仕返し
可哀想に。
酷なことだ。
あの子はこの『運命』を受け入れることができるかねぇ。
羽ばたいた木彫りの小鳥は、空へと
「ありゃ」
行かなかった。急に失速したかと思うと、羽ばたいた形そのままに、ポテリと地に落ちた。
「先生〜?さすがに今のは無いと思うよ〜?」
「仕方無ぇだろ。こういうのは苦手なんだ」
決まりが悪そうに頭を掻く。あまり弱味の無い藤木には珍しい表情であるとは言える。俊之は早速、頭のメモ帳にこの事を叩きこむ。
(やっぱり仕返しはしたいもんなぁ)
いじるネタを手に入れた俊之はホクホク顔である。対照的に、その思惑を察した藤木は苦い顔をしている。この程度の弱味など、本来藤木にはたいして痛くも痒くもない。こんな弱味は藤木以外の『使い手』でも大抵は抱えている。藤木の表情が苦いのは、この子どもがしつこくしつこくこのネタを使い続けるだろうと予想したからだ。相手が大人ならば、大人の対応がある。しかし相手は子どもだ。子どもにあまり接することのなかった藤木には少々重荷に感じられた。
「人にはな、得手不得手があるんだ。おまえもそうだろう」
「先生、知らないの?格上相手に渡り合うには自分のペースに持っていくのがいいんだよ」
やはり俊之は引かない。藤木ももう、半ば諦め気味だった。ちなみに、俊之のこの言葉は最近漫画で読んだものだ。
「まったく……年上は敬うもんだぜ、トシ」
「子どもにからかわれるような大人が悪いです〜」
「ぐっ」
やはり面倒臭い。藤木はもう完全に諦めることにした。こんなことならあんな術を使わなければ、と後悔しながら。
結局、その日は終始俊之が藤木をからかい続けることになった。