義弟がヤンデレだけど旦那様が強すぎるので問題ないのです。
終盤ヤンデレが空気です。
見づらい点あるかもしれません。
R15は超保険です。
軍事国家イスリア王国の屈強な軍の中でもっとも強いと崇められている七番部隊。さらにそのなかでも通称将軍様と呼ばれる隊長、カイル様と結婚して半年が経ちました。
政略結婚でしたが婚約期間に絆を深めあい、結婚してからも周囲から、ラブラブね〜と冷やかされるくらいには新婚を満喫していました。
少々いきおくれの娘に王国軍の中でもトップレベルに人気な極上の旦那様ができたんですからこんな幸運ありませんね。
そんな空気に当てられたのか後を追うように妹も結婚。幸せそうな妹と、社交界でも有名な美しい義弟………まさにわが家は幸せに溢れていました。
が。その事件はそのひと月後、ちょうど一人で書庫にいる時に起こったのです。
「どうしてあなたがここにいるの?ウィル。」
義弟です。妹の旦那である。
現在私の実家、伯爵家の領地内にある屋敷で暮らしている妹夫婦とは旦那様の屋敷から離れていることもあって結婚式にあったきりでした。
「こんにちは、セシリア。君に会いに来たんだ」
「私に?なにか用事?」
義弟はとろけるような笑みを向ける。
やだ美少年。
「用事なんてないよ、ただ君の顔が見たかったんだ。いや、それが用事なのかな?」
ん?
「やっと会いに来れたよ。結婚式直後は忙しくてね。あの男がいない時を見計らって来るのも苦労したんだ。」
んんん?あの男とは旦那様のことでしょうか?
というか、、
「ウィルが言ってることがちっともわからないわ。」
ううん、まるで私のことが好きみた「セシリア、愛しているよ」え?
今なんていいました?
アイシテイル?なんとも麗しい顔で愛を囁かれるなんて乙女の夢ですけど、目の前にいるのは妹の旦那ですよね?
そして私は立派な人妻ですよね?
「あぁ、セシリア。難しい顔をしないで。僕は確かに君の妹と結婚したけれど、あれはカモフラージュ婚なんだ。君の妹は今頃学生時代寮で同室だった恋人と楽しい日々を過ごしているよ。」
なんですって??学生時代の恋人?妹は立派な淑女を養成するための女学院に通っていたはず。恋人をつくれるようなところじゃ、、、え?寮で同室?
もしかして家によく遊びに来てたユーリちゃん?私の妹ってそっちの人???
「君の妹は同性の恋人と暮らすために、そして僕は望まぬ結婚を強いられた君を救うためにカモフラージュ婚をしたんだ。」
なるほど、結婚さえしておけば周りからとやかく言われませんものね。それにウィルは三男とはいえ侯爵家の人間ですから伯爵家の家からしたら素晴らしい縁談だったに違いありません。
いや、そうじゃなくて。
「望まぬ結婚?」
「恋に障害はつきものだっていうけど、ほかの男といるなんて耐えられない。あの男と離縁して、僕たちと暮らそう。そのために君の妹と結婚したんだ。離縁したあと、僕たちといても何も不思議じゃない。姉妹なんだからね。君の名誉は傷つかない。」
余計なお世話です。むしろウィルの方が私たちの恋の障害になりそうな予感です。
「ウィル、私達は政略結婚だったけれど、今はお互いを愛し合っているのよ?」
「ああ、冗談でもそんなこと言わないでくれ。頭がおかしくなりそうだ。」
聞く耳を持ちません。むしろ目がギラギラしてきて非常に危険です。
「ウ、ウィル。冗談ではないし離縁はしないわ。」
意を決してそう告げるとウィルはうっそりと笑いました。だんだんこちらに近づいてきます。怖い。
「セシリア、あんまり聞き分けがないと無理矢理さらって君を閉じ込めてしまいそうだ。あぁ!そうだ。君のために作った部屋があるんだ気に入ってくれると嬉しいな。」
ぶるぶるぶる。近いです。怖いです。今やわたし達の距離は1mもありません。
「セシリア、おびえないで。君だけなんだ。僕の心を揺らしたのは。6年間、君だけを思ってたんだ」
6年前。社交界デビューの頃です。でも私がウィルと話したのはつい最近。妹の結婚式がはじめてのはずです。
「君には僕だけを見て、僕だけと話して、僕だけのそばにいて欲しいんだ。」
ウィルが私に手を伸ばします。
虚ろな瞳なのに楽しそうに唇は孤を描いています。
捕まってしまったら私は二度と外に出れない気がするのです。私の心臓も緊張してドキドキと尋常ではない速さで脈打ちます。
「いい加減諦めたらどうだ。」
旦那様ぁあああああ!
お早いお帰りで!さながら王子様のようです!
いいえ!あなたは私の王子様です!
