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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
中央国協同魔法学校
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中央国での日常

 あれから一週間が経過した。


 学校生活は僕が王都にいた頃よりは充実している。


 勉学では、真面目に取り組めているし、わからないところなどはコレットに教えてもらいながら、勉強に育んでいる。

 ラベンダーの研究室に行けば、無数にある古代語の本を読みふけ、その本の内容について尋ねてくるカンナの助手をしているエリーゼさんに説明をしたりした。……一度だけ、読んでいる本が官能小説だったので、エリーゼは耳まで真っ赤にさせて叱りつけきた。申し訳なかったが、その姿はちょっと可愛らしかった。


 何も文句のない楽しい学校生活……なのだが、正直少しだ不満がある。

 それは、学校にいる生徒達があまりにも「弱い」ということだ。


 後々になって気づいたことだが、初日以降、生徒達が急激にやる気を出し始めたのは、なんでも僕を追い出す為だとか。不純な動機とはいえ、真面目に勉学に育み始めた生徒達は先生方に好感触で、勉学の内容が初日に比べて細かな内容になっていった。


 しかし、それでもなお、今まで通り傍若無人の生徒達はたくさんおり、真面目に授業を取り組んでいる最中、自分には必要ないと邁進し、教室から退出したり、そもそも授業に参加しない生徒まで現れ始めた。


 そんなこんながある中、やはり今までつけなのか自分に相手になる生徒は誰一人いなかった。


 ラベンダーから鍛えてもらっているエリーゼさんならば、相手になるかと思ったのが、以前に魔法について教えると言った手前、そのことを聞くことはできなかった。


 ラベンダーに特訓を付き合うことはできないのかとは尋ねた。しかし、生徒と先生という都合上、学校で大手振って、特訓をさせてやるかはできないようで、さらに、ラベンダー個人が表立って存在を知られたくないらしく、学校の端にある研究室からあまり外に出たくないとのこと。


 あまり無理強いはしたくないので、仕方ないと納得して引き下がった。


 仕方ないので、奈落で行なっていた基礎トレーニングとカンナから()()()()()()()()を得て、それを考える時間、学校生活以外の時間のほとんどをそれに費やしていた。



 *



 ソラ達が魔法学校に編入して十日目。


 ソラはいつも通り、朝早く目覚め基礎トレーニングを行った後、目を覚ましたコレットと共に朝食の準備に取り掛かっていた。


 しかしその最中、何度も町の方に視線を送った。妙な感じが前日から感じていたものの、ソラはあまり遠い範囲を調べることが出来ない為、ただ遠くを眺めるだけとなっていた。


(クロエだったら、もっといい円を使えるんだけど…流石に()()()()()妙な感覚に巻き込む訳にいかないし……)

「どうしたの?」

「え? ああ……。なんか向こうから妙な気配が…ってあれ? あっちって、学校の方角じゃなかったっけ?」


 朝食を作り上げたソラ達はは自分達が作った食事をコレットが並べ、ソラは兵士達の為に作った大きな寸胴に入れられたスープを兵士達に配っていく。


 そんな最中、ソラがチラチラと町の方に視線を向けていることに気付いたコレットは、スープが入った器を持って部屋から出て行く兵士達に配っているソラに駆け寄り、そう尋ねる。


 その言葉に答え、ソラは自身が気になっていた方角へ指差すと、その方角が学校の方角だと気付く。


「そうだね……。でも、学校なら何かある訳じゃないと思うし、大丈夫じゃない?」

「……そうだね。あんまり気にしてても仕方ないし、ご飯にしようか」

「うん!」


 そう言って二人は自分達が作った料理が並べられた食卓へ向かっていった。



 ちなみに、昔から自主的に作っていたコレットや一緒になって作り始めた料理はアッシュやマリー、そして料理長等からかなり好評で、ここ数日間、一緒になって特訓をするようになり、距離が近くなったので、以前から目論んでいた自分達が作った料理を振る舞うようになった。

 その目論見は大成功。兵士達にも大好評で、全員喜びながら料理を受け取っていった。兵士達にとって、それが最近の楽しみとなりつつあった。



 二人が食堂に戻ると、すでに全員集まっており、コレットをママと慕うユイちゃんが元気よくコレットの懐に飛び込んだ。


 コレットもそれを簡単に受け入れ、飛び込んできたユイを抱き上げる。ソラはコレットが抱き上げたユイの頭をそっと撫で、その姿に微笑む。ユイ本人も、ソラに頭を撫でられ嬉しそうに表情を緩ませ、ニヤケ顔を浮かべる。


 そんなまるで家族のような光景をまじまじと見せつけられ和やかな雰囲気が部屋中を包み込んだ。


「……さあ、いただきましょうか」


 マリーはそう言って三人に座るように促し、並べられた朝食を一緒になって食べ始めた。その際、ユイの「いただきます!」と、手を合わせて食べ始める姿にユイを除いた全員が微笑んだ。



 *



 朝食を食べると二人は学校の時間である。


「うぅ……」

「ごめんね、ユイちゃん。流石に娘は連れて行けないの……」

「大人しく待ってて。ね?」


 十日たった現在でも、別荘には取り残されるユイは出かける直前までずっと不機嫌であった。


 それもそのはず。ユイはコレット達と一緒に過ごすようになった二年間、一度たりともコレット達の側を離れたことはない。


 要は寂しいのだ。寂しいから連れて行って欲しい。しかし、学校に娘を連れて行くことはできない。


 お互いの意見が平行線となり、学校に行く直前はいつも長考し、いつもギリギリの時間となってしまう。それをエリーゼやカンナに伝えると、可愛らしいと口元を緩ませて笑っていた。


 ソラは今回も長丁場になりそうだなと、困ったようにため息を漏らす。ユイはこういう時に限って、ソラの言うことを聞かないので、ソラ自身も少々諦め気味である。


 そんなことを思っていると、背後からゾッとするような強い寒気が身体全体に走った。


 ソラは扉を背にしているので、先程の寒気の正体が扉の向こう側。それが近くに感じないことから、かなり遠くからそれを感じたと予測するが、それが結局なんなのかはソラにはわからなかった。


 しかし、その寒気は以前に感じたことがあった。圧倒的な力で手も足も出なかった彼。ソラの記憶にその姿が過った。


「クロエ! 悪いんだけど、この国中に円を! 大至急だ!」

「ど、どうしたの、ソラ?」

「いいから早く! 目につくものから肩っぱなしから言って!」


 ソラが突然慌てたように叫び、クロエは動揺するが、それでもなおソラは焦り声で言い放った。


 クロエは不審に思いながらも、ソラの言葉に従って、巨大な円を広げる。多くのものにはそれがわからないだろうが、魔導を使うソラとコレットには円を発動したのを肌で感じ取った。


 円を広げ、国中をくまなく調べるクロエ。それを静かに見守っていると、クロエが何かに気が付き、驚きの表情を浮かべた。



「ソラ、コレット! 大変よ! 学校が…()()()()()されているわ!」

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