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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
中央国協同魔法学校
167/246

到着。中王国!

 音姫達が亀裂に飛び込んだのとはまた別の時間、別の世界……。


「「おぉ〜〜……」」

「すごいね、ソラ、ユイちゃん」


 そこは中央国。


 音姫達が暮らしていた世界とは別の異世界。


 その世界で生きているコレット、ユイ、そしてソラは皇国を出発しておよそ一週間の時間をかけて目的地であった中央国に到着した。


 ソラ達が見渡す街並みは一週間ほど前にいた皇国の街に似ている風潮があるが、所々で王都の建築方法が使われていた。


「一週間もかかっちゃったけど、やろうして半日で到着するよりは、この一週間みたいに、ゆっくり、ゆったりと旅をするのもいいものだね」

「そうだね。早めに行って目的地に着いなちゃうよりも、いっぱいの景色を眺めながらはすごく楽しかったね」

「ね〜!」


 中央国に初めてやって来た三人は少々興奮気味に馬車の中から首を出して中央国の街並みを見て嬉しそうに呟いた。


「そういえば、コレット達はこの国に来るのは初めてだったわね」

「うん。だから少し楽しみなんだ〜」

「そう。でも、まずはあなたがこれから住む家に向かった後、私達が通う中央国協同魔法学校に向かって編入の手続きを済ませてもらうわ」

「わかっていますよ♪」


 ソラ達が外の街並みを見て楽しんでいると、一緒に馬車に乗っていたソラの左側に陣取っているエリーゼがその反対側に座っているコレットにそう言ってひとまず目的地を目指すこととなった。


 他にもライトやレミュート三兄弟が同じ馬車に乗っているのだが、長旅による疲れか、中央国に辿り着いたにもかかわらず、ぐっすりと眠っていた。





 中央国。


 この世界で唯一、人間同士の争いを禁止している国であり、各国代表による国際会議などを行う重要な国でもある。この会議で決まったこと一つで、世界を左右すると言っても過言ではない。


 しかし、会議の内容は様々で、主な内容は自国の利益となる話ばかりだとソラは聞いていた。それ以上は興味がないと判断したソラはあえてそれ以上話を聞こうとはしなかったが、現在では魔族との戦争の為の会議を行っている。


 そんな会議で一番最初に行われたこと。それは各国で最も優秀な若者達を集め、一つの学園を作り、お互いの将来の若者達による戦力の公開をするということであった。





「……というのが、この国と協同魔法学校がある理由よ」

「ならほどね……。まあ、権力者が考えるような面倒なものだね」

「でも、他国の戦力を知っておくことはかなり重要なことだよ」

「だがそれは戦うことを前提にしているからこそ出る考えなんだろう? 遠回しに「戦争をします」なんて言っているようなものに納得しろとか、むしろ無理だろう」

「それは…そうだけど……」


 ソラは中央国というそのもののあり方をエリーゼから説明され、理解はしたものの、戦争という考えがチラつくような考えに納得することは出来なかった。コレットも考えそのものは理解できるものの、ソラ同様に納得出来なのか、とても苦い顔をしていた。


「……それでも、戦わなければ大切なものは守れない。だから戦争をする。それがわからないあなたじゃないでしょ?」

「それはわかっているよ。でも…はいそうですかと、納得できないだけ……」


 エリーゼは戦争そのものをする肯定するわけではないが、それがある理由については親身に理解できているからそこ、それについてソラに尋ねると、ソラは渋い顔で納得はしていないものの、それについて理解をしていることを伝えた。


「そっか……。ところで、ソラ。あなた少し変わった?」

「? 変わったのは、見てわからないか?」

「いや、そういうことじゃなくて……こう、見た目とか?」

「は〜?」


 ソラはエリーゼに言われ、不思議そうに平らな氷を作り出し、鏡のように自身の姿を映し出す。


(自身の姿はいつも通り平凡で普通の顔だ。太っているわけでも、細いわけでもないが、カッコいい整った容姿かと聞かれれば、そんなことはない。いつも通りの平凡な特徴の無い顔。そして()()()()()()()()……)


「うん、いつも通りだ」

「いや! 明らかに変わっているでしょ! その目とか、髪の毛とか!」

「僕が力を使うときはいつもこの姿だよ?」

「なら戦いを行なっていない今は別にその姿にならなくてもいいんじゃないかしら?!」

「たまに、僕が()()()()()()()()()、この姿になる時があるんだ」

「はぁ?」

「まあいつも、時間経過で元に戻るからあまり気にしていないんだけどね」

「あなたね……」


 自身の姿が明らかに変わっているというのに、それに慣れてしまっているソラにエリーゼはすっかり呆れて頭を抱えるであった。



 *



 そんなこんなで、ソラ達は真っ直ぐにこの中央国で皇王達が住まう別荘に到着した。


 ソラ達は皇国から持ってきた積み荷を下ろしていき、それをアッシュが指定した場所にしまい込んだ。


「それで、僕達はここで失礼します」

「おや? ソラ君、君はここで過ごさないのかい?」

「ええ。これ以上みなさまに迷惑をかけるわけにはいきませんから。エリーゼさん達について行こうと思います」


 ソラ、そしてエリーゼ達は流石にこれ以上厄介になるのは申し訳ないとその場を離れようとした。


「それでは失礼しま……コレット?」


 その時、ソラはコレットの妙な変化に気が付いた。


 コレットは自分の顔が他の誰にも見えないように俯いており、その姿を心配そうに見上げるユイの姿があった。


 ソラはコレットの側に駆け寄り、様子を伺う。コレットは自身が呼びかけられことに気付いて俯いていた顔を上げて駆け寄ってきたソラの顔を見る。


 コレットの表情は少しだけ真っ青になり、大粒の汗を流していた。


 それを見たソラは表情は一変した。


「?! すみません! コレットの部屋は何処ですか?!」

「え?」

「いいから早く!」

「は、はい! 二階右の一番奥です!」

「わかりました! ありがとうございます!」


 ソラがコレットの部屋が何処にあるのかを教えてくれた人に一言お礼を言うと、ソラはコレットの体を支えながら倒して膝裏に腕を回して軽々と持ち上げた。ソラはその体制のまま家の扉を蹴破ってコレットに振動が伝わらないように急ぎ足で部屋に向かった。


「……いつからだ?」

「わかんない……。突然苦しくなって……」

「ッ! ごめん。ちゃんと見ていれば……」

「そんなことない…気にしないで……」

「……()()()()()()()?」

「背、中……。くるしい……」

「もう少しだ!」


 ソラがそう言うと、コレットの部屋にまで到着し、遠慮なく扉を破壊して部屋の中に侵入した。


 部屋に入ると、ソラはすぐにコレットを横に寝かせ、くるしいと言っていた背中を、苦手ながらもクロエから習った回復魔法で癒していく。


 痛みを訴えている背中を回復させていると、遅れてクロエがやって来た。クロエはソラが行なっている回復を横でアドバイスをしながら、コレットの容態をしっかりと確認していった。


 そんなクロエに遅れてアッシュやエリーゼ、皇国の兵士達がやって来たのだが、必死なソラやクロエの姿を静かに見守っていた。


 その後、ソラ達は必死に治療を進め、苦しそうにしているコレットの背中を治療していく。そして、背中の痛みがソラの魔法より背中の痛みな治ったのは、すっかりと日が落ちて、月の光が真上に到達する深夜の時間帯であった。

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