禁止区域と行き倒れ?
辺りはかなり暗くなり、日もかなり沈んでいる。
そんな中、森の中を黙々と歩く1人の子供がいた。ソラだ。
(・・・やっぱり、急いだ方が良かった、か……)
そう思って、早足で森を駆け抜ける。夕方とはいえ、魔物が出ないとは限らない為である。
だが何故、俺がそんな森を駆け抜けているのか。その理由は先程の場所にある。
先程の場所は、今から数百年前に出現されたとされる人口密集地帯のジュウタクガイと呼ばれる古代都市であった。
王立魔法学院から少し離れた森の中央にあるそれは、当時の生活感を残しており、戦争が終結した当時はかなりの研究者があの場所に訪れていたらしい。
しかし、現在ではもう調べることがないのか誰も訪れていない。
だが、もしもの危険性を考えて、その区域一帯を立ち入り禁止区域に指定されている。
ソラが先程いた場所がまさにその禁止区域内なのだ。
禁止区域である。ということはソラ自身も理解している。
ならば何故、禁止区域と理解していながらもそこに向かうのか?行く必要はないのではないか?
何故と言われれば、これといった理由はない。だが求めてしまう。何がそうさせているのかはわからない。しかし考えてしまう。囚われてしまう。
何を求めているか。何を望んでいるのか。
それを見つける為、危険であること、禁止区域であることに目もくれず、何度も。何度も訪れている。
だからきっと、これも何かの繋がりなのだ。
俺が、あの古代都市に思いが、心が繋がり、囚われているように……。
「うぅぅぅぅ……」
ぎゃるるるるるる〜〜〜……!!
「・・・」
俺は目を丸くしてどうしたものかと口をあんぐりと開けて、うつ伏せに倒れている青髪の男を発見する。
倒れている男はその場から一歩も動かず、大きな腹の虫を鳴らしていた。
*
「いや〜!すまねえな!実のところここ2、3日まともに飯を食ってなくな!」
「いや…気にするなよ……」
男をどうにか担いで城下まで運び、とりあえず俺が行きつけにしている安い飯屋まで運び、飯を食わせている。
・・・食わせているのだが……
むしゃむしゃ!もぐもぐ!ごく!ごく!ぷっはー!と食べあげた後、再びむしゃむしゃ!と食べ始め、かれこれ30分。並べられた皿はおそらく100枚を超えるであろう勢いで食べ進めている。
(・・・こりゃしばらくは野草生活だな……)
ソラは、自分が持っている財布の中身を確認しながら、ため息を漏らすのであった。
*
「ごく!ごく!・・・ぷっはー!いや〜!ごちそうさん!ここの飯は中々美味いな!」
店のほぼ全ての商品を食い尽くした男は元気よく、呑気にそんなことを聞いてきた。
「当たり前だろ。ここのおやっさんの飯はギルドでも人気なんだぞ?」
「へ〜。ギルドでも……」
ギルドと言うと、一瞬目が鋭くなるが、すぐに元の表情に戻った。
ギルドとは、簡単に言ってしまえば冒険者団体を総称した名前である。
数々の苦難を己の手で切り拓く!っと讃えられたのは今は昔の話。現在では王族や貴族などからは無能どもの集まり場としての扱いを受けている。
「ギルドってことは、そこにはもちろん強力な冒険者がいるってことだよな?」
「さあな。聞いたような、聞かなかったような…。ギルドに入ってない俺には、到底無用な話だからな」
思い返してみるも、やはり強者と呼ばれるような冒険者に覚えがなく、考えても無駄だと考えるのをやめた。
「ギルドに入ってないって…。ギルドで金を稼いでるんだろ?」
「ギルドには今のところ、換金だけ行ってる。忘れたか?ギルドに入るには年齢制限があるってこと」
「おっと、そうだった。・・・?ってことはお前、まだ……」
「残念ながら。俺はまだ11だよ」
ギルドへの登録にはある条件がある。
それは先程から話している年齢制限のことだ。数百年前の以前の世界では年齢制限というのはなかったのだが、あまりにもクエストに行き、死んでいった若手、しかもまだ子供の冒険者の死亡率があまりにも高かった為、年齢制限というならず者集団には珍しい制度が決められたのである。今から数十年前の話だ。
「11か!懐かしいなぁ!俺も当時は『ギルドに入りてえ!そして戦いてえ!』って言って、姉貴に迷惑をかけてたっけ」
「バトルジャーキーめ……。ところで、お前の姉貴ってもしかして」
目の前の男が言った姉貴という言葉に、もしかしたらという思いで尋ねようとする時、
「おいおい!いつまで経っても俺様のところに飯が来ねえと思ったら、テメェらが原因か!クソガキ共!」
突然現れた大柄な男が乱入してきた。