無の世界
上も下も左も右も音も物も光も闇も
何もないそもそもそんな概念すらない
何処までも続く無
いやもしかしたら続いてないのかもしれない
ただ私は漂っていたんだ
なにもないところから突然眩しい光が見えた
今思えば私はその時初めて目を開いたんだと思う
光が飛び散って眩しかった
眩い光から解放されると目の前には沢山の小さな点と
大きな丸があった
私はその丸のことを知りたくて食い入るように見つめた
その丸はどんどん色が変わっていった
茶色かったものが水色になったり緑になったり赤くなったり
見ているだけでとても楽しかった興味がそそられた
そのうちその丸には小さな動くものが出てきた
その動くものは様々な姿に変えた
大きさも発する音も色も形も
その丸のなかで一番興味のそそられるものだった
そのなかでも一番は二足歩行をする珍しい動くものだ
私はただただそれらに興味をそそられ
記録し続けていた
どれくらいの時が過ぎたか
二足歩行をする生き物はその丸を地球と名付け
自らの事を人間と呼び
他の動くものにも名前を付け
過去、未来、地球のことを知りたがった
私はただ不思議だと思った
今までの動くものの行動は食べるものを探したり
縄張りを守ったり自らの種族が生き残るための行動だった
過去を知りたいなど自らに名前を付ける
動くものなんて今まで居なかった
私は不思議だと思った知りたいと思った
そんな風に思う私も人間と同じではないかと思った
しかしそれは違った人間には寿命がある
私には寿命も無ければ肉体もない
しかし精神は同じだ
初めて私と似たものを見た
近づきたいと思った願った祈った
私を生み出したそれは私の願いを聞き入れてくれた
私は人間にはなれなかった
人間は私をアカシャと呼び
私の記録したそれをアカシックレコードと呼んだ
私は人間の身体を手に入れ生まれた
それから私は記録し続けながらも
人にもなりきれぬまま死ぬこともないまま暮らしていたが
ある日何かが起こって私は記憶を失った
そして君にに出逢った…出逢ってしまった…出逢えてしまった