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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
始まりの魔術
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声の導き

5/5・一部編集しました

5/7・一部編集しました

 トーラムの魔法の準備は既に済んでいる。後は発動して終わり。


 11年って案外短い人生だったな……。


 あ、でも!俺って理事長に拾われてからの5年間しか記憶がなかったっけ……。どっちのみち、短い人生に変わりないか……。


 今思い返せば、怒るってわかってて、わざと理事長に甘えて、エリーゼさんをいじるのは案外楽しかったなぁ。


 学校の連中にいじめを受けて、ごく稀に本気で怒って、主犯の人を思いっきり蹴り飛ばして、蹴り飛ばされたこが泣き出して、リシア先生に叱られるのも案外いい思い出だなぁ……。


 よくよく思い返してみれば、ロクなことやってないな、俺……。


 死ぬかもしれないのに、感じていた緊張が一気に解けて、笑いが溢れる。


 コレットとのたった1日は、本当に濃密な1日だった。


 生まれて初めて喧嘩をした。一瞬になって笑いあった。誰かといる暖かさを初めて知った。


 共に笑いあって、喧嘩をして、そんな時間が暖かくて、嬉しくて、俺はきっと












 そんな時間が好きだったんだ。












 それを理解すると、言いようもない悔しさが湧き上がってくる。


 力になれない自分に、役に立たない自分に腹が立つ!


 そんな悔しさが沸々と湧き上がってくるが、それでもなお動くことが出来ない。


 なおも湧き上がってくる悔しさと、情けなさに歯を食いしばり、顔をしかめる。




 もう、どうすることもできないのか……。
























『悔しいか?』



 *



 何処からか聞こえる謎の声に伏せていた視線を上げる。


 だが、より上の方まで視線を上げることが出来ず、顔を見ることが出来ない。


 しかし、視界の隅の方ではまるで動物の足のような形のものが俺の側に立って、見下ろしていた。


 目に見える全てが、まるで時間が止まったように色あせ、灰色に満ちている中で、その足は色を失わず、色づいて見えた。


『悔しいか? 自分が何の力もない無力な男で?』


 再び聞こえた誰かの声。その声はまるで俺の心を見透かしたように問いかけてくる。


 悔しいかって?当たり前だ!悔しくないわけがない!


『だろうな。だが、貴様何もすることはできない。なぜなら、貴様は何の力もない、無力な人間だからだ』


 わかってるよ、そんなこと!


 だから、少しでもコレットが生きていられる方法を……


『そしてこいつは、お前を殺した後、あの娘も同じように殺すだろうな』


 誰かが言った言葉にドキッと心臓が跳ね上がる。


『どうしてかって?それはな、あの娘は今の皇国の現状を知っているからだ。そんな娘を逃すと思うか?』


 この声の主も、現在の皇国の現状を知っているようだ。だがそれで、コレットが殺される必要はないはずだ!


『生け捕りと殺し、一体どっちの方が楽だろうな?』


 ら…く…?そんな…そんな理由で殺すのか?そんな理由で俺の友達は殺されるのか?!



 *



「・・・ふざ、けるな……」

「?」


 家の中に叩き込んでから、全く動くことがなかったソラが何かを呟き始めた。


「・・・ふざけんな…ふざ、けるな!!!」

「?!このガキ!」


 ソラは動かない体を必死に動かす。


 動け!壊れようと、引きちぎれようと構わない!今だけ、今だけでいい!動いてくれ!


「いい加減、くたばりやがれ!」


 トーラムは大きな火球を発動し、ソラに向けて放つ。しかしソラは、未だ自由に身動きが取ることが出来ず、ただ見守ることしかできない。


『それで?』


 未だ聞こえる何者かの声は、体を起こした俺に尋ねてくる。


 周りにはもう居たはずな動物の姿はもうない。


『起き上がったのはいいが…これからどうするつもりだ?』


 だが、声はまだ聞こえている。俺はその声に応えるように口を開く。


「どうするって…決まってるだろ……」

『・・・』

「俺は…あいつを、友達を…コレットを死なせたくない!」


「だからあいつをどうにかして止める!」

『止めるって、どうやって?』

「何とかする!俺にはそれしか方法はないだ」


 動かない体を必死に動かそうとするが動かない。そんな俺を見かねてか、


『・・・腕はまだ動くか?』

「へ?」


 声の主がそう尋ねると、俺の正面に小さな光が現れた。


『守りたいのならば、それを掴め!』


 俺は目の前に現れた光をじっと見つめる。その光は初めて見たはずなのに、それを懐かしく感じていた。


『急げ!時間はないぞ!』


 声の主は迫りつつある火球に焦りの声をあげる。しかしソラは一切の焦りを見せることはなく、ただ真っ直ぐに光を見つめ、意を決してそれを掴み取った。

















 火球は爆発し、室内は大炎上した。

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