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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
未来を知る者たち
154/246

淡い思いと強い意思

「まったく! あのバカは朝からどこをほっつき歩いているよ!」

「本当です!」


 お昼過ぎ、私達は観光の為に町の中を回っていた。

 朝、私達が目を覚ますと、大空くんの姿はそこにはなかった。

 同じ部屋だった神田くんと坂本くんは大空くんが居なくなり、残されている書き置きに目を通し、少し不機嫌になって居た。中でも、幼馴染の美里ちゃんと妹のアイリスちゃんは明らかにに不機嫌で、見るからに起こっていた。


「せっかく曜さんがわざわざ旅館の部屋を取ってくれたって言うのに、自分勝手に行動して!」

「さ、里美ちゃん。私、別に……」

「そもそも、あの鈍感はいい加減好意について気付けばいいのよ!」

「里美ちゃん?!」


 不機嫌に怒っているかと思っていると、突然隠していたはずの私の思いを何故か里美ちゃんに知られていた。その上、それをこの場所で話したりなんかすれば!


「さ、里美ちゃん。な、なんで……」

「いや。まさか気付かれていないとでも思ってたの?」

「気付いていないの、たぶん空ぐらいだと思うぜ」


 そ、そんな……!

 本人に知られていないとはいえ、まさかみんなに大空くんのことが好きなことがバレているなんて〜!!!


「好意って誰が誰に向けて好意を向けているんですか?」

「あれ? アイリスちゃんは気づかない?」

「はい?」


 アイリスちゃんは気付いていないみたいだったけど、今の私はそれどころではない。頭の中では大空くんにこのことがバレないようにすることで頭がいっぱいなのだ。


「それにしても、桜井さんはどうして彼のことが好きなの?」

「べ、別に、たいした理由があるわけじゃないよ」


 気付いていないアイリスちゃんを除いた三人が強い好奇心の瞳で私の事を見つめてくる。

 私はきっと顔を赤くしながら、三人を落ち着かせた。



 私と大空くんとは昔からあまり接点がない。


 彼と話をする時は必ず誰かと一緒にいる。私も、大空くんと話をする時はあらかじめ誰かと一緒にいる時に話をしている。


 単に一人で話すのが恥ずかしいからと一緒にいるだけで満たさせている為、それ以上は何もしない。一緒にいられるだけで、私はすごく嬉しい。


 でも、少しでも私の事を見て欲しいから少し頑張ったりする。家の巫女服や(みんなで)一緒にお出かけしたりと小さくアピールをしている。



 今日もお昼頃から一緒に出かければよかったのに……。


「というか、一体どこのに行ったんだろうなあいつ」

「音姫ちゃんを誘おうとしたけど、撮影の人も全員引き上げてたみたいだから、きっと帰ってると思うして……。ほんと、いい迷惑よね」


 ほんと…里美ちゃんはさっきから怒ってばっかり……。


 でも本当にどこへ行っちゃったんだろう……。


 そんな事を思っていると、商店街にあった古民家カフェから出てきた思い人である大空 空くんの姿を発見した。






 …………アイドルである青花 音姫さんと楽しそうにいる姿を発見した。



 *



「それで、大空君はこの後どうするの?」

「う〜ん……」


 空は少し悩ませながら、どのような返答を返そうか考える。

 それなりに考えはあるが、それは音姫が空の考えに納得するかと考えれば、少し微妙なところではある。


「……何か考えがあるの?」

「えっと…まあ……」


 少し言葉に詰まる。それに音姫は勘付き、その顔を覗き込んだ。


「……あるんだ」

「……」



「さあ、答えなさい! 何を隠しているのかな?」

「こ、こら! 抱きついてくるな!」


 音姫は思い付いた考えを聞き出そうと自身の体を激しく密着させ、必死に聞き出そうとする。

 逆に空は密着させられている()()が自身の頭や体を強く反応させる。その柔らかさが空の顔を真っ赤にさせる。


「わ、わかった! 話す、話すから! 離れてくれ!」


 正直、名残惜しいとも思うが、これでは話をするどころではない為、抱きついている音姫に離れるように言った空。音姫は少し不満そうな表情を浮かべながら、は〜いとその言葉に従った。


