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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
中央国協同魔法学校
194/246

集う仲間

「Aga。Agaaa!!!!」


 怪物となったエデュートのその巨大な拳をコレットに向けて勢いよく振り下ろした。コレットは後ろに飛んで巨大な拳を回避しながらさらに距離を取る。


 エデュートから振り下ろされた拳は時計塔の大きな亀裂を走らせる。そして回避したコレットを追って何度も何度も拳を振り下ろした。


 回避するコレット。しかしエデュートの襲いかかってくる勢いが徐々に強くなっていき壁や床にどんどん亀裂が広がっていく。


「Agaaaaaaa!!!」


 そして暴走するエデュートの身体がさらに巨大化していき、その重みに耐え切れず、床が悲鳴をあげながら亀裂がさらに広がっていく。


 そして巨大化したエデュートがもう一度拳を振り上げると亀裂がさらに広がっていき、拳を放つと立っていた地面が崩壊を始めだした。


 振り下ろされた拳は落下しながらもコレットの真横にある壁に激突し、床と同じく壁も崩壊する。


 時計塔の床も壁も崩壊し、中の様子が丸見えにとなる。


 時計塔の壁が崩壊し、丸見えとなった中から二人の人物が落下していく。


 一人は巨大化し、人間の原型をとどめていない怪物と化したこの学校の先生、エデュート。そしてもう一人、怪物する前に相対していたコレットである。


 時計塔の最も高い場所の近くから落下していく二人。そんな中、コレットだけは落下しながらただ空を見つめていた。


 視線の先には貼られてあった結界が解かれ、いつも通りの青空が広がっていた。


 結界はコレットとエデュートが落下する直前に解除された。


 エデュート自身がコレットを襲う時に至る所を殴りつけ、床に亀裂が走ることで結界を張っていた術式を傷つけていた。さらに怪物となった瞬間、エデュートが術式を守るために張っていた壁は自然と消滅した。壁はエデュートの意識を使い安定した壁を張っていたのだが、薬を使ったことで正常な意識が消滅し、同時に張っていた壁が消滅した。


 壁が消滅し、さらに術式に亀裂が走れば、カンナにとってはそれはもう紙くず同然であった。


 カンナは術式を破壊するために強力な魔力弾を放つ。ついでに地面を走る亀裂を利用しさらに床を破壊し、エデュートを落下させようと考えた。


 その作戦はうまくいったかに思えたが、エデュートの振り下ろす腕が早く、地面の落下にコレットを巻き込んでしまった。


「コレット!」


 落下していくコレットを見てカンナはそう叫んだ。


 しかし落下しているコレット本人は自身が落下していくことに恐怖を感じていなかった。


 騒ぐ鼓動に合わせてコレットはゆっくりと大きく息を吸い、叫んだ。


「助けて、ソラ!」


 通常なら絶対に返事が返ってくることのない大好きな彼の名前。コレットは大きく脈打つ心臓の音を感じながら目を強く瞑り、胸を押さえた。


 そして、落下している浮遊感が無くなり、誰かに抱き上げられている感触を感じた。


「まったく。無茶をして僕を心配させないでよ」


 コレットの耳に聞き慣れた声が聞こえてくる。とても安心できる声……。


 目を開くと目の前に生徒救出のために別れたはずのソラの姿があった。


「来てくれると思った」

「来るさ。君を助けるためなんだから」

「生徒さん達はもういいの?」

「うん。全員助けて、先生とエリーゼさんに任せてある」

「ここに来ても良かったの? 気になることがあったじゃないの?」

「……君が心配だった。突然変な魔力を感じたから飛んで来た。君を守れたなら気になることなんて二の次だよ」

「……嬉しい」


 お姫様のように抱かれたコレットは目の前にソラに鼓動を高鳴らせ、本当に嬉しそうに微笑んだ。


 そんな二人の真上から時計塔から崩れた瓦礫が落下して来る。コレットはそれに気づき、ソラの名前を呼ぶ。


 ソラは自分の名前を呼ばれただけでコレットを見つめていた目を細めた。


 ソラの視線の先にはコレットと先に落下していたエデュートの姿があり、エデュートはソラ達の方に身体を向け腕を引き、殴ろうとする態勢を取っていた。


 そして腕を引いていたエデュートがソラ達を殴りつけようと拳を振り上げる。ソラは振り上げて来る拳を鋭く睨み付けると二つの盾が出現させ、盾の十字の先端をその拳に向けて放った。


