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花梨の介添えの元、俺達は帰宅の途についていた。
辺りはすっかりと暗くなり、間隔の広く取られた街灯が、その足元を頼りない光で照らしていた。
「今日は助けてくれてありがとうな」
伝えていなかった礼を花梨に伝えた所、彼女は普段見せる澄ました表情で答える。
「何言っているの。あたしは何もしてあげられなかったわよ」
口調は平坦だが、言葉尻がすぼんでいく。
「あたしのせいで、ごめんなさいね」
「誰のせいでもない。それに、お前は俺を助けようと動いてくれたじゃないか」
「でも、何も出来なかったことは事実よ。不甲斐ない自分が腹立たしいわ……」
言った花梨は、溜息をつくように大きく息を吐きだした。
なんだろな……。
どうしてここまで責任を感じるのか分からない。
だが放っておくことも出来ないので、
「俺はお前の獲物なんだろ?」
「え、えぇ……」
「なら謝る必要は無いだろ。むしろ獲物を取られなくて良かった、って思うべきじゃないか?」
花梨は沈黙した。
彼女の横顔は相変わらずだから、何を考えているのか分からない。
「対策が必要ね」
黙っていた花梨が口を開いたかと思えば、何やらオカしな事を言い出した。
そして、自身の鞄をまさぐると、中から一枚のお面を抜き出す。それは先日、花梨が獲得したカグツチと呼んでいた赤いお面であった。
「これを持っていなさい」
差し出されたお面を、俺は反射的に受け取った。
「これは?」
「いざという時のお守りよ。何も聞かずに受け取りなさい」
「くれるって事か?」
「何度も言わせないで。何も聞かずに受け取りなさい。いいわね」
花梨は深くは語らないが、よほど自分の手で俺を降参させたいらしい。
理由は何だ?
「……ありがたく頂くよ」
「あ、そうだわ。明日は朝の八時に迎えに行くから、しっかりと起きていなさいよ」
一瞬、何の話をしているのか理解できなかった。
「そういえば図書館に行くんだったな。迎えに来てくれるのか?」
「えぇ。図書館がどこにあるか分からないでしょうから、案内してあげるわ」
「そっか、助かるよ」
「いいのよ。どうせ暇だから」
花梨は俺から顔を反らしながら続けた。
「忘れないうちに言っておくけど、制服を着て待っていなさいよ」
「え? どうして?」
「祭り人同士を認識しあうために作られた鬼神祭のルールの一つだからよ」
俺の知らないルールがまだまだありそうだ。
全くもって、とんでもないお祭りだな。
鬼神祭ってやつは……。
第二章おわり




