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不思議先生  作者: 山鷺 青
1/3

『少年』と『先生』

誤字・脱字等ありましたらご指摘お願いします。

「なー、先生。それ、何してんの?」

和を感じさせる家の縁側、座って煎餅をバリバリと頬張る少年は、隣の男の手元をじっと見る。

「んー?彫刻だよ、彫刻。鳥を彫ってんだ」

白い雲が彩る、紺の着流しを着た男は少年の問いに応じる。年の頃は三十から四十に見える。しかし、そんな見た目に意味の無いことを、少年は知っている。

「ははは、ヘタクソだぁ」

「なんだとォ、じゃあお前ぇは出来るのかよ。出来ねぇだろ」

まるで子どものような言い合いを交わす少年と男。雑草の綺麗に刈られた庭に、笑い声が響く。少年の好きな時間だ。

「でもさー、ソレって先生の仕事に関係あるの?」

「いや、無ぇけど……」

しばしの沈黙。

「はははははは!」

「ぶははははは!」

途端に、二人の笑い声があたりにこだまするかと思えるほどに鳴り響く。

「なんだよぅ、先生がマジメに彫ってるから何かあるなーって思ったのに!」

「そいつァ、俺はいつもマジメじゃあ無ぇってか⁉︎おいコラ!」

「だって俺が来た時は大体寝てるか食ってるかじゃん!仕事もいつしてるかわからないしさぁ!『もしかしたら先生って無職⁉︎』とか思っちゃうって!」

「俺だって仕事もしてるわーッ!ああもう面倒臭ェ!やめだ!やめ!」

男はそう言って、彫りかけの鳥とノミを庭に投げ出す。

「あーもう。お前ぇが言うから意欲が削がれたじゃねぇか」

「ていうか先生っていつ仕事してんの?」

これは少年の中では未だに謎である。仕事の内容を聞こうとしても、男は「まだ時期じゃねぇ」と言って教えてくれようとはしない。

「さあねぇ」

また、はぐらかされる。少年も、これ以上の詮索は無駄だと知っている。

無言で、二人は庭を眺める。雑草が刈られ、小さな池がある庭。一本だけ植わっている木は梅の木だ。周囲は住宅で囲まれている。

「さ、そろそろ帰んな」

男は少年の背中を軽く叩き、帰りを促す。空には橙色の雲が流れている。

「うん、明日も来ていいか?」

そう聞く少年の顔は、大人を慕う子どもの顔だった。

「ああ、また来な」

男は木の鳥を拾いながら、少年の目を見据える。

「明日までに仕上げるからよ」

少年はニッコリ笑って、「うん」と小さく答えると、門の先に見える路地へと踏み出す。

再び門の方を振り返ると、そこにはブロックの壁が立っているだけだった。

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