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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
始まりの魔術
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買い物ののち歴史本

 服屋にやって来た俺達は、コレットの買い物好き?とおしゃれ好き?の勢いに唖然としながら、コレットの服選びに付き合っている。


 通常、こんな緑化が進むと殆どの物がダメになるのだが、服にぴったり張り付いた入れ物に入った服は、何故か無事なのが多い。集めた服や、コレットが着ている服なんかもその部類だ。


 だが、こんな服を買うためのお金は持っていない。・・・お金はないけど、誰も使っている形跡もないし、払わなくてもいいだろ。


「・・・決まった?」

「まだ!もうちょっと待って!」


 それにしても…長い…。

 かれこれ2時間は経過したのでは?と思われる程、服を選ぶのに時間がかかっている。


 理事長とエリーゼさんのお買い物にもかなり時間がかかったが、女の子とはどうして買い物にそんなに時間をかけるのか、男の俺には分からなかった。


 その後、服とすかーと?がくっついた白い服と、水色の白い水玉がいっぱい描かれたパジャマを含めた何着かの服を選び持ってきたのはおよそ1時間後だった。



 *



 あたりはすっかり夜になり、もう既に日の光が見えなくなっている。コレットは疲れたのか、隣の部屋に見に行った時にはもう既にぐっすりと眠っていた。



 あの後、かなり大変だった。


 コレットは初めて見るもの全てに興味を示し、走り回り、質問責めにあい。

 ・・・なんだか…どっと疲れた……。


 そう思うと、ふと、色々なものに興味を示し、楽しそうに笑うコレットの姿が思い浮かんだ。


 ・・・まあ、楽しそうだったからいいか……。


 ランプに付けられた明かりを頼り、コレット共に古代都市を回っている最中に手に入れた本を取り出す。


 本の題名は『ジャンヌ・ダルク』


 おそらく、人の名前であろう歴史本。未だ、綺麗な状態の本を広げ、読み始めた。



 *



「ソラ」


 かなり集中して読みふけていたのか、コレットが声をかけられるまで気づかず、驚きのあまり声を上げそうになったが、それをどうにか抑え、コレットの方に向く。


「起こしちゃったか?」

「ううん、目が覚めちゃっただけ。そっち座っていい?」


 コレットはそう言うと、俺の了承を聞かず、こちらに近づいて来た。


 俺はため息を漏らしながら、俺の隣をポンポンと叩き、コレットは笑顔で俺の隣に座った。


「何読んでるの?」

「ああ、これか?これは、ジャンヌ・ダルクって歴史本だ」

「へぇ〜。初めて聞く題名。それってどんな内容なの?」

「・・・大まかでいいのなら」


 俺の言葉にコレットは何も言わず、笑顔で答える。


「・・・数百年前、コンバットの世界がこの世界と1つになるよりずっと昔、フランスと呼ばれた国で起こった戦争。ジャンヌ・ダルクはその戦争を勝利に導いた1人の()()()の話だ」



 *



 百年戦争と呼ばれたイギリスとフランスの戦争は、敗戦と休戦ののち、ジャンヌ・ダルクという女の子が現れた。


 ジャンヌ・ダルクは東部の田舎の農夫の娘として生まれた彼女は神の啓示…声を聞くことができ、戦争、こと重要な戦いに参戦し、フランスを勝利へ導いた。


 しかし、数多くの功績を残した彼女を権力者、俺たちの言うところの貴族たちは、それを許さなかった。


 貴族たちはフランスを勝利に導いた彼女を『悪魔と交信=通じていた魔女』にでっち上げられ、火刑、19歳という若い生涯の幕を閉じた。



 *



「・・・その25年後、死んだ彼女に対し復権裁判が行われ無実ということが証明され、フランスの守護聖人の1人とされていたらしい」

「・・・戦争を勝利に導いた聖女。すごい」


 話を聞いたコレットは感心したように声を漏らし、俺が持ってきた本を手に持ち、見つめる。


「きっと彼女は自分で選んで、戦ったんだと思う」

「え?」


 俺の言葉に反応して、本から俺の方に目を移し、こちらを見つめてくる。


「彼女は戦わないっていう選択もできた。故郷の農場で動物たちと戯れ、干し草の上で眠り、そして女の子らしく、恋をしたりできた」

「・・・恋……

「でも彼女は戦った。自ら望んで、戦場に立った。結果がどうあれ、自分が自分であると貫いて…ね…」

「・・・」


 俺の話が終わると、コレットは何も喋らなくなり、そして俺の肩に頭を乗せた。


「・・・私にできるかな?この人のように、自分が望んだことが……」


 弱々しく呟いたコレットの言葉に、一瞬返す言葉を悩ませる。そしてすぐに思い出す。『できる限り支える』ということを。


 だから、セリフや知った情報ではなく、自分の意思で……。


「・・・それは俺にはわからない」

「・・・」

「でも、君が考えて考えて、そして出た答えなら、きっとできるよ」

「・・・うん」

「答えが出るまで、そばにいる。悩んで悩んで、そして答えが出た時、俺が手伝ってやる。だから、今悩んで、考えて答えを出していけばいい」

「・・・・・・うん…ありがとう」


 頷いたコレットは顔を見られまいと、肩に顔を埋める。

 俺はそんなコレットの頭を、優しく撫でるのだった。

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