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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
2年後の世界
133/246

帰宅途中

 馬の手綱を引き、馬車の車輪を回しながら皇国への道のりを進むソラ達を乗せた馬車。荷車には手綱を引くユゥリとそれに乗ってきたソラとコレット。コレットの膝の上では泣き疲れたユイがぐっすりと眠り、離れられないようにガッチリとソラの袖を掴んでいた。


 そして、たまたま再開したエリーゼとその仲間達を乗せているが、無理矢理連れて行こうとしたライトは一切身動きが取れないようにロープでガチガチに固定されていた。



 その状態になる前、ロープで縛り上げる時に、ソラが暴走し、ライトを氷炎で凍らせ(燃や)そうとし、コレットの「ダメ!」の一言で渋々引き下がり、凍ら(燃や)せなかった事とコレットが庇った為、ソラを知らない人が見ても分かり易い程不機嫌になっていた。それを知らない他の者達はそれを不思議に思っていた。


 ただ一人を除いて……。


「……それで。そろそろ説明してくれないかしら?」

「……え? 何を?」

「二年間も何処に居たのかとか、何をしていたのとか。特に、その子の事とか…………()()()()()とか……………」

「えっと……。まあ、色々あったんだよ。後、人に関係を聞くのは野暮だよ」

「……っ」


 少し不機嫌そうにソラと隣にいる二人を見つめながら、尋ねるエリーゼ。馬車の音で聞こえない程小さな声もソラはしっかりと耳に届いた為、驚きながら目を丸くした。その頬は少し赤くなっている


 ソラは気分転換を兼ねて、馬車の前の方を覗き込む。ユイが袖を掴んでおり、大きく動く事は出来ないが、それでもユゥリや馬の背から皇国へ向かう道を確認する事が出来た。


 野原の中央を遥か遠くに見える皇国まで伸びた道。その道を悠々と進んでいく自分達が乗っている馬車から外を見ているソラは道で立ち止まっている荷車を発見した。


「どうしたんですか?」

「実は、溝に車輪がはまってしまいまして……」


 馬車を見てみると、深い溝に荷車の車輪がはまり身動きが取れずにいた。持ち主であろう二人の男達は必死に荷車を動かそうとしていた。


 とっさに動いたのはトム。トムは困っている二人を助けようと馬車から降りて手伝おうとした。それに続いて馬車から降りる。二人は急いで荷車押し、必死に動かそうとするが、ビクともしなかった。ライトは未だ気絶している。


 ソラはそれを見ていたが参加せず…いや、参加する事が出来なかった。未だ目を覚まさないユイ。そのユイが未だガッチリと袖を掴んでいた為であった。


 馬車が全く動かない為、外にいる男子達はどんどん騒がしくなっていく。ついには騎士であるユゥリも参加。ソラが参加してこない理由をトム達に呟くと、仕方なく納得し、今度は五人で荷車を押す。少しだけ荷車が浮き上がったが、溝から脱出するかは出来なかった。


 だが、外が騒がしくなっていった為、ぐっすりと眠っていたユイが外のうるささに目を覚まし、不安定な意識の中、体を起き上がらせた。


「うるさい……」

「あ! 起こしちゃった?」

「うん……」

「起きて早々悪いけど、少しの間、で離してくれないかな?」

「……どうして?」

「外の奴らを黙らせるよ」

「……」


 眠たそうなユイはソラにそう言われ手を離すと、コレットに抱きついて再び眠りについた。


 ソラは「いってきます」小さな声で呟き、ユイの頭を撫でる。撫でられたユイの頬が綻び、小さな笑みを浮かべた。そしてソラの呟きを膝を枕にされているコレットが「いってらっしゃい」と返事を返した。


 ソラが馬車から降りると、すぐに荷車に駆け寄る。


 三人目の男子の登場に驚く男達。だがそれ以上に驚く事となる。駆け寄ってきた三人目の男は荷車を押すのではなく、その場にかがみ込み、荷台を下から掴んだ。


 五人は流石に無理だろうと思っていたのだが、ソラはまるで重さを感じていないかの如くいとも容易く荷車を軽く持ち上げ、落ちていた溝から少し離れていた場所に置き、一仕事終えたかのように息を吐き、手をパンパンと叩いていた。


「これで良かったですか?」

「え、ええ……」

「それでは、こちらも先を急ぎますので」

「ま、待ってください!」


 ソラが確認を取った男は唖然となりながら空返事で答える。それで用は済んだとユゥリ達に呼びかけ、この場を後にしようとした時、それを返事を返した男とは別のもう一人の男がソラ達を呼び止めた。


「どうかしましたか?」

「もし宜しければ、お礼をと思いまして」

「お礼…ですか?」

「はい。それは……」

()()()()()()()()()()()()()?」


 声をかけた男に耳を傾けていると、突然周囲から声が如何にも悪者そうな声が聞こえてきた。


 あたりを確認すると、無数の盗賊風の男達が現れてきてソラ達を中心に周囲を完全に包囲されていた。


「命が欲しかったら、金目の物を全て置いていきな!」

「さもねぇと!」

「どの道、全員殺すつもりなんだろ?」


 周囲から盗賊達が現れ、さらに今助けた男二人もグルであり、隠していた剣を取り出して来た為、ユゥリ達はすぐに警戒し、トム達と互いに背中合わせにどこから襲ってきても良いように、構えるが、そんな中、ソラだけはまるで動揺した様子が無く、いつもと変わらない調子で助けた二人に尋ね始めた。


