表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
中央国協同魔法学校
227/246

悲しみの夫婦と飛来した炎

「ーーーエレナ。今日は星がたくさん見えるよ」

「……ごめんなさい、(つばさ)さん。そういう気分でないんです……」


 森の中で月明かりに照らされて、大きく開けた場所の中央で、静かに佇む一軒家。


 そんな一軒家の縁側からゆっくりと姿を現わす二人の男性と女性。

 男性は女性が縁側に座るまで、ずっとその体を支え、女性はとても弱々しくかなりやつれていた様子だった。


「……ほら、空を見てごらん。星空がこんなにもきらめいているよ」

「……」


 男性、翼と呼ばれた男はエレナと呼ぶ女性を支え、元気づけようと満天に輝く星空を指差す。

 しかし女性は翼の声に耳を傾けず、ずっと暗く、沈み込んでいた。


「……エレナ」

「……なさい。ごめんなさい……」


 エレナは顔を覆いながら涙を流す。

 翼はそんなエレナを優しく抱きしめた。


「ごめんなさい」

「謝るのは、俺の方だ。俺がもっと、家族の事を気にかけて入れば……」

「いいえ! あれは私が! 私がもっとちゃんとして入れば……()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「……もう、()()()()のだ。君が責任を負う必要はないんだ」

「でも、でも! ……ッ」

「……」


 声を押し殺して涙を流すエレナ。そんな妻を優しくも、強く抱きしめる翼。

 そんな翼の目にも同様に涙がこぼれ出ていた。


 翼はもうどこにいるのかもわからない大切な我が子を思い、遥か彼方の夜空を見上げた。




 見上げた夜空から、一つの流れ星が飛来する。


 その流れ星は凄まじい速さで落下しながらも、すぐに消えることはなく……。



 ーーー真っ直ぐに二人がいる森の方に()()()()()()()()



「!? エレナ! 伏せろ!」

「つ、翼くん!?」


 翼はエレナを覆うようにして体を伏せる。エレナ思わず驚いて、昔読んでいた呼び方で翼の名前を呼んだ。


 そんな二人の頭上を、家を通過し、隕石は二人の後方にそびえ立つ山に向かって飛来した。


 ズッカーンッ! と大きな音を立てながら飛来した隕石は凄まじいほどの地響きを引き起こし、あたり全体を大きく揺らした。


 地響きがようやく収まると、顔を上げ、家の中……家の後方にある山の方を見つめてる翼。エレナを抱きしめている手を離し、山の方へ駆け出した。


 隕石が落ちた山からはとても大きな煙が上がっており、翼はそこへ向けて全速力で駆け抜けた。


 タタタッと駆ける翼。その横を、ダンッ!地面ついて横に並び駆け抜けるここにいるはずがないライオンが姿を現した。


『翼!』

(れん)!」

『今の爆発と地響きはなんだ!?』

「隕石が落下したんだ」

『隕石だと? そんなニュースやってたか?』

「いいや突然だ! 妙に不自然だから、様子を見に向かっているんだ!」


 蓮と呼ばれたライオンは翼と言葉を交わし、共に隕石が落下した場所へと向かった。



 隕石が落下した場所へとたどり着いた一人と一匹。

 隕石が落下した場所にはとても大きな()()()()()()()()()


「……」

『隕石が落下したという現場は初めて見たが、こんなに激しいものなんだな』

「……()()()()

『なに?』

「おかしい。砂埃が上がっているにもかかわらず、()()()()()()

 それに、()()()()()()()()

 おかしすぎる!」


 翼は驚きを隠せずにいた。


 確かに隕石が落下したであろう場所には大きな砂埃が舞い上がっている。


 しかし、この場には大きな砂埃が舞い上がっているだけで、地面にクレーターのような大きな大穴が開いているというわけでもなく、地面に大きな切れ間が走っているわけでもなく、ただただ砂埃が上がっていた……。


(こんな奇妙なことできるのは魔法や魔導の力だけだ。

 でも誰こんな……まさか()()()!?)

