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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
2年後の世界
143/246

林での遭遇

 あたりがだいぶ暗くなり、道中発見した林で一晩変えようとそこで野営の準備を整えている中、ソラはコレットに長時間のお叱りを受け、野営の準備が完了するまでこってりと絞られていた。


「イテテ。足が痺れるまで正座なんてするか普通」

「長いお説教でしたな、ソラ殿」

「ソラ殿はやめてください。権力なんて持っていませんし、それに、敬語は苦手なんです」

「ああそう! なら遠慮なく!」

「軽いな……」


 一人の兵士がソラに堅苦しく話しかけると、ソラはバツの悪い顔で敬語をやめるように言った。すると、兵士はあっさりと敬語をやめて軽々しく話しかける。


 そんな兵士の姿に呆れつつも、普通に言葉を返していくソラ。そんな姿が他の兵士達の目に留まり、続々とソラを中心に集まっていった。


「ところで、我が国の麗しの姫君とそれに負けず劣らずの容姿とあのスタイルの持ち主であるエリーゼ殿に板挟みにされて……、羨ましい事この上なかったですな」

「う〜ん。そこはあえてノーコメント…と言いたいところだけど、正直な話、あんなおいしい場所を譲ってたまるか(コレットの隣だしね)」


 兵士の言葉に自慢げに語るソラ。集まってきた兵士達は「お〜」と感心の声を上げる


「やっはり、二人からは女の子特有の甘い香りがしたりとか!」

「女の子の柔肌の感想を〜!」

「一体どうやったら君みたいにモテるんだ!!」

「ちょ、ちょっと、そんないっぺんに答えられないよ! それと、僕はモテないからな! モテるとかモテないとかの恋愛関連の聞くならホプキング君にでも聞いてくれ!」

「ええ??!!」


 兵士達の言葉に熱が入る。女性にモテない兵士達が二人の女性に言い寄られている事を羨み、少しでも恩恵にさずかろうとソラからコツを伝授させてもらおうとどんどん詰め寄っていく。


 困り果てたソラは、学校でのライトの人気を思い出し、その手の話を持ちかけている人達を丸投げした。丸投げされたライトはたまったものではないが、詰め寄ってくる兵士達に圧倒されるが、まるで慣れている様に一人ずつ、それも的確に捌いていった。


 王都の下町で働いていた酒場でギルドやマスターであるおやっさんと共に様々な話をした事があったが、恋愛関連の話はあまりした事が無かったソラにとって、ライトの兵士達の捌きは眼を見張るものがあり、「すご……」と感心の声を漏らした。


「べ、別に、そんな事ないよ」


 そんなソラの声が聞こえていたのか、ライトは恥ずかしそうに顔を赤くしながら顔を晒していく。


「いやいや、俺はそっち関連の話は殆どした事が無かったから、君の対応は正直にすごいと思うよ」


 ソラがそう言うと、ライトは頑なに視線を合わせなくなった。その後も、ソラへの追及は続いた。その中で兵士が言った「……柔らかかったですか?」という言葉に「二人とも最高でした!」とソラは言い放ち、顔を真っ赤にしたコレットから本日二度目のお説教と、エリーゼと自分のどちらの方(胸)がいいのかを深く追求されるのであった。



 *



「……かくして、お姫様は王子様と幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」


 周りはすっかり夜になり、とても人気の夕食(コレット作)が終わり、かなり遅い時間のため、ユイちゃんを寝かしつける為に、持っていた昔話の本(古代語)を読み聞かせた。その結果、


「スゥ……スゥ……」

「寝ちゃった」


 小さな寝息をたてながらコレットの膝を枕にして眠ってしまった。コレットはそんなユイちゃんの頭を撫でる。すると、自身に視線を向けている二人の女の子の姿を視界の端で発見した。いや、正確には自分が撫でているユイちゃんの方である。


「……。撫でてみますか?」

「え?! いや、えっと……いいの?」

「クスッ」


 コレットが見つめられている理由に気づき、二人に頭を撫でてみるかと尋ねると、ミンが慌てながらもいいのかを尋ねると、コレットは笑って頷いた。


 ミンはコレット側にまで近づいて、ユイちゃんの頭をそっと触れる。触れられ小さく声を漏らすと、ミンは驚いて触れていた手を引いたが、未だに眠っている姿を見て、再びゆっくりと頭に触れてそっと撫でる。撫でられているユイちゃんは嬉しそうな寝息を漏らし、それに安心して強張った頬が緩み、僕達と出会ってから始めて笑みをこぼした。


「うう……」

「妹よ……」


 妹の成長した姿に感動して涙を流す二人。しかし眠っている小さな子供がいる故か、大きな声を上げない様に必死に堪えていた。ありがたい限りだ。


 対照的にライトは信じられないものを見ている様なそんな視線を送っている。何かあったのか?


 コレット達の方を見ると、今度はエリーゼさんがユイちゃんの顔を覗き込んでいる。しばらく眠っている姿を見ていると、こちらも頬が緩み、ニコニコとした表情でユイちゃんを見ていた。


 正直、エリーゼさんのあの表情を初めて見たけど……ユイちゃんはかわいいからね! 仕方ないね(親バカ)!


