1-8
義隆がしゃべった。
「ひろくんうしろに乗れ!」
でおれが乗る。
あのちっこいモンキーにタンデムで
細い山道くだっていくと
50メートルぐらい行ったとこに進行方向むかって左側に豚小屋があった。
豚は3匹ほど。
ピンクい色の大人の豚。
寝てた。
囲いらしきもおそまつで
豚小屋なんだろうけど
小屋じゃなく
板木でかこっただけの
いまにもこわれそうなオンボロで
手前の仕切り板なんておれたちのひざの高さぐらいだったからあの豚も逃げようと思えば逃げれるはずなのに
寝てた。
三匹だ。
モンキーその豚小屋のまん前に止めてエンジンまで切った。
あいつ
どっからそんなもん?
と思ったが
重さ約5~6キロはあろうかと思われるでっかい石というよりもうあれは岩だ。
そいつを持ってきておれのほう見てニヤっと笑ったその直後豚めがけてそのでっかい岩を叩き付けたのだ。
寝ていた豚どもはびっくりなんてもんじゃなく
「ブヒィ~~!!!!」つってその低い囲いを越えて向かってくる体制になったそのとき
あいつがモンキーのエンジンかけて「ひろくん!乗れ!」
つっておれをけつにのっけてブゥ~~~ンって坂上ってずらかる。
その5分後またあいつが俺の目をみて言う。
「ひろくん。行こ♪」
て
また豚小屋に戻る。
そいうするとさっきのことまるで忘れたかのように寝てやがる。
でまたあいつがさっきよりもっとでかい玉石さがしてきてその豚めがけて背骨がへし折れるんじゃねぇのか?
つうぐらい叩きつけるわけだ。
また豚が怒り飛び出そうとする
そしておれたちまた逃げる。
そんなことを何度も何度もくりかえすあのアホにおれはあの17歳のときつきあってやったのだが
ただおれは何も言わなかった。
あいつの豚小屋襲撃ゲームを見ていながら
ただだまって見ていた。
おかあちゃんが死んだあの29歳のとき
義隆のとなりにすんでいたのがいとこのおれのおふくろのねえさん夫婦だった。
そのときおれがさりげなく義隆のこと聞いたら
そのおれのおふくろのねえさんのだんなが
「あぁ?義隆?あいつシャブ中」
そう言った。
その半年後
竹内に会った。
29歳の夏のこと
「なんかさいきんなつかしいやつに会うよな。オマエといい岩山といい」
と竹内が言うものだから
「あいつシャブ中になったってほんとうか?」
そう聞いたら
竹内はおれの目をみたあと「うん」とだまってうなずいたのだった。