 放たれた盾は振り上げた拳に深く突き刺さり、()()()()が突き刺さった拳から舞い散る。その後、ソラはコレットの視線の先にはもう一つの盾を出現させ、落下する瓦礫から身を守った。


 その様子を上から見ていたカンナは、ソラが盾を出現させ瓦礫から身を守ったのを確認すると、その盾に向けて自身も飛び降りた。


 上から誰か来ていることに気付いたソラは再び攻撃をしてかけて来るのではないかと警戒してエデュートに向けていた視線を自身の真上に向けて見つめる。視線の先でカンナがこちらに向けて降りて来ていることがわかるとソラはカンナの落下位置に自身の盾を構え、カンナが降りて来るのを待った。


 飛び降りたカンナは綺麗に盾の上に着地し、拳に盾を突き刺されたエデュートは地面に背中から落下していった。


「ソラ。コレットを助けてくれてありがとう」

「いいえ。これは僕が望んでしていることです。それに、コレットの嬉しそうな姿が観れたので正直役得です」

「ソラ……。恥ずかしいからそんなこと言わないで」

「ごめんごめん」


 恥ずかしそうに口を尖らせるコレットとその姿を見て何故か嬉しそうに微笑むソラ。そしてそれを見ていたカンナは呆れながら、「ごちそうさま」と呟いた。


 空中で静止させてあった盾に乗っていたソラ達は先に落下したエデュートの後を追って地面に降りる。抱き上げていたコレットを下ろし、仰向けになっているエデュートを見つめる。


「こんなでかい奴がよくあんな狭そうな時計塔の中に入っていられたな。あんな風に床や壁が崩壊しなかったのか?」

「この人、こうなる前は普通の人だったんだよ」

「人間?! 冗談だろ?」

「ううん。この人は間違いなく人だった。覚えてない? 私達の編入試験中他の試験官に頭を下げていた人」

「ああ、そういえばいたね、そんな人……。ちょっと待って。ということは、この人はその試験官だってこと?」

「それは間違いないわ。エデュートは妙な薬を自分に打ち込んで、こんな姿に……」

「?! 薬? 薬って言ったか!?」

「え、ええ。そういったけど……」

「不味い! 急いでこいつから距離を取ろう!」

「ど、どうしたの?」

「こいつはまだ生きてる! 今は僕達を油断させて一気に襲うつもりだ!」

「「?!」」

「……Agaaaaaaa!!!」


 ソラの予想は的中し、仰向けになって倒れていたエデュートは目を覚ました瞬間、ソラ達に大きな手を広げて振り下ろした。


 ソラは向けていた身体の方角を逆向きにし、二人の身体を抱き上げながら一気に距離を取る。


 ソラ達に振り下ろされた手がギリギリところで空を切り、地面に激突し、強い風が舞い上がる。巻き上がった風圧に巻き込まれたソラは態勢を崩し、地面に転がる。


 コレットとカンナはソラよりも少し奥の方に飛んでいき、ソラは三人の中で最もエデュートの近い位置で転がる。


 エデュートはその隙を見逃さず、さらに巨大化が進むその身体で再び襲いかかる。


 態勢を崩したソラはうまく身動きが取れず、振り下ろされる手をただ見ていることしかできず、万事休すかと思われたその時、突然学校の校舎の壁突き破られ、崩れた瓦礫から舞い上がる砂埃の中から巨大な生物が現れた。


「ソラをいじめるな!」


 そんな声とともに巨大な生物は手を振り下ろそうとしているエデュートに思いっきり体当たりをし、身体を吹き飛ばした。


「大丈夫?!」


 そう心配して声をかけて来たのは危険故にあえてカンナ研究室に残してきたユイと巨大化したミストの姿であった。


「……ったく。ユイちゃんやミストにはピンチの時によく助けられるよ」


 そんな言葉を漏らしながら膝に手を置き立ち上がるソラ。そんなソラに続いてコレットとカンナも立ち上がった。


「あいつを倒せば、ひとまずは僕達の勝ちだ。気合い入れていくぞ!」

「「「おおぉぉぉおお!!!」」」

「Gishaaaaa!!!」


 全員の先頭に立ったソラは懐からリボルバーを取り出し、盾のクリアプレートを差し込んでそう言い放つ。コレット達はソラの言葉に力を込めて返事をし、ミストは大きな雄叫びをあげた。


 相対するエデュートは倒れていた身体を起き上がらせ、ソラ達に向けて大きな咆哮を上げた


「Agaaaaaaa!!!」

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