受け入れる心 満たされる思い
黒い影はそのローブをなびかせながら、ウィザードとコレットがいる位置と俺が位置の丁度中心に舞い降りた。
現れたロープを着ていた者は、一度コレットたちを見ると後ろに振り返り、俺の方に近づいてくる。
近づいてくるロープの隙間から覗かせるその顔は男姿をしており、男の口元は口角が上がり、薄気味悪い笑みを浮かべている。
そしてローブの男が俺のすぐ近くまで近づくと、
「ウッ!」
どうにか立っている俺のみぞを蹴り飛ばた。その勢いはかなり強く、俺は後ろに飛んでいき、背後にある壁に叩きつけられた。
壁は叩きつけられた衝撃でひび割れ、俺は地面に滑り落ち、みぞを蹴られた痛みで蹲る。
「ソラ!!」
蹲る俺を見てコレットは俺に駆け寄ってくるが、それをローブの男が手を伸ばし、阻止する。
「は、離してください!」
「なりません、姫様。こやつは姫様を付け狙う極悪非道のコンバットでございます」
ローブの男が言った言葉に、ピクリと反応するウィザードと、ああ、またか…言いようもない虚無感が俺の中を渦巻いた。
コンバットの特徴は、魔法が使える人たちよりも、暗い色に近い人達である。その中でも、黒は顕著に現れ、武器を使えば、一個中隊の精鋭にまで上り詰めることはざらである。
故に、魔法とは対象的なコンバットの特徴である人は、魔法を使える者にとって嫌悪の対象にしかならない。
そんなコンバットの中でも、かなりコンバット寄りであるソラには、『嫌悪』っということでは済まなかった。
コンバットの中にも、ある程度魔法を使える人もいる。しかし、ソラは全くと言っていいほど、魔法を使うことができない。だが逆に武器を扱うことに関しては、他の人よりもある程度は上回っていた。
そのことに、学校の生徒達は、『魔法を使えない落ちこぼれ』から、『コンバットに最も近い憎っくき存在』となり、いじめや暴行などの対象になった。
そんなソラの居場所がここ。古代都市だった。
何かにとらわれ、何日も何日も求め続けた古代都市。そんな古代都市が、俺にとって最も安心できる場所であり、居場所となっていた。
痛みもだいぶ治まり、立ち上がろうとするが、体が痺れ、不安定な感覚が襲い、うまく立つことができない。
「故に、姫様!ここは私に任せ、安全なところへ。近くに兵を準備しております」
ロープの男は姫に避難するように言い、阻止していた手で、コレットを行かせまいと力を込める。
危険な人間に近づけさせない…部下としては正しい判断だな。俺だってそうする。
(まだ、感覚は戻らない。これは立つのはしばらくかかりそうだな……)
未だ、通常の感覚が戻らず、足に力が入らない。
役に立たない悔しさのあまり、顔をしかめ、拳を強く握りしめる。
パッシィン!!
何かを強烈な叩く音が聞こえ、顔を上げると、コレットがローブの男を引っ叩いていた。
「あなたが、彼を…ソラを悪いように言わないで……」
コレットはすごく真剣な表情で、ローブの男を睨め付ける。その目には薄っすらと涙を浮かべている。
「彼は、私のことを真剣に考えてくれた!私のことに親身になってくれた!だから、ソラに…私の友達に!そんなひどいこと言わないで!」
コレットの言葉に、俺の体全体に衝撃が走る。
何かが体全体を暖かいものが包み込む。
そして、俺の手に何かがこぼれ落ちる。
俺は気づけば、涙を流していた。
こぼれ落ちた何かが、涙だと理解して先程より強く拳を握りしめる。
俺を包み込んだ暖かいものが、俺の心を奮い立たせ、強い力が湧いてくる。
蹲ってるいる場合じゃない!立て、立ち上がれ!
俺は地面を強く踏ん張り、立ち上がった。




