対決はプレートの上で
6/8・編集しました
逃走あり、涙ありの日から翌日
机の置かれている部屋でノートを開き、頭を悩ませるソラの姿があった。
「卵1つとミルクの量は100ぐらいとして…やっぱり、バターと蜂蜜かな」
そのノートの端の方には『ホットケーキ』と書かれていた。
頭を悩ませている理由は簡単。『どうやったらより美味しくなるのか』ということだ。
(卵や牛乳の値段は高かったがそこそこある。・・・これからいくつか作ってみるか……)
そう思い、材料を準備しようと立ち上がろうとしてふと、コレットが眠っている部屋の方を見る。
「あ!・・・」
「・・・」
・・・何故か目があった。
目を合わせ気まずい雰囲気が俺たちの間に流れる。そしてコレットはそ〜っと首を引っ込めた。
なにこれ?
*
この部屋にあるキッチンに持ってきた材料が並べられる。
小麦粉一袋に白砂糖ではないが、砂糖一袋。そしてそこそこな量が並べられている卵と牛乳。
準備が終え、さて始めるか!と意気込んでいると、コレットが恥ずかしそうに部屋から出てきた。
「お、おはようございます…」
「おはよう。よく寝てた?ね。大きさは合ってた?」
「う、うん……。大きさは合ってたんだけど……」
「ちょっと子供ぽくない?」
コレットが来ているのは『パジャマ』と呼ばれる古代人の部屋着であり、俺たちと同い年の子供や大人でも着ている人はいたらしい。
コレットが着ているパジャマは、可愛らしい仔犬と三つ葉の葉っぱの模様がいっぱい書かれている服で、たしかに子供っぽいといえば子供っぽい。
「ごめんな。支給、女の子が着るような服は持ってなくてな。『どうやったらこんなことができるんだろう』と持ってきてたそれしかなくて。あとでいいのがあるのか探しに行っているよ」
「う、ううん!気にしなくていいよ!・・・それより、ソラは何か作ってるの?」
申し訳なさそうに答えると、コレットは手を左右に振って遠陵し、話を晒すようにキッチンに置かれている小麦粉や砂糖を見て尋ねる。
「ああ。ホットケーキでも作ろうと思ってな。知ってる?」
「うん!美味しいよねホットケーキ。生地の味を控えめにして特製のクリームをつけて食べるのがとっても美味しいんだよ!」
ホットケーキを作ると言ってとても嬉しそうに解説するコレット。余程好きなのか、手伝おうかと声をかけた。
「・・・は?」
ソラが言った、強い含みのある声にコレットは動きを止める。声を出した本人を見てみると、何言ってこいつとでも言いたげな表情を浮かべていた。
「生地の味を控えめにするともはやそれはホットケーキとは言わない。ホットケーキは生地本来の美味しさと蜂蜜とバターのストレートな美味しさこそ、本来のホットケーキなんだ」
ソラが怒ったような声を出した理由がホットケーキの調理法について怒っていたことにホッとする。
コレットが言ったホットケーキとは対照的に、ソラが言ったホットケーキは蜂蜜とバターを使ったよくあるものを主張する。
互いの主張が食い違う。しかし、片方の主張が折れれば簡単に解決できるようなもの。コレットの主張を否定するソラは自分の考えを主張し、譲りそうにはない。そのため、コレットが譲れば済むのだが……。
「それは、甘さを控えたホットケーキとクリームの良さがわからないからだよ!!」
こちらも全く譲らなかった。
生地本来の美味しさと味わい深さを主張するソラと組み合わせによってより美味しくなると主張するコレット。
2人の口論は今まさに切って落とされた!!!
1時間後
「こうなったら、どっち美味しいか食べ比べだ!!!」
「こうなったら、どっち美味しいか食べ比べだよ!!!」
・・・まだ続いてたのか……。
*
「えっと分量は……」
「これ使うか?」
「それは?」
「計量器と計量カップ」
「へぇ〜。クリームってこうやって作るんだ」
「作ったことないの?」
「うん。いつもは余ったものをちょっとだけもらうから」
「それじゃあ、覚えておいた方がいいよ。美味しいから」
「あれ?ソラ、火はどうしたら付けれるの?」
「あ、わるい。今『チャッカマン』渡すな」
「チャッカマン?」
「火をつける道具で、スイッチ1つで火をつける古代道具1つだよ」
「・・・綺麗に広かったな……。何かコツとかあるのか?」
「プレートから大体30センチ離れたところから落とすと、満遍なく広がるよ」
「え?!そうなの?!知らなかった……」
「私の方が先にしてるから、ソラが落とす時、やってみたらいいと思うよ」
口論していた2人とは思えないほど和やかムードで作られた2つのホットケーキがダイニングテーブルの上に並べられており、片方には蜂蜜とバターがのっており、もう片方にはクリームがトッピングされている。
「それじゃあ、食べ比べといきますか」
そう言って、テーブルの上に置かれている互いが主張していた方とは別の方のトッピングがされているホットケーキの方に座る。
「女神の守護よ。今日生きる糧を私に……」
「いただきます」
この世界の殆どの住民が行う。食前のお祈りをするコレットとは裏腹に、『いただきます』と、手を合わせ、あまりにも祈りを簡潔に済ませ、ホットケーキを切り分け始めた。
「い、いただき?」
「?ああ、『いただきます』ってのは古代人の食前のお祈りの1つで、合掌して命を大事にいただきますって意味を表しているんだと思う」
「命を…大事に……」
ソラの話を聞いたコレットは俺と同じように手を合わせ、「いただきます」だと言って同じようにホットケーキを切り出した。
「・・・別に真似しなくていいのに」
「いいの。私がそうしたかったから」
「・・・そっか」
そう言いながら、俺とコレットは切り分けたホットケーキを口に運んだ。
「「?!おいしい!」」
口の中に広がるホットケーキの甘さに思わず声が漏れる。ソラが食べたホットケーキは生地の甘さを抑えることで、クリームや他のものをより引き立てており、コレットが食べたホットケーキはソラが言っていたように生地本来の美味しさと蜂蜜とバターの味わいが口の中に広がった。
2人は互いに食べたホットケーキの味と美味しさに驚いた表情で互いを見合わせて、嬉しそうに笑い出した。
「驚いたよ。すごい美味しかった。さっきは強く言いすぎた」
「私の方こそごめんね。ソラが作ってくれたホットケーキ、とっても美味しかったよ!」
互いに笑顔で謝罪の言葉を口にして、コレットはもう一口とナイフを進める。
ソラはそんなコレットを見て、少しは楽な気持ちになれたかな。とそんなことを思いながら見ていると、不意に手に痛みが襲う。
痛みを感じる方を見てみると、カメ助が手に噛み付いており、その瞳からは、食わせろ!っと訴えているのを感じた。
それを感じ取った俺はカメ助が食べやすい大きさに切り分け、そしてカメ助に食べさせた。
カメ助は前足を使って器用にホットケーキを食べ、それを見た俺とコレットはとてもほっこりした気分で、再び食べ進めるのであった。
「・・・?!かめちゃんがホットケーキ食べてる?!」
「いや、遅いよ!!」