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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
未来を知る者たち
163/246

炎の翼と溶かす毒

 天高く舞い上がった炎の化身は、その翼を大きく羽ばたかせながら、音姫の体を操っているヴァルゴを見下ろしていた。


「……とり?」


 見上げる鳥のような炎の化身の姿に音姫は、まるで伝説上に出てくる不死の鳥、そのものに見えた。


 音姫はしばらくその姿を見つめていると、炎の化身は自身の翼をさらに大きく広げると、自身を覆っていた一部の炎が二本の線となり、音姫の周囲を囲むように燃え上がり、一本の道を作り出した。


『……バカな…ありえない』


 炎の化身まで続く一本の道が作り上げられると、その炎は払われ、空の姿が露わとなる。払われた炎は空の足場となり、まるで階段のように一段一段炎の足場から音姫の方に向けて降りてくる。


『この力、我々と()()()()()()()?! あなたの本当に力は、ソルガという()()()()()()()光の!』

「その力なら、()()()()()持っていないよ。それに僕では、彼の力を完全に解き放つことはできなかったからね」

「おそらく、今のままではダメなんだ。誰から与えられるものでも、自分を守るためのものでもない。()()()()()()()()()()でなければ、彼の力を解き放つことなんてできないんだ」


 ヴァルゴは降りてくる空の姿に驚きの色を隠せなかった。炎を自由自在に操るその姿を見たヴァルゴが言い張った言葉に空は淡々と答えていく。その表情からは何もない無表情で、ヴァルゴ達は空の感情を感じることができなかった。


「彼女のこの力は、単に隠し球でもなんでもない。愚かしい人間である僕に気まぐれで使わせてもらっている力だよ。なんて事のない、ただの魔装」

『ただの魔装が、我々同じ神霊の力を出せるわけがないでしょう!』


 ヴァルゴは再び光の球体を作り、空に向けて放った。空はそれを避ける事なく、真正面から受けた。


 光の球体は真っ直ぐに空に顔に向けて飛んでいき、顔に触れた瞬間、大きな爆発を起こした。


 球体が爆発してしばらくすると、ゆっくりと煙が晴れて行き、空の顔な露わとなっていく。空の顔は爆発で火傷を負い、さらに右目は爆発の衝撃によって潰されていた。


『「……魔装での負傷は心に深い傷を負ったという事。体の一部がそれ程までの損傷して、まともな精神ではいられないでしょう」』


 ヴァルゴは空の負傷具合を見て、そのように言ったが、空はそれをまるで気にしていないような風に傷口に触れた。


「……」

『「諦めなさい。先程とは打って変わって、酸性の毒を交えた魔力球です。触れただけで、いとも容易く溶かしてしまいます」』

「……」

『「強力な毒性を身体に浴びて、発狂をしない精神力には賞賛します。ですが、その傷でまだ戦闘を続けるおつもりですか?」』

「……」

『「私の魔力量は、はっきり言って無尽蔵です。さらに言えば、先程の魔力球に再び毒を込めることなんて容易いですし、このように」』


 ヴァルゴは先程と同じような魔力球を掌の上に生み出すと、その球は少しずつ形を変えて始め、それが次第に槍のような形へと姿を変えていった。


『「魔力球の形を自在に操作することができます。槍ならば、身体をを貫きながら、内部から毒を浸透させ死を与えることができます。それでもなお、お続けになされますか?」』

「……」


 ヴァルゴは空に対する死の宣告に近い発言をしているにもかかわらず、空は別に何もと思っていない様子で、未だに火傷を負っている頬を撫で続ける。その頬を撫でている指先や手の平がヴァルゴの毒によって溶け始めていた。


「……魔装の表面ではなく、その内側にある身体を簡単溶かしてしまうほどの強い毒。これ程の毒ならば、見えることができない人達にも視覚することができるでしょうね。そこところどうなの? ()()は、僕の顔が溶けているように見える?」


 空は自分の顔が火傷によって溶け始めていることを確認させる為に、森の方に視線を向けた。その視線の先には空達に向けて驚きの表情を浮かべながら歩いている来ている洸夜と優雅の姿がそこにはあった。


「……」

「なに…これ……」


 やって来た二人はただただ驚きの表情を浮かべているだけだった。


「……ああ! そういえば、二人は僕が戦っている姿を一度も見たことがなかったね。それにこのような現状は、本当に()()()()だ」


「なぜなら、この戦闘が一時間でも続けば、この星の表面は、()()()()()()()()()()()()ではなくなってしまうのだから」


 空はまるで見通したように現場を見てそう感じていた。


「……空! なんなんだよこれ! この炎は一体なんだ! どこからこの炎が出てきたんだ! それにそれに、その溶けている顔はなんなんだよ!」

「そんないっぱい質問してくるなよ……一気に答えられるわけないだろう……。まあ、簡単に言えば、これが僕が見ている幽霊との殺し合いで、それが人間常識を超えちゃった感じかな」

「な、なんなのそれ、意味わかんないよ! ちゃんと説明して!」


 洸夜が自身の理解が追い付かず、大量の質問をいっぺんに空にぶつけるが、空はそれ全てに応えることはせず、簡単に、まるでおちゃらけたように質問に答えた。しかし、当然のように二人が理解できるはずもなく、しっかりと応えるように再度尋ねる。


「う〜ん……。それ後でいい? まあ、きっと説明するのは()()()()()んだけどね」

「え?」

「ま、とりあえず、僕が使うこの炎も、溶解しているこの顔も、二人にはしっかりと見えていることだし……とっとと始めようか」

『「?! まだ続けるつもりなのですか?!」』

「うん。だって、今のところ負ける要素は皆無だし、一瞬で片付くからね」


 空はまで勝ち誇ったように笑みを浮かべるが、とても冷たい、まるで死んでいるよな視線を通して、ヴァルゴを見ていた。


『「そんなこと、ありえない! 何を根拠にあなたが勝ち誇ったと思っているの!」』

「な簡単だよ。だってこの程度の傷、()()()()()()()()というわけではないんだから」

『「? 何を言っているの? あなたは今、私の力によって、かなりの損傷を受けているのですよ。それで一体何ができる思っているの?」』


 ヴァルゴには空の言っている言葉の意味がわからずに、首を傾げた。

 

「……きっと、君にはこの言葉の意味がわからないだろうけど……今の僕は関係がないだろうけどね」

『「どういう意味です?」』


 ヴァルゴが関係ないないという言葉に反応して尋ねる。しかし空はそれに応えることはせず、なおも火傷の跡に触れ続ける。


 そんなことをしていた次の瞬間、その傷に思いっきり触れ、そこ火傷の跡を自らの手で()()()()()


 顔の外に向けてその跡を拭き取ると、拭き取った顔と触れていた手が激しく燃え上がり、強い熱気を放った。


 ヴァルゴ達はその光景に驚いて、萎縮する。しかし空はそんなことを気にしている様子はなく、ただ静かに燃え上がる炎が収まるのを待っていた。


 やがて激しく燃え上がった炎は本当は燃えていなかったと思わせてしまうほど、あっさりと鎮火した。


 それに音姫達は安心したように胸を撫で下ろした。だがヴァルゴだけは、目の前にいる空は姿に驚きを隠し得なかった。

 それはすぐに音姫達にも伝わり、三人も同様に驚きの表情を浮かべた。


「よし、それじゃあ、第二ラウンドと行きますか」


 なぜなら、燃えていた場所の下にあった『毒で溶けている火傷の跡』が()()()()()()()()()()()()()に戻っていたためであった。

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