覚悟の形
トーラムが放った火球は、トーラム自身が予測していた破壊力を上回るほど、強大な爆発力だった。
「思って以上に力が入っちまったが…まあ、別に構わねーだろ」
空気中に舞っている粉塵を吸い込まないようにして、早々に出て行く。
トーラムが皇国から受けた命は、コレットの殺害であった。
トーラムは命令を受けた当初、楽な任務だと高を括っていた。だが、予測していなかったことが起きた。
それはコレットを助けたとされる存在である。
最初は何かの冗談だとだと考えていたトーラムだが、直接その現場を目撃して、本当のことであったことを理解した。
故に、そのガキを潰し、コレットを徹底的に壊し、追い詰めてやろうと考えていた。
だがそれは、これといって効果あるわけではなかった。
ガキを潰して、あることないかと言って絶望させてみるも、失敗。手っ取り早く恐怖与えてみるも、失敗。
ならもういっそこの場にいる全員をする殺してしまおうと考えたトーラムは、まず始めに自分に恥をかかせたガキを殺しそうと考えたのだ。
外に出ようとする時、一度だけ後ろを見る。
(・・・流石に、この現状なら生きちゃいないか……?)
そう思って、外に出ようとする直前、あるものに気づいた。
「あんなものさっきまであったか?」
トーラムがそれ気がつき、しっかりと確認しようとして振り返ると、
「・・・?!きさま!なぜ生きて!?だが、それ以前に、何だそれは?!」
次の瞬間、トーラムは先程入ってきた場所から外に吹き飛ばされた。
*
「カンナさん!」
「わかってる!でも、生きゾンビ兵達が邪魔だ!」
ソラが魔族の人に家の中に叩き込まれでからすぐに大きな爆発があった。
その一瞬の爆発の火は外にいる私たちにも熱を感じるほど強く燃え上がった。
私は燃え上がった家に向かおうとするが、操られた兵士さん達が立ち塞がり、すぐに向かうことができなかった。
嫌な可能性が頭をよぎり、嫌な汗が止まらない。
(大丈夫だよね?生きてるよね?死んでないよね?)
約束…したよね…。力になるって…そばにいるって……。だから!
両手を胸の前で重ね、強く、強く、彼の名前を叫んだ。
「ソラ!!!」
ドッカーン!!!
突如壁が崩れ落ちるの同時に、何か家の外から飛び出していった。いや、飛び出したというよりも吹き飛ばされたという言葉がしっくりきた。
吹き飛ばされた人は後ろにいた兵士さんを巻き込んでいった。
私は最初はソラかと思って近づこうとするも、すぐに吹き飛ばされたのが魔族さんだということに気づいた。
「・・・クッソ!あのガキが!」
そう言って、魔族さんは壁に開いた穴を真っ直ぐに見据えていた。
ガキってことは…!
私も同じように開いた穴を見る。
すると穴の奥から瓦礫を歩く足音が聞こえてくる。
「・・・やらせねぇよ。お前なんかに」
「!?」
私は聞き覚えのある声を聞いて、口元を押さえる。目からどんどんと涙が溢れ出し、耐えきれずこぼれ落ちる
「お前なんかに、俺の友達は殺させねぇよ!」
瓦礫を掻き分けて姿を現れた真っ黒な髪を生やした少年は手に持っていた大きな盾で粉塵を吹き飛ばし、大声で叫んだ。




