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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
蛇の少女と未来街の幽霊魔導師
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ソラの思い

 現在大変な状況の中にあるにも関わらず、ぎゅっと抱きしめ続けている二人。


 自分自身の影に隠れ、強く抱きしめ合っている二人を見て唖然となるクロエ。


『……えっと、そろそろいいかしら?』

「??!! そ、ソラ、その、あの子が来るから…その……離して?」

「………………やだ」


 クロエの声に現実に引き戻されたコレットはソラから離れようとするが、抱きしめている力をさらに強め、離そうとしないソラ。


 コレットは顔を真っ赤にして、嬉しそうに頬を緩ませながら、ソラから顔を背け離れようとしているが、まるで力が込められていない。


「……くるしい……」


 やがて小さな息苦しさに耐えきれなくなって小さく呟いた言葉にソラはすぐに耳に届き、コレットが予想していた時より、激しく反応した。


「ご、ごめん! 大丈夫?! 苦しかった?!」

「そ、ソラ? どうしたの? 私は大丈夫だよ?」


 何か変な様子のソラに、コレットは逆に尋ね返す。質問されたの意図を理解し始め、少しずつ冷静さを取り戻していく。


 かなり頭が冷静になり、自分の行動を思い返して今度はソラの顔が真っ赤になる。そして何かを言おうと、手や口を必死に動かすが、結局何も言葉にすることが出来ず、真っ赤な顔をコレットから晒しながら口元を隠した。


 様子の違うソラの反応や行動を目の前で見ていたコレットは次第に似たようなものに心当たりがあった。しかもかなり最近に……。


 それに気付き、俯きソラの顔を見ることが出来なくなるコレット。二人の雰囲気に当てられ、ため息を漏らすクロエをよそに、魔物達の間をすり抜けた女の子は再び奇声を上げる。


 その声に現実に引き戻された二人はあたふたと動揺して女の子の方に視線を移す。二人の顔は耳まで真っ赤ままだ。


 女の子を見ると、あたりを消し飛ばし魔物を周囲に近づけない様にしていた。


「またあの奇声……」

「奇声?」

『ああやって、周囲にあるものを消滅させているの』

「へぇ……」


 奇声について尋ね、頭上から返答が返ってきた時、ソラは驚いてクロエを見て、「喋った?!」『私よ』「お前か!」なんて会話をしていた。


(魔物さん達も警戒して襲わなくなったし、女の子の方も膜を張って動かなくなっているから、安心だけど……)


 私の矢は…あの子には届かない……。


 コレットは自身が持つ弓を見ながら、落ち込んで視線を落とす。


 ソラは落ち込んでいるコレットを見ながら、ゆっくりと隣に立つ。コレットの隣に立ったもののどんな言葉を掛ければいいのかわからず、自分の頭をぐしゃぐしゃとし、結局声も掛けずにコレット頭をポンッと置いた。


「ソラ……」

「後は僕に任せて。コレットは僕を守ってくれれば、それでいいから」

「……無理だよ」

「どうして?」

「だって、あの子に私達の矢は届かないんだもの……」

「……届かないって、どういう事?」


 コレットが言った届かないという意味が分からず、その意味をクロエに尋ねる。


『コレットがあの子に向けて矢を放つと、空中で停止して私達に向けて反射してくるの』

「反射? それホントか、コレット?」

「……うん」


 クロエの話を聞き、コレットに尋ねるソラ。コレットは下に俯きながら、小さく頷く。


「そっか……」

「それにあの子、ユニの事を狙っているみたいで、私は近づく事も出来ないの……」

「……? それどういう事?」


 さらにわからないことがコレットの口から飛び出したため、ソラはさらなる説明を求め、二人の話を聞くことにした。







「……なるほどね」


 二人の説明が終わり、何か納得の表情を浮かべるソラ。


「何かわかったの?」

「なんとなくだけど……。コレットの弓が当たらないのは、きっとその魔装にあると思う」

「魔装に?」


 コレット、そしてクロエはよそうだにしていなかった視点からの指摘に驚きながら、顔を見合わせる。


「ユニの事を十二星宮の時の名前、“サジタリウス”という名前で呼んでいるなら、あの子は元々十二星宮になんらかのつながりがあるんだと思う。それで、コレットの矢が止まるのは、十二星宮の奴らの力に対して何かしら抑制がされているんだと思う。例えば、スキルとか」