『……!? 翼!』

「!」


 蓮にとても大きな声で呼ばれ、翼は地面に向けていた視線を蓮が聞こえた方に向けた。



 *



 数時間前……『不死の泉』……。



「……彼ら?」

『そう、彼ら。彼らなら、その子を隠すのにも、もしバレた場合でも、安心して任せられるでしょう。

 それにもしかすると、私やトロイを用いた特訓を行ってくれるやもしれません』

「本当か!?」


 ソラは、フィアーラの発言に輝いた表情を見せた。


「だったすぐに、その人の元へ案内してくれ! 土下座でもなんでもして頼み込むから!」

『……案内は必要ありません。私の力で彼らの元へ飛ばします。

 帰りは、ソルガに力を貸してもらってください』


 そういうと、フィアーラは自身の翼を大きく広げ、ソラとその腕に抱かれている少年に向けて羽ばたいた。


 激しい熱風が二人を襲うと、二人の周囲をその炎が球体状にまるで壁のように包み込んだ。


 そしてフィアーラは再び翼を羽ばたかせると炎の球体は強い光を放ちながら姿を消した。



 *



 ソラは炎の球体に包まれながら、へんなグニャグニャと揺れる空間を通り、突如夜空へと投げ出された。


 二人を包んでいた炎は真っ直ぐに落下を開始。凄まじい速度で真下にある山に向けて落下していく。


 身の危険を感じたソラは、すぐに魔法を使った。


「《ウォール・クッション》!」


 手を前にかざし、壁を出そうとする。


 しかし壁は現れなかった。


「え!? この状況でなんで!?」

『もしかして、あの爆発で魔法にも感情を持ち始めて、トロイや朱雀にだけ名前が付けられたのが気に入らないんじゃないのか?』

「マジ!? この状況で!?」


 ソラはさらに予想外の出来事に混乱し、自分の理解が及ばなくなった。

 しかしもう文句を言っている時間はなく、落下しようとしている山はもうすでに目の前だった。


「あぁぁぁぁあ!? フ、『フワちゃん』! モクモクの名前は『フワちゃん』! マジで出して! 壁出して! 《ウォール・クッション》!」


 ソラがフワちゃんという名前をつけて再び手を前にかざすと今度はモクモクの壁が本当に出現した。


 モクモクの壁が二人を包み込むと、炎の球体は山に激突! 中にあった二人は包み込んでいたモクモクの壁が地面に激突した衝撃でさらに山の頂上方面に投げ出され、二人がいなくなった衝撃で空中にモクモクが空中を跳ねて、炎がそれに移っていたのか、一気に燃え上がって消滅した。


 ソラは中にいる少年を守るように抱きしめるながら沢山の葉っぱの生い茂った木々に落下。枝をバキバキと折りながら、地面に落下した。

 かなり痛がっていたが、背中から落下したため、抱きしめていた少年は無事だった。


「……なんど死にかける体験をすれば気がすむんだ僕……」


 自分の人生を呪い始めるソラであった……。



 *



 ソラは未だ眠ている少年を木にもたれかけさせ、安堵の息を漏らす。


「あんなことがあったのにまだ眠っているとか……どれだけ肝が座ってるんだか……」


 ソラは呆れながら顔にかかっていた髪を分けて笑みをこぼした。


「……!? ッ!」


 笑みをこぼした時、ソラの背後から()()()()()()()()()を感じ取った。


 ソラは少年を残し、かなり急ぎ足で地震が一番最初に落下した場所へ向かった。



 そこに着くと、木の陰に隠れて様子を見守った。


 しばらくそこで待機ているとそこに一人の男性と、今のソルガによく似た動物の姿を発見した。

 そしてソラは大きく目を見開いた。


 男性と一緒にいる獣……。それから漏れ出ている魔力はーーー()()()()()()()()()()()()()していた。


「ッ! 『(タウロス)』!」


 ソラは魔力を全開にして『(タウロス)』を身に纏い、地面を蹴った!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