「あの〜、ソラ様」

「はい?」


 四人の方に意識を向けていると、突然背後から話しかけられた。振り返ると、まるで研究者の様な白衣を着たぐるぐるの丸眼鏡をつけた子供が話しかけてきた。


「えっと…君は?」

「えぇ。自分、アネッタと申します。えぇ。自分、これでも皇国の研究者をしております。えぇ」


 アネッタと名乗った子供は自身を皇国の研究者と名乗り、それに僕は内心驚きつつ、皇王様の方を見ると、皇王様は小さく頷いた。


「は、はあ……。そんな研究者様が俺に何か?」

「えぇ。あなた様が先程お読みした本の事で尋ねたい事がありまして、。えぇ」

「えっと、これですか?」

「えぇ。それを少し読ませてもらってもよろしいでしょうか?」

「構いませんよ」


 取り出した絵本をアネッタに渡すと、すぐさま本をペラペラとめくり、目を通していく。そしてしばらくして目を通し終えると、


「……なるほど」


 何かを納得してめくっていた本を閉じた。


「ソラ様。ありがとうございました」

「い、いえ……。何かわかりましたか?」

「いいえ。なにもわかりませんでした。えぇ」

「そ、そうですか……」

「えぇ。()()()()()()()()()()()()()()()。えぇ」


 そう言って、アネッタは僕をがっしりと捕まえ、笑みを浮かべながら僕の顔を覗き込んできた。


「ソラ様! あなたは古代語を読むことができるのですね! えぇ!」

「え? はあ…まあ……」

「自分、今目を通させてその本を()()()()解読することができませんでした。えぇ。ですが、あなたはこの本の解読をすることができます。えぇ。ですので後日、じっくりとお話をお聴かせていただきたいのです! えぇ!」


 興奮気味のアネッタはぶつかる様な勢いで迫ってきた為、僕は慌てながら了承した。


「わ、わかりました。では後日、そちらに伺いますので、その時にお話ししましょう」

「本当ですか! では後日、しっかりとお話をしましょう! えぇ!」


 僕が了承の言葉を述べると、アネッタは満足して、自身が乗っていたであろう馬車へ戻っていった。


 僕は先程のアネッタの姿にすっかり呆れていたが、すぐに頭の中である言葉が繰り返される。


(研究者……ってことは、それなりに研究資料があるって事だよな。それに古代語に興味があるって事は、僕が見たことない古代人の本や資料がたくさんあって考えても支障がないはず! このお誘い、しっかりと受けさせてもらおう!)


 ソラは気付いていなかったが、先程の話はコレット達の方まで聞こえており、会話を聞いて、なんとなくソラがどのような反応をわかっていたコレットは内心呆れていたが、古代語にすごい興味を持っていることを知っていた為、今回のお話については叱ろうとは思わなかった。


 ちなみに、ソラ達は知らない事だが、アネッタは皇国で最も優秀な古代学者であり、数多くの古代の本を解読し、中央国の古代語教師としてお呼びがかかっている今年()()()の天才少女であった。



 *



 寝静まった深夜。


 ソラは兵士達に一言言って馬車から離れ、林の中を歩いていた。


「ふ〜。スッキリした。それにしても、手を洗うのにもやっぱり水魔法は便利だな」


 ソラは独り言のようにそう呟くと、プカプカと浮かせていた水の魔法を解き、ハンカチで水を拭き取った。


 次の瞬間、懐にしまってあったリボルバーを引き抜き、後ろに振り返った。すると、持っていたリボルバーと突如現れた鎌の刃が衝突し、火花を散らす。


 リボルバーで必死に攻撃を防いでいると、徐々に刃に重みを感じ始め、体がどんどん後ろの方へ押され始める。


 明らかに重い鎌。ソラはまず、魔導だと考えたが、鎌自体に魔力があるようには見えない。次に考えられるのは勢い。


 だがそこまで考えて、鎌の重みに思考が耐えられなくなった。体が設置している地面から吹き飛ばされそうになり、慌てて体を逸らして鎌先から回避する。


 ソラがいた位置から真っ直ぐ飛んでいき、後ろにあった木に勢いよくぶつかる。すると、触れた鎌が木の幹をする貫通し、さらに十メートルほどある後ろの木に持ち手の半分ほど突き刺さり、勢いが停止した。


 ソラは目の前で鎌だけの力で木が貫通する光景に驚いて、言葉を発することができなかった。


 しばらく惚けていると、鎌についていた鎖がジャラリと揺れ、凄い勢いで暗い林の方に引き戻された。その時ソラは、動き出した瞬間、後ろの方へ頭一つ分の距離を取った。その行動は正しく、先程まで居たにいた場合、確実に首を刎ねられていた。


 暗闇の方に消えていた鎌の方を見つめていると、大きめのボロボロなローブを身に纏った口の無い仮面を付けている男が姿を現した。手には先程襲ってきた鎌とそれに繋がれた鎖がそこにはあった。


「貴様、何者だ!」

「……」

「何が目的だ!」

「……」

「答えろ!」


 命の危険に晒された故に、ソラは抑えていた感情を剥き出しにしてリボルバーの銃口を仮面の男に向けた。


 それが開戦の合図となり、仮面の男は持っていた鎌を引き、地面を強く蹴って、向けて襲いかかった。

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