『つまり、ユニの力を使い続けているコレットは……』

「いくら攻撃しても同じ結果ってことだね」

「そんな……」


 ソラが説明した内容には信憑性はないが、考えられる可能性としては最も有力なものだった。


「なら! 今度は、魔装を解いて……?!」


 コレットは自身が身に纏っていた魔装を解こうとした瞬間、それよりも早く身に纏っていた魔装が歪み、コレットの意思とは関係なく解かれ、元の服装に戻った。


「何…で……」


 魔装が解かれた瞬間、立っていられない程激しい疲労がコレットを襲う。


 意識を失いそうになり、前のめりに倒れそうになり、そっとコレットの体を包み込むようにして支える。


「……魔装のタイムリミットだな」

「たいむ…りみっと……?」

「簡単に言えば、時間切れってことだ。思い長い間身に纏っているのって、結構大変だからな。ノーリスクってわけにはいかないだろう」

(……もつって…そういう意味だったんだ……)


 意識が途切れそうなコレットはクロエが言っていた言葉を思い出す。そんな途切れそうな意識の中、自分を抱きしめているソラの姿を見上げる。そしてしばらく見上げていると、そっとコレットの唇を唇で塞がれた。


 意識が一気に覚醒し大きく目を見開いて、目の前にいる男の姿がコレットの心を覆い尽くす。


 ボン!


 キスをされたと理解し、頭から大量の湯気が噴き出し、今度はその理由で意識が途切れそうになる。


(……魔力をほんの少し注いだだけのつもりだったんだがな……)


 ソラは軽く魔力を注いだだけだったのだが、むしろ元気全開になっている為、「まあ、これで良しとするか」と意識をコレットから女の子の方に移す。


 ……もしかすると、


『それにしても、魔装のタイムリミットの事をよく知っていたわね。伝えていなかったと思ったのだけど』

「……え? ああ、えっと……()()()()()()?」

『……は?』

「まあ、それは置いといて……、僕、あの子を()()()()()()だけど、構わない?」

『「………ええぇぇえええ???!!!」』


 コレットとクロエは、突然のソラの提案に大きな声を出してしまう程突拍子の無いものだった。


「ど、どういう事なの、ソラ!?」

『そうよ! どうしてそんな事を?!』


 二人はソラを詰め寄り、問いただす。

 ソラは二人に詰め寄られながら、女の子の方を見て、ゆっくりと口を開く。


「……あんな力をもつ人間が、()()()()()()使()()()()()()()()?」

『「?!」』

「おそらく、そういう感じの施設から逃げ出して来たんだと思う。だから、助けたい。それじゃあ、ダメかな?」


 ソラの真剣な表情で二人の言葉を待つ。二人はソラのそんな表情に……。









 魔物達は、女の子の周り取り囲んでいたが、女の子がピクリと手を動かすと、一匹はそれに反応して跳び掛かる。


 しかし、女の子は魔物達を消滅させた膜が未だに張られており、膜にぶつかりそうになった時、女の子に大きな氷の腕が振り下ろされる。


 魔物はその腕に前足が触れ、一気に後方に飛び下がる。氷の腕は膜にぶつかるが、その腕が消滅する事なく膜を突き破って女の子に直撃する。


 だがすぐに腕を引き上げて、女の子から離れる。ぶつかった腕を見てみると、傷口に触れてはいなかったが、傷口を覆っていた氷の一部が消滅していた。


 女の子は無傷。


 腕を振り下ろした大きな腕の持ち主である恐竜は、女の子を睨め付けながら、間合いを測っている。


 女の子が恐竜の方に振り返ろうとした時、その恐竜より、強い力を感じ、恐竜とは反対の方を見る。


「悪いな、恐竜。その子は僕が相手をするから、()()()()()()()()?」


 最後に口に出した言葉に強い重みが魔物達に襲いかかり、恐怖で足がすくみ、後退る。


 恐竜は女の子の後ろから現れた人を見て、安心はした色を見せ、臨戦態勢を解き、少しずつ離れていった。


「サンキュー、恐竜。それじゃあ、少女。第二ラウンドといきますか」


 女の子の前に現れたソラの手には、折られた魔力を喰らう魔剣が握られていた。

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