魔法が飛ぶ逃走劇
4/22・1部を編集しました
お姫様を背負って足元に気をつけながら、かなりのスピードで木から木へと飛び移る。
普段ならもう少しスピードを落としているのだが、そんなことをしたら大変なことになる。
「ウィンド・スラッシュ!」
下から聞こえた声の後に、先程丁度ジャンプした位置の枝が何かに切られ、下の方に落下する。
ウィザードの人が魔法を使いながら俺たちを下から追いかけてきたからだ。
おそらく、空気圧を飛ばしていると思うその魔法は凄まじく、当たれば俺の体を真っ二つに出来そうなほど、とてつもない切れ味だった。
しかし、いきなりなぜこんな状況になったのか?
それは割と簡単な理由である。
「私をドウセイアイシャと言ったこと、後悔させてやる!!」
という理由である。
ドウセイアイシャという意味を知っているあたり、古代語にはそこそこ知識があるのだろうと思っていたが、まさかここまで怒るとは正直思っていなかった。
とにかく、今わかることは……
「当たれ!」
再び魔法が放たれ、木の枝が切断される。先程よりも枝に立っている時間が短くなってきた。
今わかることは、止まったりすれば、間違いなく殺されるということだ。
これ以上ついてこられたらやられる!そう思った俺はある場所に向かう為、枝と枝の間を真っ直ぐ飛んでいたのを急に方向転換し、右の方に飛んだ。
*
男の子が急に右の方に飛んでしばらく経った。
同性愛者と言われ、恥ずかしい気持ちと怒りの気持ちが入り乱れ、男の子に魔法を放っているが、向こうからの反撃はない。それどころか逃げの一辺倒だ。
何かあるじゃないかと思いながら、男の子を追いかける。
そして、彼が背負っているのはおそらく、最近逃亡したとされる皇国の姫君だろう。
詳しいことはわかっていない。だが、話では皇国の国王を暗殺行おうとしらしい。その為、発見した全国手配されている彼女に話を聞こうと試みようと思っていたのだが……。
何故こうなったのでしょう……。
「今だ!カメ助!」
物思いふけっていた私は、男の子に現実に引き戻される。すると男の子がいるであろう木から、こちらに向けて電撃が飛んできた。
電撃は私の頭めがけて飛んできており、急いで前方の方に勢いよく避ける。
電撃はそのまま私の後ろに飛んでいき、地面に落ち消滅した。
その瞬間、私の足元が崩れ去った
「?!」
落とし穴?!
正直、使い古された作であり、今では誰も使いもしない作ではあるが、不意打ちでの罠には効果的であった。
私も動揺し、考えを鈍らせる。そして、状況を理解し、瞬時に浮遊魔法で空に飛んでいき、森の空に出る。
上から見た森は森の内部を確認することが難しく、先程男の子を発見することが出来ない。
だが、先程のように下から木を見れば、電撃を撃たれ落とし穴にはまる可能性がある。
浮遊魔法を使えば落とし穴は回避することが出来るが、浮遊魔法はかなりの魔力を使う。出来れば避けたい。
どうしたものかと考えていると、
「よし!今がチャンスだ!今のうちに王都に向かうぞ!」
「カメ!」
そんな声が聞こえてくる。
なるほど。目的地は王都か。
私は、浮遊魔法で王都に向けて先回りするのだった。
*
「・・・やっと行ったか……。ありがとな、カメ助」
「カメ!」
木の上に隠れいた俺は、そう言って、手に持っている物をカチ!っと電源を切り、ため息が漏れる。
ウィザードの人を引っ掛けた落とし穴は、もともとイノシシを狩るために作っていたのがまさかこんな形で役立つと思っていなかった。
そしてウィザードに放った電撃はカメ助が使うことが出来る唯一の魔法だ。
でもそのおかげで助かったと考えれば十分であろう。
「それにしても。やっぱり、意外と役立つなこれ」
これとは俺が勝手に言っている『古代便利道具』で、その1つ『カセットテープ』だ。
このカセットテープに録音していた俺とカメ助の声に騙され、ウィザードの人は王都方に飛んで行った。
「もう少し声が大きかったら、こんなの使わなくていいんだけどな」
「カメ〜……」
カメ助は申し訳なさそうな声を上げながらしゅんとなる。俺はその頭を撫でると、嬉しそうに擦り寄ってくる。
愛くるしい姿に頬を緩ませながら、背負っている女の子を見る。
女の子は未だに眠っている。余程大変な目にあったのだろう。
王都の方に向かったウィザードのことを考えると、王都には行けない。
となると、俺が行けるところは残り1つしかない。他は全部王都の中だ。
俺はその場所を目指して大急ぎで向かうのだった。