悩める姫の苦悩
前話があまりにも短かったのでもう1話投稿します
「どうしたい…か…?」
「そう。どうしたいか…だから」
ソラが私に問いかけてきたのはたった1つ。『どうしたいか?』ただそれだけだった。
私は真剣に考えて、答えを出す。
「私は…お父様を助けたい」
「そんなのはわかってる」
「えぇ!?」
あんなに考えたのに?!
驚く私に、ソラは呆れたように話し始める。
「お父さんを助けるのは当然のことだ。どうやって助かるかは、これから決めていけばいい」
ソラの言葉を親身に聞く私に、ソラはもう1つ、問いかけた。
「でも、もし助けたとして、君は犯人である宮廷魔導師をどうするつもり?」
「どうする?」
私はソラの問いかけの意味がわからず、首を傾げる。
「お父さんを助ける。当然のことだ。まだ作戦は考えてない。おおいに結構。でもな、国家反逆者である宮廷魔導師の人はどうするんだ?」
「・・・ご、ごめんね。私、よくわからない」
「・・・遠回しな言い方をしたら意味がないよな……。ならはっきり言うぞ。君は宮廷魔導師を殺すのか?」
ソラが言った言葉に息を飲んだ。
「ど、どうしてそうなるの!?」
「反逆者は、生かしておいてもどうせまた裏切る。それなら殺しておいた方が世の為。違うか?」
「で、でも、だからって……」
「じゃあ君は、裏切らないからって言って、一度裏切った人を信じられるのか?」
「それは……」
ソラの問いに言い澱み、言葉が出なくなる。
お父様を助けたい。でも、今まで一緒に過ごして楽しい思い出もたくさん作った宮廷魔導師さんに死んでほしくない。
頭の中で、お父様と宮廷魔導師さんのことがぐるぐると渦巻いていく。
頭を抱え、葛藤する私の頬っぺたを捕まえるようにソラの手が覆った。
「辛いか?苦しいか?」
目が合い、すごく単純なことを聞いてくるソラ。私は捕まらなが首を縦に降る。
「そうか。だったら、答えは出さなくていい」
「え?」
いきなりそんなことを言われ、驚きのあまり声が漏れる。
「涙が出るってことは、それだけいっぱい考えているってことだ。それだけ辛く、苦しい思いをするなら、答えは出さなくていい」
ソラは覆ったいた手で私の涙を拭いながら、なおも続ける。
「でももし、本当に、ほんと〜に公開したくないなら、考えることを最後まで辞めちゃダメだ。悩んで、苦しんで、そして答えが出たなら、それを実行すればいい」
覆っていた手を離すと、今度は私の両手をソラの手が包んだ。
「それまでの間、俺でよければ力になるよ。・・・と言っても、相談役ぐらいしか俺が力になれることはないと思うけどな」
「クス…うん」
ソラの言葉に安心する気持ちと呆れるように頬が緩む。
せっかくかっこよかったのに、最後ので台無しだよ。
でも、かなり気持ちが楽になった。すると今度は強い眠気が襲ってきて、目がとろ〜んとなる。
「・・・」
「・・・そんなに眠いなら寝ててもいいんだよ?」
「・・・でも、わるい、し」
「俺のことは大丈夫だから。今はしっかり休みな」
そう言って、ソラは私を横にならせ毛布をかける。徐々に意識も薄れていく。
「・・・ソラ……」
「?なんだ?」
「・・・おやすみ……」
「・・・ああ。おやすみ」
ソラの返事を聞くと、私の意識はすぐに途切れていくのであった。
*
コレットは寝息を立て、眠ったのを確認した俺は、コレットが眠っているベットに寄り添う。
スヤスヤと眠っている可愛らしい女の子。こんな子にあまりにも困難な難題をを突きつけたと、今更ながら後悔する。
それと同時に、これはこの子の『人生の分岐点』だろうとあたりをつける。
逃げるにしても、助けるにしても、おそらく人の死というの一生ついて回ることだろう。こんな現実を突きつけたことを本当に後悔する。
俺はスヤスヤと眠る可愛らしい寝顔を見て少し頬を緩ませる。
辛くなって、逃げ出してしまうこともあるだろう。
でも、本当に決めたことなら、できる限り支えてやろう。自分ができる精一杯で。
俺はスヤスヤと眠るコレットの肩をトン…トン…っと軽く叩き、眠っているコレットを見守るのだった。
「きらきらひかる よぞらのほしよ……」