表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
中央国協同魔法学校
201/246

解決後の一週間

 魔族襲撃事件から、一週間が過ぎた……。


 私、コレット・フォン・ジェラードは、あの日から一度もソラと目を見て話したことがない……。



 *



 Ⅳ、そしてアンノーンが消え、空の裂け目からやってきた一人を除いた彼女達をソラは盾を使って救出した。降りてきた女性の一人は自らの力で浮かび、飛行していたが他の者達は自然の法則に沿って落下していったため、そのうち一人の同い年ぐらいの女の子を抱き上げ、他の者は自分の盾を使って大雑把に助け出す。


「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとうございます……助かりまし…たぁぁ?!」

「? どうかしましたか?」

「そ、そそそ空?!」

音姫(オトメ)。その方は先程まで一緒にいた空ではなく、別人のソラです」

「そ、そう言えば、そんなことを言っていましたね」

「空が伝えたか……。さすが、誰よりも未来を見ているだけはあるな……」

「……あなたも、事情を知っている人なのですね」

「いや……、()()()()()()()()()()だ」


 ソラがそう呟いた時、たまらなく辛そうな表情を浮かべていた。


「とりあえず、下に下ろそう。拾った残り二人をいつまでもあのまま放置というわけにもいかないだろう」

「それもそうですね。あのまま放置しているのはお辛いでしょう。目も回しているみたいですし。あ、それと、もしよろしければ、下に降りるまではしばらくそのままで」

「? とりあえずはわかったよ」

「?? ………?!」


 一人の女性の言葉にソラは首を傾けながらどういうことかわからないままゆっくりと下に向かって盾を下ろしていく。対して、腕の中で抱き上げられている女性は何かに気が付き、ジタバタと暴れようとするが状況を考えて、手で真っ赤になった顔を覆いながら恥ずかしそうに縮こまった。

 だがやはり、ソラには何もわからなかった。


 ソラ達が下にまで降りると、空に開いていた破裂が閉じ、何事もなかったかのような空が広がった。


 抱き上げている女性をゆっくりと下ろすと彼女はペタンと座り込んだ。


「……立てない」

「しっかりしてください、音姫。そんな調子では本番の際、身体が持ちません」

「ほ、本番で何?!」

「アハハ……立てますか?」

「だ、大丈夫です……」


 手を差し伸べたソラの手を掴み、立ち上がった。


 ソラは起こした女性の手を離し、すぐに悲しそうな目をした。


「ソラ」

「?!」


 悲しそうな目をしたソラはコレットに声をかけられ、大きく目を開く。対して二人の女性は声をかけたコレットの方に視線が向く。


 駆け寄ってくるコレット。その手がソラに触れようとしたとき、


「?!」


 ばっ!と触れようとした手を避け、距離をとった。


「え?」

「え? ……あ!」


 コレットはすごく驚いたような表情を浮かべるが、それ以上に驚き、そして悲痛な表情をソラは浮かべていた。


「……っ!」


 ソラは奥歯を強く噛み締めながら表情を歪ませる。とても辛そうな表情だった。


「……ヴァルゴ。あとで個人的に話がある。要件はわかるな?」

「……ええ、わかっています。話はまた後日」


 ソラはヴァルゴと呼ばれる女性にだけ声をかけ、この場はこうして収まっていった。


 多くの混乱巻き起こしたこの事件は多くの者に不安を残しながら、その不安が何も解決されないまま本当に解決した。


 その楔や綻びはそのままにしたまま……。



 *



 事件が解決した後、コレットは本当に賞賛された。


 一国の姫であると同時にこの学校を救った少女。さらには以前、自らの国を救い出したことを学校に通う生徒や先生は誰一人として忘れておらず、闘技場から発せられた巨大な魔力が消失した中、生還したこともあり、ついには英雄視され始めていた。

 コレット本人はそんなことないと否定するも、それがより好感持たれていた。


 そんな賞賛を浴びせられている中、ソラは人の間を掻い潜ってあっという間にその場から離れていった。


 コレットはすぐにソラの後を追いたがったが、人の波に飲まれ、側に近づくことすら出来なかった。


 今にも消えてしまいそうなソラの後ろ姿……。コレットはそう捉え、そんなソラの後を必死追いかけようとするが、人に阻まれ側に駆け寄ることができなかったが、その側をユイとミストが駆け寄り、拒否を示さなかったので、安心したように息を漏らした。


 その後集まってきた人達の視線は空からやってきた彼女達に向けられた。


 彼女達は左からヴァルゴ、青花 音姫(あおばな おとめ)坂本 洸夜(さかもと こうや)神田 優雅(かんだ ゆうが)と名乗り、古代人のような服装をしている彼女達に古代語解析組は異常なほど興奮を示した。


 それはもう小さな騒動になる程の興奮だった。


 コレットは慌てて興奮する解析組を収め、緊急手段として四人を一時的に皇国の別荘で保護することとなった。



 その後が大変だった。


 コレットは学校を救った英雄としての記事が出回り、多くの人から話をする羽目となった。音姫達も解析組の人達が何度も話をする羽目となり、皇国の別荘はこの一週間、集まった取材陣によってとても騒がしい日々を過ごした。


 そんな中でも、コレットは何度もソラに接触を試みた。しかし、ソラはコレットを避けるように姿を確認すると走り出し、逃げ出した。

 一緒に作っていた朝食はソラがまったく出て来なくなり、ソラ一人で料理をする時以外は一緒に食事を摂らなくなり、当番の日にコレットが接触を試みようとすれば、窓から飛び出して逃げ出す始末。当然廊下でも会えばすぐに部屋に戻っていく。


 そんな日々が続いていく中、時折ソラがヴァルゴと話をしていることを何度も見かけることがあった。その際、「山」という言葉を何度も耳にした。



 そんな忙しい日々が一週間経過したある日……、







 ソラは忽然と姿を消した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