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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
蛇の少女と未来街の幽霊魔導師
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虚無、襲来

 蛇は洞窟の入り口に居た三人に襲い掛かる。


 それを呆然と見ていたコレットとユニの体を抱き上げ、洞窟から飛び出る。


 蛇は勢いよく入り口の天井にぶつかり、その天井が消滅した。


「! 変な凹みができた! やはり、あいつが虚無の使い手だったか!」

『サジ、タリウス!!!』

「……誰かを読んでいるみたい……」

「……私の事でしょう」


 入り口から少し離れた場所に座り込み、入り口に突撃した蛇の様子を伺っていると、蛇誰かの名前を呟きながら三人を標的にしていた。


 それ声を聞いていたユニはその場に立ち上がりが早く二人の前に立つ。


「お二人は早くお逃げください。ここは()()である私が引きつけます」

「ユニ?! あなた、何を言って!」

「どのみち、誰かが囮をしなければ逃げられません。私が時間を稼ぎますので二人は早く逃げt……」

射手座の姫(サジタリアス)!」


 囮になろうとするユニの言葉を遮ってコレットは魔装を発動させる。コレットの魔力の一部となっているユニは引っ張られるように吸い込まれ、魔装のドレスを身に纏う。


『コレットちゃん! あなた!』

「あなたが残るなら、私だって残る! それに、洞窟の中にはまだソラが!」


 コレットの言葉は二人はハッとなる。ここで暴れて、もし洞窟の中にいるソラの存在に気付けば、そちらを標的にするかもしれない。


 可能性はかなり低いが、ないとは言い切れない!


 コレットは弓を引いて蛇に向けて合わせる。


(女の子がいる場所はあの蛇さんの首筋あたり。そこを狙わないように、頭や胴体を射抜く!)


 狙いを定め矢をさらに引き絞ると、矢を六つの魔法陣が現れ、そこから光輝く魔法の矢が現れる。


一角の矢(ユニコーン・アロー)・七連!」


 矢を放つと、光の矢も同じように放たれ、一角の馬の形に姿を変えて蛇に向かって空を駆ける。そして蛇の体に直撃、


『Shurarararara!!!』


 その寸前に、蛇が大きな声をあげる。するとどういうわけか、馬は影も形も無くなり、飛来している矢は空中で停止した。


 コレット達は停止した矢を見て思わず固まってしまっていた。


 そして再び蛇が産声をあげると、停止していた矢の向きが変わりコレット達の方に矢先が向けられる。矢に目が奪われていると、蛇と視線が重なり、二人も硬直状態となってしまった。


 そして停止していた矢が物凄いスピードで二人に向けて一直線に飛来した。


 反応に遅れた二人は硬直した事への負荷で未だにまともに動ける事は出来なかった。


 飛来してくるコレットの矢に身動きが取れず、なすすべもなく立ち尽くしていたが、ドパンッ!ドパンッ!っと大きな音が鳴り、全ての矢が空中で撃ち落とされた。


 矢を撃ち落とした大きな音の方に視線を向けると、片手リボルバーの引き金を引いているソラの姿があった。


「人が悪良い気分で眠っていて、やけに外が騒がしいと思えば……。()()()()()()()()()()!」


 ごく稀に発せられるいつもとは違う別のオーラがソラがから溢れ出すが、そのオーラはいつもよりドス黒く感じていた。


「ああぁぁぁあ!! クッソ!! ()も焼きが回っちまった!! よりにもよって、あいつの夢を見るなんて……」

『Shurururur』

「悪いが、八つ当たりという理由でテメェをボコらせてもらうぜ、白蛇!」


 ソラは蛇に向けて銃口を合わせドパンッ!っと一発、リボルバーの引き金を引く。高速で射出される弾丸の速度に蛇も対応できず弾丸が直撃する。


 しかし、弾丸は蛇の体をすり抜けて反対側の崖に小さなクレーターを作るだけだった。


 コレット達は目の前で起きた現象に理解が出来ず、再び硬直する。しかし、それを見たソラは少しだけ驚き、すぐに顔を険しくする。そしてもう一度引き金を引き弾丸を放つ。今度は蛇も余裕からか、そこから一切動く事なく弾丸が透過するのを待った。


 が、今度は弾は透過する事はなく蛇に体に直撃し痛そうな悲鳴の声をあげた。撃たれた所からは()()()が流れ、苦しいのか体をくねくねと動かして痛みを誤魔化しているようであった。


「接触消滅。魔法及び物質透過。そして、あいつが言う所の“思いアタック”……本当に神経を逆撫でしやがる」


 ソラは誰にも聞こえないような声で呟くながら苦しそうな蛇を見る。苦しそうなその姿を見て、左手をあげて自身の額を指で撫でる。髪を少し上げながら額に触れていると、そこにはまるで何かに()()()()()()()()()()()が残っていた。


