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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
中央国協同魔法学校
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思いの成長と疑問

 帰還した日から僕はすぐにマスターから虚無を発動するための特訓が始まった。

 虚無の発動のためには感情を無にすることや意思を消滅させることが発動のための条件だと教えられた。


 しかし、言葉でそれ教えられようとも、それを体に身につくことが出来なかった。


「任務以降、貴様の虚無に対する力が弱くなっている。

 このままいけば、貴様は廃棄処分だ」

「……申し訳ございません」

「まったく。この役立たずめ! 下がれ。今日はもう顔も見たくない」

「失礼します……」




『相変わらず感じの悪いやつだなあいつ』

「あの人はいつもそうだよ。僕のこと物としか見ていないからね。彼の反応はあながち間違っていないよ」


 マスターに呼び出された部屋を後にして、語りかけてくるソルガに対して声を殺しながら誰にも気づかれないように返すデルタ=Ⅳもとい、ソラ。


『『十二星宮』の連中は今も昔も変わらず人間が嫌いなようだな。

 人間を受け入れる器の大きさはやはり『レオーネ』と『アクエリアス』だけか……』

「ああ、彼らにとって、()()()()()()()か……」

『………なに?』

「知らなかったのか? その二人は昔に十二星宮を裏切り、世界を破滅に追い込んだものとして今もなお、裏切り者として世界中を捜索しているんだよ」


 ソラは以前マスターと呼んでいる人物からそう聞かされていた。それと同時に第一優先を抹殺の対象なのだと。


 以前のソラであったなら、命令あれば殺すことに躊躇はしなかったのだろうが…………彼女のことや今(ここ)にいるソルガのことが頭を過る今、ただ殺すということに不信感を持ち始めていた。


『裏切り……か。奴らはそう判断したのか』

()()()()、本来は違うの?」

『察しがいいな』

「僕も彼らには不信感を持っているからね。人を殺すことを当たり前としている連中がいい奴らとは到底思えない。

 誰とも知らない人を助けた彼女と違ってね」

『そうか……。お前はいい奴に、命を救われたな』

「まったくだな」


 お互いに倒れて動けない人をただ助けたいという思いだけで行動したコレットと呼ばれる女の子の存在を本当に関心する一人と一匹。


 そんな二人が行く道の先に一人の女性の姿を見かける。その女性はソラの存在に気がつくと、元気よく手を振ってソラ、もといデルタを呼んだ。


『続きはいつかな。俺は寝る』

「おやすみ。次起きるのは何週間後なんだろうな……」

「? 何か言ったの?」

「いいえ。なにも申し上げておりません、レオナ様」


 ソラは自分とソルガ会話をしていたことを現れたレオナに勘付かれないようにすぐに感情がなかった時の口調で言葉を返す。


 なにも大きな反応がないあたり、ソラの変化に気付いているということはなさそうだ。


「そう……。ところで、ソラはこのあと暇?」

「はい。本日のすべての業務は終了しております」

「そうなの。なら、今から少し付き合ってくれない?」

「別に構いません。何か予定でも?」

「ええ。これからご飯を作ろうと思っているから、あなたに試食してもらおうと思って」

「………」


 レオナの料理をと聞いて顔面を青ざめるソラ。

 以前に意識を失うほどの腹痛を引き起こしたことがあったため、その一言でその記憶が蘇り、顔を真っ青にさせる。


 ソラは隙を見てこの場から立ち去ろうとしたが、それをさせる前に腕をレオナに引っ張られて、そのまま調理室に直行。完成したレオナのご飯を食べる羽目となり………再び意識を失うのであった……



 *



「これから貴様に再び任務を与える。

 王都領土にある『不死の泉』を調査せよ。そこには不死の神、『フェニクス』が存在していると噂されている。それ誠であるかを調査せよ」

「………は」



 *



 王都領、『不死の泉』を中心に作られた町、『リボーン』


「国王様、もう真夜中です。もうこれ以上はお身体に触ります」

「……ああ。わかっている。私ももう休むよ」


 その町にある深夜の豪邸の一室で、警護をしていた一人の兵隊が未だに起きているご老人に早く就寝するように懇願していた。


「そう言い続けてどのくらい時間が経過している思っているのですか」

「ああ、すまないすまない。今から本当に休むから」

「……わかりました」


 そう言って部屋を出て行く兵隊。それを見送ったのち、言われた通りに眠りにつこうとベットにある毛布にくるまった。


「…………何者だ?」


 毛布にくるまったご老人がしばらく目を瞑り、しばらく時間が経過すると、まるでこの部屋に兵隊ですら気づかない人が潜んでいるかのように尋ねた。


 ご老人の問いかけに誰一人として答えるものがいないと思われたのだったが、天井から何かがバサッと飛び降りてきて、ご老人のに向けて膝をつき、深く頭を下げ、現れた。


「やぶ遅くに申し訳ございません。王都国王、『クロスフォード・エルフィード』様」


 頭を下げていた男、ソラが顔を上げて王都国王である『クロスフォード・エルフィード』に挨拶をする。そして自分がこうして現れた理由を説明する。


「私はあるものの依頼で、この町にある『不死の泉』に存在する言われている『フェニクス』調査をするために、ここまでやってまいりました」

「……目的の内容を喋っても良かったのかな?」

「ぼ……私としてはマスターの考えや目的そのものに不信感を持っているため、彼らのすべてについていことには同調できません」

「君には君自身の考えがある、ということだね?」

「はい。私目は『不死の泉』の調査よりも、そこに住むと言われるフェニクス自身に会うことが優先の目的でございます」

「会って、なにをするつもりだ?」

「……わかりません。なぜ私がそう思ったのか、その理由はわかりません。だからこそ、私自身がそう思う理由を知るために、()()に直接会って、話がしたいのです」

「……」

「こんな時間に、非礼であるということは重々承知しております。

ですが、どうか。どうか……」


 ソラの真剣な眼差しを見つめ、その眼差しになにかを深く考え始めるクロスフォード。

 しばらくその瞳を見つめたのち、自らを包んでいた毛布を払いのけた。

次回は8月8日に投稿します。

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