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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
蛇の少女と未来街の幽霊魔導師
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子供の拒否程堪えるものは無い

 洞窟に戻ってきたソラ達は洞窟内で治療を行なっているコレット達の邪魔にならない様に洞窟の外でコレット達の治療が終わるのを待っていた。


「……僕は…コレットが好き……」


 ソラがそう呟くと、それだけで魔力が湧き上がる。しかし、何かに引っかかる感覚や、最後に放ったあの時の様な力が出てくることはなかった。


「……………〜〜〜〜っ!!!」


 しばらくして集中力が切れたのか、顔を真っ赤に染めて蹲るソラ。それを洞窟内に入ることができなかった魔物達や恐竜はもう何度目かと思いつつも、ソラを呆れるように見つめていた。


 やがて治療を終えて、コレットが洞窟の外に出てきた。


 ソラは外に出てきたコレットに駆け寄って女の子のことを聞こうとした時、


 パチンッ!


 ソラの頬を強く叩き、魔物達を震撼させる。


 ソラは叩かれた事に呆然となり、腫れ上がった頬に撫でながら叩いた張本人を見る。叩いたコレットの瞳には薄っすらと涙を浮かべていた。


「……無茶」

「え?」

「無茶しないでって……言ったのに……」


 コレットは涙ながらに、怪我をしたソラの腕に触れながら、回復魔法をかけ始める。そんなコレットの様子を見て、あの子と戦い始める前の事を思い出した。


「……ごめん」

「……グスッ……」

「ごめん……」


 ソラは涙を流すコレットを優しく抱きしめながら謝ることしかできなかった。



 *



 ソラの回復にかなりの時間をかけても未だに治る気配がなく、涙も止まりつつも、言葉を発さず黙々と治療を続けるコレット。それを見続けているソラは、無茶をして怒られていた手前、回復しない治療を止めるように言うことができなかった。


 魔物達はそんな二人を誰一人唸り声を出さず、静かに見守っていた。


 やがて沈黙に耐えられなくなったソラは意を決して口を開いた。


「……コレット」

「治療はやめないよ」

「いやまあそれもあるんだけど、そっちとは違う話」

「……違う?」

「そう。……あの子と事だよ」


 コレットはソラの言葉を聞いて、治療している腕からソラの顔を視線を移す。


「僕は…修行が終わり次第、あの子の事をどうにかしてやりたいと思ってる」

「……」

「でも、僕だとダメなんだ」

「……どうして?」

「僕のやり方だと、あの子の心を本当の意味で救った事にならないんだ。無理矢理にしか満たせない心なんて……。だから、」


 ソラが意を決してある言葉をコレットに言おうとした時、


「うわぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!」


 突然、子供が泣き出し様な大きな声がソラ達の耳に届いた。


「泣き声?!」

「もしかして、もう目を覚ましたのか?!」


 ソラ達は慌てて洞窟の方な走り出し中に入ろうとすると、コレットに何者かが思いっきりぶつかり地面に転がった。


「あうぅ……。うわぁぁぁぁぁああ!」


 地面に転がったのは先程までスヤスヤと眠っていた女の子。その女の子が体を起こしながら、再び大きな声で鳴き始めた。


「あ、ご、ごめんね。よしよし」


 コレットは泣き出した女の子を優しく抱き上げ、頭を撫でながら、あやし始める。


 その後すぐに中に居たクロエがソラ達の元へ駆け寄ってきた。


「クロエ。これって……」

「わからないけど……。私が中で休んでいる間に、その子が目を覚ましてぐずり始めたのよ。こんなに早く目を覚ますなんて思ってもみなかったから……」


 クロエは少し困った様にソラに耳打ちする。


 それを聞いたソラもソラでこの状況に困惑しており、コレットは女の子をあやしながらソラを見るが、女の子はコレットから離れまいと、ぎゅっと抱きつくのであった。



 *



 その後、コレットが女の子を泣き止むまであやし、落ち着いたのか、膝を枕にしてスヤスヤと眠ってしまった。


「先程までの戦闘とは打って変わって、普通の子供みたい」

「器が満たされているから、今のこの性格は本来のこの子の性格そのものだからね」

「へ〜。そうなんだ」


 ソラの言葉に納得したコレットは女の子の頭を撫でる。


「……さっきの話の続きだけど……その子の心。君が満たしてあげてくれないかな?」

「え?」

「僕じゃ、本当の意味で心を満たしてあげることができない。でも君なら…僕の器を満たせる君にならこの子の心を満たしてくれると思うんだ」

「でも、私は……」

「もちろん。無理にとは言わないし、ダメならダメって言ってもらって構わない。君が良いって言ってくれるなら、僕も、最良は尽くすから」

「……」


 コレットは女の子を見つめながら、撫でていた手を止める。その手を止めた事により、女の子は眠たそうに目を覚ました。


「ああごめんね。起こしちゃった?」

「うん……どうしたの?」


 女の子にそう尋ねられて、少しハニカミながら眠たそうなしている子を優しく抱きしめる。


「ん! ん!」

「私ね、これからあなたの側にずっといる事にしたの」

「……いっしょ?」

「ええ。ずっと一緒よ」


 女の子の胸に押し当てながら、ソラの頼みを聞き、一緒に居てあげる事にしたコレット。女の子はそれを聞いて、コレットの顔を覗きながら、


「……おかあさん?」


 女の子がそう言ったのはごく自然的な事だったが、その場にいる全員が目を丸くして女の子に注目していた。


「お、お母さん?!」

「うん……ダメ?」


 女の子は可愛く首輪傾げ、固まっているコレットを見つめていると、やがて涙目になって泣き出しそうになっていた。


「う、ううん! そんな事ないよ!」

「ほんと!!」


 コレットが泣き出す前に急いで頷くと、キラキラとした目で喜んだ。


「で、でも、お母さんってことは、あなたを育てるお父さんが……必要に…なるわけで……」


 コレットは遠慮しながら、近くにいるソラを見つめる。女の子もコレットの視線に気付き、視線の先のソラを見る。


 ソラは女の子の視線に固まり、様子を伺っていると、


「…………や!!!」


 ソラの姿を見て突然か険しい顔になり、強い拒否を示しながらコレットの胸に顔を埋めた。


 ソラは若干のショックを受けて、コレットは固まり、クロエは苦笑いを浮かべ、魔物達は何故か大きな笑い声を発するのであった。




 *




「居なくなったとはどういうことだ?!」

「私にも分かり兼ねます。突然いなくなったので……」


 とある研究所で一人の男が声を荒げながら、女性に向けて問い詰める。が、女性の方も、その原因がわかっておらず、それ以外の事を返すことが出来なかった。


「チッ! 急いであの()()()の娘を見つけ出せ! 大至急だ!」

「……」


 女性は言葉を発することはなかったが、小さく頷いて二人はその場から消えていった。



 *



『やはり、()()()()()()()とは明らかに変わりつつある。皇国での死亡者は一人だけ。魔装錬金の習得。予想を上回る成長速度は、僕が()()()()()()を変えてくれる事を、期待しているよ。ソラ……』



 奈落の崖の上で星空を見上げながら、不敵に笑みを浮かべ、ソラの成長を期待するアンノーンの姿があった。

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