土だらけの姫とラベンダー
ボロボロな女の子を発見した俺は急いで彼女に駆け寄る。
近づいてよくよく見てみると、目立った傷はなく、川に飛び込んだかのようにずぶ濡れになったお姫様なのだろうか?ドレスのような服と金色の長い髪。そしていたる所にいっぱいの土がついてあるだけだった。もしも緊急を要するのなら、急いで王都に運ぼう考えていたのでふっと安堵の息が漏れる
眠っている彼女をよくよく見てみると、よほど疲れているのかぐっすりと眠っている。
森が静かな原因はこの子?と考えてみるが、水が流れている川までそこそこ距離がある。こんなに濡れている状態で森が静かになるまで走り回っているなら、服はともかく髪は乾いていてもおかしくないだろう。
そんな考えのもと、危険な場所眠っている彼女を事情を含めて話を聞くため、起こそうと彼女に手を伸ばす。
「そこの少年。ちょっといいかしら?」
驚いて後ろの振り返る。
後ろには森があり、その森の中から1人の女性が姿を現わす。黒い大きめのローブを着り、顔が確認できない程広いつばに、山のようにとんがっり、頂上部分が後ろに倒れ、尻尾のようになっている帽子。その帽子からはみ出るラベンダー色の髪。そして手には背と同じくらいの長い杖を持っていた。
(ウィザード!?)
そしてそんな大きめのローブからでもわかる、圧倒的な膨よかな大きさの胸が視界に飛び込む。
・・・E…いや、Fか?
ふと、古代人が示したとされる言葉『バストサイズ』のことが頭をよぎり、頭を振ってその考えを外へ追いやる。
状況的に考えて、ある意味最悪だ。
人気のない森、体を隠せそうな木々たち、そして疲れ果てて、息があまり整っていない男とずぶ濡れになって気絶している姫であろう女の子。
・・・
「待ってください!!俺はここで彼女を発見しただけなんです!!」
「え?!そ、そう…わかったわ」
ある意味、言い訳を力強く叫ぶと、女性は驚きながらも、わかってもらえた。
「さてと、それじゃ本題に入るけど…その子を渡してもらえないかしら?」
ウィザードの人が言った言葉に、一瞬『ドウセイアイシャ』という言葉が頭をよぎるが、それを考えないようにして尋ねる。
「この子をどうするつもりですか?」
「何かするつもりはないわ。ただいろいろと話を聞くだけ、いろいろとね」
・・・なんだか言い回しがとてつもなく意味深に聞こるのは気のせいだろうか…。
「いろいろっていったい何を聞くつもりですか?」
「う〜ん。子供にはちょ〜っと刺激が強いから言えないかな」
「・・・」
ドウセイアイシャ説が濃厚になってきた。これは逃げる方がいいな。
「わかりました。それなら深くは問いません」
「そう。なら、」
「でも、あなたのような人にこの子を渡すつもりはありません!」
そう言って俺は、女の子を無理矢理背負いあげる。
その行動にウィザードの人は驚いて尋ねてくる。
「ど、どうして?!」
「あなたのようなドウセイアイシャにこの子を渡したらより危険な目にあうに決まっているだろうが!」
俺が後ろに下がりながらそう言うと、ウィザードの人は俺の言葉を理解し、顔を真っ赤にして顔を手で覆った。
その隙に、この森で鍛え上げた自慢の手と足で木の上に登り、猿のように木に飛び移りながらその場…というかウィザードの人から逃げていった。