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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
始まりの魔術
10/246

俺の課題と彼女の課題

 閉店時間となり、もう間も無く帰るかとウェイトレス姿から学校の制服に着替える。


(明日は学校も休みだから、早めに来るか…)


 明日は月に4回ある王立魔法学院の休日である。

 だが、飯を食うところであるここはもちろん開く。そのため、早く帰宅し、明日に備えるためすぐに寝るつもりだ。


「それじゃあ、上がります!」

「ああ!ちょっと待てソラ!」


 帰ろうとする直前、店長であるおやっさんに呼び止められる。


「どうしました?」

「ああ。明日はいつも通りの時間に来てくれ」

「え?!」


 いつもはさっさと来い!みたいなことを言うのに…変なもんでも食ったか?


「何か言ったか?」

「な、なんでもないです……」


 何故読めたし…心でも読めるのか?


「まあいい。・・・次はないぞ……」

「わ、わかりました……」


 まじで読めてそうだ…次からは気をつけよう……。


「ところで、どうして早めに来ちゃいけないのですか?」

「お前はまだ学校の生徒だろ?やらないといけないやつ…課題とか言ったかな?それもあるだろうし、学生の本分は勉強だろ?」


 確かに……。

 まあ筋として通っているし、提出課題があるのも間違いない。こっちとしてはむしろ好都合ではあるのだが……。


「それだったら、その学校の生徒を働かせているのにも十分問題があると思うが?」

「うッ!」


 俺の言い分に思い当たる節があるのか、顔を反らしながら胸元を押さえる。


「・・・まあ、そう言うなら休まさせていただきます」

「お、おう。しっかり休めよ」


 休むと返事を返すとおやっさんは慌てて返事を返し、ソラは真っ直ぐに帰っていくのだった。












「おやっさん!俺にも休みを!」

「さっさと働け!皿割り主犯!」





 ・・・真っ直ぐに帰ったのだ。帰ったと言ったら帰ったのだ!




 *



「う〜ん」


 家に帰り着き、明日の午前中は休みになり、ならばと思い学校の課題をを終わらせようと奮起する。


 奮起するのだが……


「・・・だぁーっ!わからん!」


 全く解くことが出来なかった。




 俺がしている課題は『魔法学』。

 魔法学院に通っている人なら誰でも簡単に解くことが出来る内容だ。


 しかし、例外もあり、魔法を使うことが出来ない人にとってはかなりの難関で、その中でもソラは魔法成績は他の生徒と比べて天と地ほどの差があり、さらには授業を参加しないことも相まって、全く問題を解くことが出来ないのだ。




 問題がわからず、唸りながら頭を捻らせるがまったくわからない。


 どうしたものかと悩んでいると部屋の扉が勢いよく開いた。


「うるさいわよ!いったい何やってるの!」


 扉を開けて入って来たのは、居候させてもらっている理事長の娘のエリーゼさんだ。


 彼女また勉強していたのか、手には教科書であろう本を手に持っていた。


「何?あんたも勉強してたの?・・・魔法学の課題?簡単じゃないこんな問題」


 そう言って俺が持っていたペンを奪い取り、すらすらと問題を解いていった。


「はい。これが回答よ」

「す、すげぇ……。俺はまったく問題がわからなかったのに……」

「こんな問題。まじめに授業を受けていたら簡単…は!」


 エリーゼは簡単と言ったところであることに気づき、同情視線を送ってくる。


「そんな同情の視線を送ってくるな!わかってるよ!魔法の授業なんて、まともに受けていませんよ〜だ!」

「まあまあ、落ち着きなさいよ。そうだ!私が問題の解き方を教えてあげる!」

「え?い、いや、悪いよ。そっちだって忙しいだろ?」


 ソラは遠慮しながら断るが、エリーゼはいいから!と言ってた俺の課題を奪い取り、問題を解いていくのだった。



 *



「・・・あんたねぇ……」

「す、すみません……」


 あれから数十分経過した。教えられた通りに問題を解いていった。そして全て回答し、エリーゼが答え合わせをする。

 結果は……







 ソラ 0/10点








「どうして、ちゃんと教えたの0点なのよ!」

「ほんっと、すみません!」


 まったく問題を解くことが出来なかった。


「どうして?私なりにわかりやすく教えたつもりだったのに……」

「・・・どうしてでしょう?」

「私がわかるわけないでしょ」


 エリーゼは机の上でぐて〜っとなり、頭を悩ませる。


 エリーゼはどちらかといえば、教え方は上手い方だ。以前、点数の低い同学年の生徒の点数を7割まで引き上げた。

 故に、いくら悪かろうと少しは問題を解くことができるだろうと思っていたのだが、結果はご覧の通りである。


 どう教えたものかと頭を捻らせている中、ソラはエリーゼが勉強してたであろう教科書手に取り、ペラペラとページをめくっていく。


「これ……」

「ああ、それ?私がやってた予習。私はあんまり古代語は得意じゃないから、そうやっていつも予習してるの」

「へぇ……」

「あまりにもわからないところとかは流石に先生に聞いてるけどね。ほらこことか」


 ペラペラとめくっていると先程から悩んでところがたまたま開かれ、次の学校の時に聞く予定だった場所を指差す。


 ソラはそれをしばらく見つめていると


「えっと…『好きな人に、伝えたいことも伝えられない こんな世の中じゃ』……ああ!『()()()()』ね!書かれてる文が途中からなかったから、びっくりしたよ〜」


 なんだか納得したソラをエリーゼは目を丸くしてソラを見る。


 ソラが見ているページは、現時点では、やっと()()()()()()()()()()()()()()と1年前にわかったとされているページであった。


 多くの古代学者が必死解読するため、研究し、解読魔法と呼ばれる高等魔法までも開発され、やっと解読された文を、()()()()()()()()()


 予想外の出来事にじっとソラを見つめる。その視線に気づいたソラは、エリーゼの方を見つめ、どうした?と尋ねる。


「・・・あなた、どうやってそれを解読したの?」

「へ?解読ってというか、見たらわかるだろ?」


 『見たらわかる』

 そう言ったソラは、きっと古代語ついての知識と、すごい才能があるのだろう。それを素直にすごいと感動する気待ちと、同時に悔しいと感じる自分がいることを理解する。


「こ、これで勝ったと思わないことね!私だってもっと勉強してあなたよりもっと瞬時に解読して見せるから!」

「え?!は、はい!えっと…頑張ってください」


 頑張ってと応援されたエリーゼは恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にしてソラが持っていた教科書を奪い取って逃げるようにして部屋から出て行った。


 それをソラは驚き、その後ゆっくりと思考が追いついていき、どうしたんだ?とエリーゼの行動を疑問に思いながらも、襲いかかってくる睡魔に抗うことが出来ず、明かりを消し、ベットに横たわる。


「・・・おやすみ。カメ助」


 そしてペットであるカメのカメ助におやすみと言って、スヤスヤと深い眠りに落ちるのだった

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