「それで? 隠していることはなんなの?」

「うん……。伝承にあった女性の話は人が語り継いだお話だと推測できる。僕が聞いた妖の話とはまったく別の人お話。ということは、妖には妖の語り継いできた伝承があると思うんだ」

「妖が…語り継いだ……」

「だから、その伝承の話をこれから()()()()()()()思ってる」

「聞きに行こうって……まさか?!」

「そう。妖に直接話を聞こうと思ってる」


 空がそう言うと、とても驚いたような表情を浮かべた。


「あ、危ないよ!」

「危険なのは承知の上だよ。でもそれぐらいはしないと、知ることはできないんだ」


 音姫は危険な事をしようとする空を止めようとするが、空の意思を揺らぐことはなかった。


「オトメ。君はもう帰れ」

「?!」

「君も言ったように、危険なんだ。危ないことに友達を巻き込みたくない」


 空は音姫を見つめながら、これ以上一緒にいるべきではないと判断し、旅館に戻るように指示を出す。音姫も驚いて固まって空を見つめる。


 そして答えを聞かずに歩き出そうとすると、音姫は無意識に袖を掴んで、歩き出そうとするのを止めた。


「……オトメ?」

「危ないからって理由で、友達を危険な目に巻き込みたくない?」

「お、オトメ?」

「だったら、一人にさせられないよ! 友達だったら、危ないことから友達から守らないでどうするの!」

「……止めたって無駄だよ」

「わかってる。だから……私も一緒に行く」

「は?!」


 まさかの音姫の一言に驚きを隠せなかった空。


「危ないんだよ? ひょっとしたら、死んでしまうかもしれないだよ?」


 すぐに同行するのを止めよう試みる。しかし、音姫の決意は揺らぐことはなく、


「なら、大空君が私の事を守ってよ! 私が死なないように、笑っていられるように」


 と言い放った。


 空は頭を抱えながらチラッと音姫を見る。恐怖の色は少なからずある。しかし、その瞳は決して揺らぐことはない強い瞳をしていた。

 そのような瞳を空は知っている。まっすぐで、純粋で、力強い意思を宿しているものだ。


「……わかった。いいよ。付いてきて」

「ほんと!」

「ただし、僕が少しでも危険だと判断したらすぐさま逃げること。これが条件だ。それが聞けないというのなら今ここで置いて行く。いいね」

「うん!」


 空は仕方なく音姫の同行を許した。音姫は嬉しそうにある場所を目指して歩き始めた空にぴったりくっついてその後に続いて行く。


 その光景を見られてるとも知らずに……。



 *



「「「「「…………」」」」」


 ……何あれ。


 ナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレナニアレ


 今の出来事を受けられることが出来ず、動揺する五人。頭の中でなんだも尋ねてみるも、その答えは帰ってこない。


 五人の耳には二人の声が聞こえてくるかはなかった。しかし、音姫が後ろから空に抱きついている光景をその目にしっかりと焼き付けていた。


 その光景の意味を理解できていない中、いち早く現実に戻ってきたのは、幼馴染の里美であった。

 里美はすぐに動き出し、二人のに気付かれないように後を追い始める。四人もすぐに意識を取り戻し、二人の後を追っている里美を追いかける。


「さ、里美ちゃん。あ、あれはどういう事なの?」

「私が知るわけないでしょう……。だから後を追うのよ」


 曜はすぐに追いついた里美に先程の光景について尋ねてみるもその理由がわからないと答えた。


「それに……()()()()()()()()

「さ、里美ちゃん?」

()()()()を勝手に取っちゃうなんて……いけない子」


 その言葉を聞いて悲鳴を必死に抑えながら、里美から少し距離を取る曜。今の里美の姿を曜は初めて見た。


 里美は動き出した空達の後ろをすぐさま追いかける。曜達四人も気になる空達のことが気になるとするが、それ以上に雰囲気が異様に変化した里美を追いかける為に、四人は三人の後を追い始めるのだった。

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