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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
中央国協同魔法学校
239/246

アルバイトメイド

あけましておめでとうございます。

本年度、1番最初の投稿です。

今年もよろしくお願いいたします。

「ーーーそれでは、お願いしますね。

 ()()()()()()()()()()()!」

「……」


 嬉しそうな笑みを浮かべるエレナ。それを顔を真っ赤にして引き立った笑みを浮かべながら、唖然として固まるメイド服を着ているレオナの姿がそこにはあった……。



 *



 ことの発端は数分前、


「空〜」

「はい! 少々お待ちを!」

「注文!」

「はい。ただい、ま〜!?」

「ちょ、アイリス!? 大丈夫か?」

「いたたた……。だ、だいじょうふ〜……。ぐすぅ……」


 エレナがいなくなって数分後、お店は多くの客で大混雑していた。

 空いていた席は全て埋まり、空とアイリスが厨房とホールの間を忙しなく動き回っている。


 すると、アイリスが注文を受けようとホールをかけていると、自らの脚に足を貸してしまい、その場で脚がもたれ、倒れ込んでしまった。


 空は自らが行っていた給餌を一旦止め、すぐにアイリスに駆け寄り、立たせる。

 アイリスは堪えていたがこけてしまったこと、そして空がすぐに駆け寄ってくれたことに我慢ができず、泣き出しそうになったが、わずかに漏れてしまったが、ぐっと堪えて泣き出さなかった。


「あ、あの、大丈夫ですか?」


 それをみていたレオナは心配して空とアイリスに駆け寄る。


「だ、大丈夫です。ですので、お客様はどうぞお座りください。

 立てるか、アイリス?」

「……うん」


 その気遣いに空は大丈夫と答え、アイリスを立たせる。

 痛がりながらも立ち上がったアイリスだったが、未だ涙目で、わずかにぐずっており、このままでは仕事にならないと困惑していた。


「空、アイリス〜。ちょっと……どうしたの?」

「ああ義母さん。実はアイリスが脚をつまづいてしまって、思いっきりこけちゃって……」

「そう……。とりあえず二人とも、そこじゃあお客様の迷惑になるから、奥に入りなさい」

「うん……。歩ける?」

「ぐず……ん……」


 涙を浮かべているアイリスを二人が心配していると、奥に引っ込んで用事をしていたエレナが厨房、そしてホールへかえってきた。


 現状がわからないエレナだっだが、空の説明で状況を読み込み、ひとまずはアイリスと空を厨房の裏へと引っ込めた。


「……ああそうそう。()()()()()、エレナさん」

「……え?」


 それとどういうわけか一緒にいたレオナもお店の奥までくるように言われた。


 なぜ自分が呼ばれたのか状況が掴めなかったが、呼ばれたので一応二人の後をついていくこととなった。



 お店の奥に来たレオナ。そのすぐ近くでは今にも涙を流しそうアイリスと頭を撫でている空。「たぶんそれだと逆効果よ〜」とほっぺたを抑えながら困っているエレナの姿があった。


 アイリスはこれまで嫌われ続け、暴力を振るわれてきた。そのため優しくされたのがこの家に連れられて初めての経験で、養子として迎えられた今でもそれに慣れていなかった。

 その為、こけた時や怪我をした時に優しくされると、彼女は逆に耐えられず、涙がどんどんと出てしまうのであった。


 空はどうして涙が次々と出てしまうのかわからず、今にも泣き出しそうなアイリスをエレナに任せ、仕事に戻るのであった。


「……これじゃあしばらく仕事は無理ね」

「……ぐずっ」

「あの……私がここに呼ばれた理由がわからないのですが……」

「ああそうだったわね。ごめんなさい。

 あなたをここに呼んだのは理由があるのよ」

「理由……ですか……」


 いったいどんな理由なのだろうと首を傾けるレオナ。

 そんなレオナの疑問に応えるようにエレナは口を開いた。


「実は()()()()()()()から、あなたをここで働かせてほしいと、連絡があったのよ」

「………はい?」

「あなたが住んでいた場所はかなり遠くの場所で、帰るのにもかなりお金がかかるのはわかっているわ。

 お金がないんじゃあ、住むところもないでしょう。これからしばらく間はこの家に住み込みで働いて……」

「ま、待ってください! いきなりそんなことを言われても困ります!」


 レオナは慌ててエレナの言葉を遮る。


 しかしエレナはレオナが言葉を遮ることをわかっていたかのように言葉を続けた。


「これはあなたのマスター(お母様)からの()()()()

 他に、何かいうことは?」

「……な、何もありません……」


 エレナの言葉の意味を読み取ったレオナはどういうわけかこの家で住み込みで働くという指示をアリエス(マスター)から受けた。

 それがどういった経緯でそうなったのかはわからない。

 もしかしたら何かしらの原因で情報のやり取りを行なっていたかもしれない……。

 だがそれがわかるのはアリエス一人だけだ。レオナがいくら考えてもわからない。


 そのため、まずは最初に任された給餌の仕事をすることにした。


「……それでは、私は空さんを手伝ってきますね」

「何言ってるの? あなた、ここで働くのだから、きちんとした()()を着なきゃだめでしょ?」

「……は?」



 *



 そして現在に戻る。


「い、いらっしゃ、いませ!」


 レオナは顔を真っ赤にして声を裏返しながら、とても恥ずかしそうにメイド服でホールの仕事を行っていた。


「……義母さん。あれ、義母さんの趣味でしょ?」

「そんなことないわよ。あれこそ、女性が働くメイド服(せんとうふく)よ」

「……大変だな、彼女も……。

 ところで、バイトは雇わないんじゃなかったの?」

「……そこは、大人の事情があるのよ」

「ふ〜ん……。面倒だな。大人って」


 空はレオナの恥ずかしそうに給餌を行っている姿を見て、同情するのであった……。


 そんな同情の視線を向けられているレオナは心中でエレナとこんな服を着る原因となったアリエスに怒りをこみ上げていた。





 そんなレオナの姿をアリエスは遠目で見ていたが、


「……裸みたいな服が恥ずかしくなくて、どうして今着ているあの服の方が恥ずかしいのよ……」


 という純粋な疑問を口から漏らしていた……。

次回は1月12日に投稿します

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