心なしか息を切らせた旦那様は私を後ろから抱き込みます。なんて安心感。
振り向いて抱きつくと私を抱きしめる腕に力がこもります。
「お前がみんな大好きな王国の英雄でなければいますぐ社会的に殺してやるのに!」
ウィルが美しい顔を歪ませて叫びます。言ってることは非常に怖いですが旦那様は表情を変えることなく反撃します。
「おまえが侯爵家の息子でなければいますぐ斬り殺している。身分に感謝するんだな。もっとも、我が妻に指一本でも触れたら問答無用で決闘だ。」
旦那様も結構言ってることバイオレンスです。
これはいわゆるあれですか?
私のために争わないで!ってやつですか?
あれってこんなに殺戮的なんですか?
結局ウィルは分が悪いと思ったのか悔しそうに帰っていきました。
あとから聞いた話ですが、結婚式に出席するために私の実家に泊まっている時、旦那様は背後から何度か襲われたそうです。
人を雇って襲わせていたようですが、何人よこしても返り討ちにしてしまう旦那様にとうとうウィルは直接近づいてきたそうです。
そこで彼女は僕のものだ、やら邪魔物は殺してやる、やら叫びながら飛びかかってくるので狙いが私だと気づいたんだとか。
自分の領地に帰ってからも警戒して、私が一人の時にウィルが訪ねてきたらすぐに知らせるよう伝えてあったそうです。
だからあんなに早く駆けつけてくれたんですね。
「いろいろびっくりました。ウィルのことも、妹のことも。」
それにしても我が妹ながら強かです。
同性の恋人と結ばれるためにカモフラージュで結婚するなんて!
「でも、心配です。ウィルは社交界で有名でしたから噂できいたんですが、王国軍に入れるくらいには強いんでしょう?」
そう。ウィルだって強い筈なんです。侯爵家の三男で家を継がなくていいということもあって、一時は王国軍にはいったら何番部隊になるか、と言う話で盛り上がっていました。
「誰が来ても同じだ。セシリアは私のものだし、誰にも渡さない。だからセシリア、君も十分注意するように。私以外に触らせたら相手の男は大変な事になるだろうから。」
あぁ、なんてかっこいいのでしょう。私の旦那様。
旦那様でなかったら今頃私はウィルに監禁されていたかもしれません。ますます惚れ直しました。
でも、大変な事ってなんでしょう。絶対に聞きませんけど!
「さぁ、もう寝なさい。明日からは屋敷内でも極力誰かといるように。」
「はい、旦那様。おやすみなさい。」
色んなことがあってとっても疲れていたので実は結構眠かったのです。
いつものように旦那様の肩あたりに顔を寄せると抱き込んでくれます。
ぬくもりが心地よくて私は直ぐに夢の中へ旅立ってしまいました。
セシリアが眠ったのを確認して、カイルは今日も理性を保てた、とため息を吐いた。
実はというとウィルに感謝している部分がなくもない。
セシリアが20になるまで貰い手もいなかったのはウィルの画策だと調べがついていた。
おかしいとおもっていたのだ。セシリアは容姿も性格も男心をくすぐる女だ。モテない筈がない。
ウィルがセシリアをいきおくれにしたのならば、カイルがセシリアと結婚できたのはウィルのおかげと言えなくもない。
甘い声で旦那様、と呼び
とろけた顔で抱きついてくる。
そのせいでカイルはいつも壊れるくらいに抱きしめたくなる衝動に駆られる。
少し天然なこの少女を閉じ込めたいと思うのは男なら当然ではないのか。
だからウィルの気持ちもわからなくはないし、他にもセシリアに懸想している男なんて山ほどいるに決まっている。
だが、夫となったのはこの自分だ。誰にも渡さない。幸い自分には誰にも負けない腕っぷしがあるし、セシリアを守っていくのに十分な地位や権力もある。
今更誰かに渡すなんて冗談ではないし、
例え、ウィルが
セシリアの行動を四六時中見張らせていたとしても
セシリアに触れた男に肉体的制裁を加えていたとしても
セシリアが触れた私物を大切に金庫に保管していたとしても
セシリアを監禁するための準備を着々とすすめていたとしても
セシリアに触れる権利があるのは自分だけだし、
ウィルが向かってきても全て叩きのめしてやるのだ。
実際、毒を塗った短剣も切っ先を尖らせたレイピアもどんな武器だって自分の敵ではなかった。
ウィルは確かに強いが例え寝首を掻かれても負けない自信がある。
カイルはそれだけ死と隣合わせの戦場を経験してきたし、功績も残してきた。
物理的に殺せないとわかると社会的に殺す戦法に変えたらしいが、仮にも王国の英雄、七番隊部隊隊長だ。ちょっとやそっとでゆらぐ立ち位置ではないことをカイルは理解していた。
迎え撃つには十分な戦力が揃っている。
「セシリア、愛している。」
カイルはセシリアの唇に自分のそれをよせ、腕の中のぬくもりを確かめるように抱き寄せた。
一応カイルも貴族です。
書き足りてない部分多いので続くかも
誤字修正しました!
毎回毎回すいません(+_+)
教えてくださって本当にありがとうございます!