあげて怒鳴る。魔族さんはとても怒っていてこちらを睨め付けていたが、先程と違ってまるで覇気がない。
「だがしかし〜!もうそのガキの邪魔はされない!再び俺の魔法を受けて消し飛ぶがいい!!!」
魔族さんはもう一度魔法を発動させようと手を前に出し、魔法を発動させようとする。
だが、構えられた手から魔法が発動されることはなかった。
「な、何故だ?!」
「簡単な話よ。魔力切れ。それだけの話よ」
カンナさんは支えているソラを私に預け、魔族さんに近づいていく。
「魔導師にとって魔力残量を理解しておくのは定石。あなたは感情任せに魔法を使えば魔力がすぐに底を尽きるのは当たり前よ」
「く、来るな!」
カンナさんが魔族さんに近づいき、魔族さんは何も出来ず後ずさる。その表情は先程とはうって変わって、怯えた表情をしている。そして手の届く範囲にまで近づくと、
「少年の攻撃でダメージが入っていて、さらには魔力中心で戦う魔族は、魔法攻撃より物理的に攻撃した方が効果的だったわね」
「ま、待て?!」
杖を持っていない右腕を引き、強く拳を握りしめる。
魔族さんは完全に怯え、顔が引きつっている。すぐに逃げ出そうとするが、うまく足が動いていない状態だった。
「少年や姫様に迷惑をかけ、そして私に迷惑をかけたこと。そして日頃の恨みを諸々込めて…」
「待て?!最後の関係な…」
「ぶっ飛べぇぇえええ!!!」
引いていた腕を思いっきり振り上げ、魔族さんの顎に見事に当たり、再び宙を舞った。
*
「その後、頭から落下してきた魔族さんを捕まえて、そのままこの城までソラを運んだの…」
「そうだったのか……。ところで、」
コレットが俺が気絶している間のことを本当にあっさりと話し終える。話し終えたのだが……。
「どうしてそんなに顔が赤くなってるの?」
「エ?!そ、そんなことないよ?!」
いや、その顔は間違いなく真っ赤だぞ?ああ、耳まで真っ赤にして……。
「そんな顔を真っ赤されて言われても説得力……」
「ないったら本当なかったの!いい?!」
「わ、わかったよ……」
あまりの迫真さに、それ以上聞かないことにした。
*
地面に落下した魔族さんを放置して、カンナさんはソラに駆け寄る。
気絶しているソラは汗をぐっしょりとかき、息苦しそうにとても荒い呼吸をしながら眠ている。
「やはり…魔力をあんなに激しく使ったから、ショック状態を起こしてる」
「ショック状態って……?」
「危険な状態ってこと。すぐに処置をしないと」
「わ、私も手伝える事ありませんか?!」
カンナさんが手をソラに当てて治療を始めようとして、私も何か手伝えることはないか尋ねると、カンナさんは少し考えて、
「・・・なら、少し手伝ってもらえるかしら」
そう言って、カンナさんは私に手伝ってもらう内容を言った。
「・・・??!!」
「ダメそうならしなくてもいいわ。私も体内の魔力の流れを調整しながら行うから」
「〜〜〜!!!」
カンナさんは簡単そうに言うが、それを同時に行うのはとても難しい筈だ。恥ずかしいけど、手伝うと言ったからには手伝いたい。
私は意を決して、支えていたソラの頭をそっと持ち上げて……。
*
(は、恥ずかしくてそんなこと言えないよ〜……)
(ほんと、何があった?)
コレットがさらに顔が真っ赤になって、より疑問を深めるのだった。




