表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
中央国協同魔法学校
241/246

報告と罪悪感

 レオナはアリエスに言われた通り、考えながらも、アリエスに対して報告をしていた。


 その内容のほとんどはお店の手伝いであったが、時折馬車についての情報がアリエスの元に届いていた。


 空の扱う馬車には鉄の馬、そして馬車に触れた敵対対象に対して、『消滅』の力と『破壊』の力がわずかに含まれていることがわかった。

 馬、そして馬車に触れたものには、攻撃的な力、防ぎ守ろうとする防御の力、さらには再生や修復、反射や無効化を作用させる力に対して『消滅』の力が作用し、そもそものそれらが無かった力となり、さらに全力疾走で激突することで、敵の全てを『破壊』する力が発動し、全てを破壊する馬車が完成されることとなった。


 レオナから報告を読み、キャンサーの『キャンサード・シザーズ』が撃ち破られた理由を理解することができた。


(なるほど……。キャンサーの報告にあった馬車に腕が破壊されたというのは、この力が作用したからなのね。

 力を消滅させた……。ということは彼のあの馬車……『チャリオット』に消滅させる力があるということは、チャリオットにはおそらく、私達十二星宮と同じ消滅……つまり『虚無』の力をわずかに所持しているということ。そして……虚無だけではなく、それと別の力を持っているということ……)


 報告書に目を通しながら、頭を悩ませるアリエス。


 この報告書をどのようにリブラ達に伝えるべきなのか、そしてデルタ……ソラがアリエスに対して、()()()()()()()()()()()()()ということに、頭を痛めていた。


 ソラに対して無理に情報を聞き出しても警戒して協力体制が崩れることがわかっていたアリエスはこのことについては呑み込んで、リブラ達に馬車には十二星宮である我々と同じく虚無の力()()を持っているということを伝えることにした。


 その際に虚無の力が十二星宮の象徴であると主張する連中でさらに議論が荒れたのは言うまでもなかった……。



 *



 カランッカランッ!


「ありがとうございました〜……はぁ……」


 大空家のお店『カフェ・スカイ』にて、先程まで元気よく挨拶をしていたアルバイトのレオナだったが、お客様がいなくなった途端、暗い顔でため息を漏らした。


「どうしたの、レオナさん」

「あ、いえ……。少し、疲れただけです……」


 ため息を漏らしたレオナに同じくホールの仕事をしていた空が心配そうに話しかけた。

 レオナは苦笑いを浮かべながら、そう伝えると、空は不安ながらも「辛かったら休んでね」と伝えて食器を片付けていった。


 それに安堵したようにレオナは深いため息を漏らした。


 レオナがため息を漏らしたのは少しだけ負い目を感じていたからだ。


 レオナは本来任務でこの家に住まわせてもらっている。それも事情が分かった上で……。


 よくわからない状況で、どういうわけか受け入れられてしまっているこの現状に疑問を持たないわけではないが、気にしていたら気が滅入りそうになり、あまり考えないようにしていた。


 しかし……それでも空についての情報を空を倒そうと目論んでいる十二星宮に話すことに抵抗が生まれ始めていた。


 空は……空は自身は優しい子だ。


 お店のお手伝いは誰かに言われたわけではなく、自分から進んで行なっている。空自身は好きでやっていることと言っているが、お客様一人一人合わせた接客を行ったり、初めて来たお客様にはおいしい料理に対して本心から可愛らしい反応を見せたりすることもあり、店員としての受けがいい。

 さらに困っている人を手伝っだり助けてあげたりする場面をよく見かける。


 レオナが働き始め早い一ヶ月ほど経過するがそういう場面を見かけるということは彼自身がそういう人間なのだろう。


 だからこそ、彼を騙し、彼を売り渡すような行動をしている自分自身にひどく嫌悪感を持っていた。


「はぁ……」

「わあ!」

「キャァア!?」

「あはは! 驚いたか!」

「そ、空……」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな暗い顔しちゃダメでしょ」


 空に驚かされて腰を抜かしたレオナはホールのテーブルに寄りかかる。それに追撃して、レオナの顔を両手で覆い、視線を自分に合わせる空。


「君の笑顔で元気になってくれるお客様がたくさんいる。そんなお客様に今の君の暗い顔をお見せするの?」

「い、いえ……」

「だったら、ちゃんと笑って。レオナさんが笑ってくれると、俺や義母達も気分がいいんだから!」

「……わかりました」

「わかったならよし! ……あああと、もう慣れたと思うけど、やりたくないこととか嫌なことはちゃんと教えてね。全部は無理でも出来る限りサポートするから」

「……はいお願いします」


 空に励まされ、去り際にそう言われたレオナはその言葉を胸に秘め、今胸の内にある罪悪感に向き合うことを決めた。


 その後、レオナから届く空の情報にあまり魔装について語られることが少なくなっていったのであった。



 *



 そして長い年月が過ぎ、ソラがおよそ十二歳となるほどの月日が経った頃……リブラからとある任務が言い渡された。


「我らが母復活のため、敵の戦力を削ることにした。

 場所は皇国。名前は皇王、『アッシュ・フォン・ジェラート』。

 その男を殺せ」

「……」


 ソラはその名前を聞いて言葉を発することが出来なかった。

 その名前は以前にソラを助け、そして今の自分を作るきっかけとなった彼女、コレットの実の父親の名前であったためである……。

次回は1月26日に投稿します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