「へ! そんなの当たり前じゃねえか!」

「そこの女も美人だしよう。さらにそんな見るからに高価そうな馬車だった使っているんだ! もしいるんだったら、かなりの美人なんだろうぜ」


 そう言われたソラは何故心なしか満足げであった。


「もし美人だったら、()()()()()()()()


 そう言って現れたのは盗賊達の中でもかなりのゴツゴツとした装備をしたリーダー的男だった。


 その言葉を聞いたソラは内心穏やかではなかった。


「お前達はただ、この俺様に金目の物と中にいる女を差し出せば良いんだ!」


 そう言った男は気持ち悪い笑みを浮かべていたが、ほんの一瞬。まるで一度瞬きをするようなコンマ数秒。そのコンマ数秒で視界引いたリーダー的男はユゥリ達の視界から一瞬にして居なくなった。


 しかし、いなくなったというのは少々語弊がある。いなくはなったが、消滅したは訳でない。遥か遠くの後方にリーダーの姿はあった。まるで豆粒のように小さく見えるまで遠くへと吹き飛ばされていた。


 リーダー的男を吹き飛ばしたのは目の前にいたはずのソラであった。


 それ気付いた盗賊達は持っていた剣を振り下ろされるが、ソラは振り下ろされた剣を殴り壊し、近接攻撃が効かないと判断した盗賊達は魔法をソラに向けて魔法や炎放つ。それに気付いたソラは朝からサイズの氷の球を炎にぶつけた。氷は炎の魔法をを貫通し、貫かれた魔法はその衝撃で発動している魔法が消滅し、霧のように四散した。


 ここで漸く、盗賊達は手を出したいはいない奴に手を出したことを直感し、嫌な汗が流れ始める男達。


「とりあえず、適当に潰すことにするから…()()()()()()()()()()





 一方その頃、馬車の中では眠っているユイを起こさないように三人は自己紹介を済ませ、ガールズトークが盛り上がっていた。


「え?! エリーゼ、カンナさんのところに弟子入りしたんですか?!」

「二年ほど前にね。……カンナさん。修行の間は容赦ないから、かなり大変なんだけどね」

「ああ、わかります。ソラの修行がまさにそれでしたから」


 花のないエリーゼの苦労話を聞くコレットとミン。外から悲鳴のような声が聞こえてくるが、気のせいだと思い、話を再開する。


「私も、聞きたいことがある」

「何ですか、ミンさん」

「二人の馴れ初めっていつなの?」


 ミンは変な遠回しをせず、真っ直ぐにソラ達の関係を尋ねた。尋ねられたコレットは「ふぇ?!」という声をあげながら、自身の手で真っ赤になった顔の頬を隠した。


 だが同時に慌てる者がもう一人。エリーゼである。


「み、ミン? そ、その話は今は……ね?」

「そう言いますけど、気にならないんですか?」

「か、気にはなるけど……」


 でも、聞きたくはない。とエリーゼはそう思っていた。


 ソラのコレットへの態度はあまりにも露骨だった。誰がどう見たってわかるような態度を取っている。そしてそれはコレットも同じだ。ソラに近づいている人に対して嫉妬の目を向けている。


 そんな態度を見ていればいやでもわかる。二人の関係に。でも、それを認めたく無いという思いで、エリーゼその事を尋ねる事を躊躇した。


 自然の二人の視線が自分に集まっている事に気付いたコレットは顔を赤くしたまま俯き、意を決して話そうとした。


 がその時、再び悲鳴のようなものが響き渡り、それ一や二では無く、十や二十という多くのの悲鳴が聞こえて三人は慌てて外を確認すると、そこには大勢の人達がボロボロの状態で地面に横たわり、ビクビクと痙攣を起こしながら気を失っていた。


 ボロボロの人達の中央でソラが未だ意識を失っていいない一人の男の胸ぐらを掴んであり、ソラの威圧に涙を流していた。


「これに懲りたら、もう盗賊なんてするんじゃねえぞ。さもないと、今度こそ本気で潰さないといけなくなるかな」

「ひ、ヒィ〜〜??!!」

「わかったらいけ!」


 ソラが胸ぐらを離すと、男は一目散に逃げ去り、ギリギリ意識を保っていた者達は意識を失っている仲間を連れてこの場を去って行った。


「さ。再び皇国に向かいましょう」


 その光景を見せられた三人は顔を真っ青にしていたが、いつものソラと同じ姿に余計に恐怖を覚えるのだった。


「何やってるのよ……」

「さあ……」

「アハハ……」


 何も知らないとは幸せな事で、怖がっている三人の姿にエリーゼとミンは三人の様子に疑問か思い首を傾げ、事情を察したコレットは困ったような苦笑いを浮かべるのであった。

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