『傷口が痛むのか?』

「?! へぇ〜…珍しい事もあるんだな。まさかお前から話しかけてくるなんて……。明日は雨だっけ?」

『は! 気まぐれだよ、気まぐれ。お前が()()()()()()()()()()()()()から、煽りに来たんだ』

「本当にいい性格していらっしゃる」

『俺の話に集中してたいのか? 来るぞ?』

「はあ? ……ちょ!」


 急にソルガが話しかけて来たことにより、蛇への意識が途切れ話に夢中になるソラ。そんなソラに頭から襲い掛かる蛇。少し反応が遅れたがギリギリで回避することが出来た。


 が、蛇もすぐにソラを追いかけ襲い続ける。ドパンッ!と蛇に弾丸を放つと、今度は蛇の方も完全に弾を避けて当たらなかった。


 蛇はさらに速度を上げてソラの体を丸呑みにしようと巨大な口を開く。ソラは防御の態勢を取りながら目を深く瞑る。しかし、すぐに目を見開く。瞳の色が黒から黄色に変化しながら。


 ソラは蛇の口に丸呑みにされる。その事にコレットはソラの名前を叫びながら悲鳴をあげるが、すぐに口の中から弾丸が放たれ、蛇の口を貫通して弾丸飛び出る。蛇は思わず口を開き、何かが零れ落ちる。それは捕食の魔装を身に纏ったソラの姿だった。


 クロエは一瞬警戒の色を見せるが、コレットの安心しているような不安なような様子からすぐに警戒を解いた。


(ソラ…大丈夫だよね……。死なないよね……)


 ソラの姿を見たコレットは安心したものの、未だに不安を拭いきれない。


(約束したよね。私が笑っていられるまで側に居てくれるって……。だから…お願い……)








「死なないで……」











 小さな声を出して願う様に、祈る様に呟き涙を流す。


「?!」


 ソラはその小さな呟きが耳に届き、コレットの方を一度だけ見る。その瞳はいつものソラの黒い瞳の色となっていた。


 蛇はコレットに視線を奪われてるソラのその一瞬に今度は丸呑みにするのではなく、頭から激突しソラを含めその周辺を消滅させた。


 瞬間、蛇が強く弾き飛ばされ頭からはゆらゆらと炎が燃え上がり、頭を()()させていた。


 蛇に押し潰され筈のソラは蛇を殴ったであろう振り上げた右拳はゆらゆらと燃えていた。


氷炎双拳(ひょうえんそうけん)!」


 今度は白い煙を放っている左拳を地面に殴りつけると勢いよく氷が発生し蛇の体を一瞬で覆い尽くす。そしてその氷が激しく燃えがある様に蛇の体をどろどろに溶かし始めた。


 ソラの様子からはかなりの疲労の色を見せ、息を切らしながら膝をつく。瞳の色が黒から時折黄色く変色しようとするが、意識を強く保ち、呑まれないようにする。


「ソラ!」


 コレットは蛇が凍りつくと同時にソラの下に走り、膝をついているソラに抱きつく。ソラも抱きついてきたコレットを慌てて抱きしめ、転ばないようにしっかりと受け止める。


「大丈夫?! 怪我とかしてない?!」

「あ、ああ。大丈夫だ……。ちょっと疲れただけだから……」


 ソラはコレットに支えられながらゆっくりと立ち上がる。


「……ところでソラ。これって一体どういうことなの? 炎なのに凍ったり、氷なのに溶かしたり……」

「ああこれか。これは氷炎双拳って言う魔導と体術を組み合わせた技だ」

「魔導と体術を?」

「体術は古代人が使っていた武道ってやつを使って、魔導は一番得意な氷に、これまでの修行で使えるようになった炎の魔導を組み込んだ合わせ技。強く激しく燃え上がるからこそ、冷静でより冷たい力となり、寒く凍りつくほど、熱く燃え上がる力となる。それが氷炎双拳の特徴だよ。よく言うアレだ。『体はホットに心はクールに』ってやつ」


 ソラは自身の技についてコレットに説明する。コレットはそれを嬉しそうに聞いている。クロエはそれを遠くからなんだから呆れながら見ていると、


 ゾクッ?!


 三人を異様な寒気が襲った。


 ピシピシと音が聞こえそちらに視線を向けると、そこには蛇を凍りつかせた大きな氷に大きな亀裂が走り、そしてパリンッ!と砕け散った。


 氷が砕け散るとそこに蛇の姿はなく、代わりにソラ達よりも圧倒的に幼い女の子が氷の中心に立っていた。


 女の子は氷が全て崩れ落ちると、ソラ達の方に振り向き二人と視線が重なる。


 女の子の目は真っ暗でまるでその目が存在しない様に真っ暗な空洞になっていた。


 嫌な予感がした。


 ソラは急いでコレットを押し飛ばし、自分から遠退ける。押し飛ばすとソラの目の前に真っ暗な球体が出現し、一気に大きくなり、ソラを呑み込んで体を包み込むと、一気に小さくなり球体は消滅した。


「?! ソラ!!!」

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