2年前の裏側で……。3
皇国の姫が行方を晦ましてから数日……。
皇国の城下町の雰囲気が変わることなく、平和な毎日を過ごしていた……。
*
「これより、皇王を暗殺する」
スコーピオンの一言にこの場にいた全員の表情が引き締まった。
「部隊を二つに分ける。貴様達の役割は、内通者の手引きから城の中へ侵入し、皇王までの経路を確保しろ。
もう一部隊は兵隊の奴らの足止めをしろ。生死はとはない」
「でしたらこの『ガルド』が兵隊の奴らの注意を引きます」
「そうか……だが貴様は先日の勝手な行動を忘れているわけではないだろうな?」
スコーピオンの問いかけにカルドは表情を変えない。
つい先日、ガルドは魔物を引き連れて王都からやって来たと言われていた者達の迎撃に向かった。
スコーピオン自身はその命令を出していないため、完全なガルドの独断であり、隊列に支障来す行為であった。
ソラでさえ、スコーピオン自身に気づかれるように堂々と行動を起こし、その場で許可を取って行動をしていたにも関わらず、自分勝手な行動を起こしていた。
「別に構わないでしょ。奴らは王都からの者達。もしかすると俺達の行動に警戒した王都からの救援かもしれないではありませんk」
その言葉を言い終わる前に、突如としてガルド腹部が貫かれた。
「ガハッ!?」
「私の命令に従わないコマは、いらないのですよ。
邪魔のは……消えなさい」
ガルドに何かを突き刺した本人であるスコーピオンは自身の尾をガルドの体に突き刺し、そう言い放って引き抜いた。
するとガルドの身体は刺された腹部からはどんどん紫色に変色し始め、それが一瞬にして体の全体に広がった。
紫色が体を侵食し始めるとガルドは声を上げることができないほどの苦しみが襲い、苦しそうには地面をのたうちまわるとやがて泡を吐きながら、おとなしくなった。
泡を吐き出しているガルドを確認すると、ガルドは首を抑えながら、目から生気が失われ、そのまま生き絶えてしまっていた……。
恐怖する魔族達。しかし、歯向かい命令に背いた瞬間ガルドと同じ間に合ってしまうことは目に見えてわかっていた彼らはスコーピオンは抵抗しようとする意思は感じられなかった……。
対してソラはスコーピオンはこういう奴であるとわかりきっており、これ以上妙な行動を取れば自分も同じ間に合うと理解させられたため、動揺しないものの、あえて言葉を発するようなことはしなかった。
「決行は明朝。私の指示に従えないのであるのならば……貴様達は必要ない」
「か、かしこまりました! 誠心誠意取り組ませていただきます!」
スコーピオンに怯えながら、作戦が決まり、明朝に決行となった。
*
明朝となり、魔族の手引きにより、城の中へと簡単に侵入することができた。
「これより暗殺にかかる。経路を確保する者達は私と来い。残りの者達は兵士達の足止めだ。
デルタ=Ⅳ、貴様は足止めに回れ」
「は……」
スコーピオンの命令で足止めに回ることになったソラ。
二手に分かれ兵士達が住む宿舎に向かっているとソラは隙を見て隊を離れて城内を別行動を取った。
城内を駆け回っているとスコーピオンに城の門が突如として開かれるのが窓の外から確認した。
(突然の来客? なぜ今……)
ソラは窓から眺めながら、突然の来客者に首を傾けるが、入ってきた馬車を見てすぐにその来客者が何者なのかわかった。
(あれは……王都のクロスフォード家の馬車!?
どうしてここに!?)
そう思って頭がよぎるのは二つ。一つは昨日の魔族の1人が殺されてしまったあの出来事。王都からの救援と思われた一団を倒したという話。
そして……王都にいるコレットの存在……。
「まずい!」
ソラは焦りの色を浮かべて慌てて移動を開始した。
(コレットを……ここから逃さなければ!)
その使命感に駆られ足を早める。
すると、目の前に城の警護を行なっている二人の兵士と遭遇した。
「!? 貴様、何者だ!」
「どうやってここに侵入、」
「シロン! 『二人羽織』!」
ソラのその声に手に虹色の刀身の刀が出現し、綺麗な羽織が纏われた。
そして刀を手に掴んだ瞬間、ソラは二人の兵士を切り裂いた!
だが、斬られた本人たちはただ呆然と立ち尽くすだけであった。
「ごめんなさい。……あなた達の最優先事項は『コレット・フォン・ジェラートを守ること』です。
現在、彼女がこの城にやってきています。彼女を逃すために行動してください」
「「……わかりました……」」
目が虚になりながら、ソラの命令に従い二人は歩き始めた。
「すみません、お二方……。
……しばらくはこの姿でいなくちゃな……」
そう呟いてソラは自身の刀を見つめて、すぐに視線を外して駆け出そうとした。
が、すぐに視線を感じて脚を止めた。
「……誰だ」
ソラが背後から感じる視線に振り返りそう尋ねると、ソラに視線を送っていた主が姿を現した。
「お前は……確か、『スノウ』だったな」
姿を現したのは人間としてこの城に侵入した魔族である宮廷魔導師のスノウであった。
「貴様……彼らに一体何をした……」
「……剥奪の剣『二人羽織』。切られたものが持つ武器や能力の所有権を書き換え、認識や考え方を書き換える洗脳の剣。ただし、この剣を発動したい間だけの能力で、考え方を植え付けるだけで実際に洗脳はしていない。ただその人の心にその通りだなっていうのを思うだけの力。それ以上の力は持っていない。
彼は、ただ自分の意志で彼女を動いただけに過ぎない」
ソラはなんの抵抗もなく自身の剣についての説明をした。
「そんな……バカな……」
「なら、試してみるか?」
ソラの言葉にスノウが顔を上げた瞬間、ソラは刀はスノウに向けて投げ放たれていた。
次回は2月16日に投稿します。




