ぷちゅんって潰れました
ある日の出来事。太陽系の惑星である地球の日本という国を着弾地点として、それなりの大きさの隕石が高速で飛行していた。隕石は着弾地点に人間がいれば、ぷちゅんって肉片が周囲に飛散すること間違いなしの運動エネルギー及び熱エネルギーを帯びていた。
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同日の日本における、とある県での話。
県内で田舎とされる人口5000人くらいの長閑な村にご近所でも評判の仲のいい姉弟が住んでいた。名字は御使で姉は恭、弟は優姫と言い、田舎の中学生にしては学業や部活動の成績で随分と優秀な記録を残し、中学校卒業後は県内でも屈指の進学校に入学が教師陣に勝手に決定されていた。
というのも、姉弟の両親は数年前に飛行機の墜落事故に巻き込まれ他界していた。今は母方の祖父母の家で生活しているが、姉弟と保護者である祖父母は高校なんて適当に選んで、とりあえず入学できればいい。そういう思考の持ち主達だ。しかし、中学校側としては進学校への入学者がいるという箔がほしいのだ。
近年、少子化と共に田舎では過疎化が問題になっていた。学校側は少しでも新入生を多く獲得したい。そこから県内有数の進学校に合格者が出れば、勉強熱心な保護者は必ず食いついてくる。生徒を利用しようと画策する教師陣の大人としての汚さが露呈した形になるが、あくまで決定権は生徒側に有り、教師はあくまで奨める程度しか出来ない。
「最近、本当に鬱陶しいな。弟よ」
「そうだね、姉さん」
田畑が延々と続く農業に適した平野に位置する村の風景を眺めながら、姉弟は畦道を歩く。バランスを崩せば水田にぼちゃん、だが田舎暮らしの長い二人はそんな初歩的なドジを踏みはしないし、畦道はそこまで狭くない。8月中旬の頃に相応しく、まだ若い稲がそよ風に揺れる。時折吹き付ける強風に稲が順に上体をそらす様は田舎独特の風情があった。畦道を歩ききり、姉弟はアスファルトで舗装されていない自然の道に出る。先人が踏み固めた道に転がる石ころは大昔から変わらずに在ったのだ、そう思うと、どことなく歴史を感じる。二人は間近に迫ってきた祭りの準備に駆り出され、村役場に行く途中だ。
「ところで、姉さん」
「ん?なんだ、弟よ」
「家出た時から気になってたんだけどさ。あれ、なんだろうね」
「なんだろうな」
姉弟は真夏の太陽の照り付ける輝きに負けない真っ赤な光源が急接近する様を仰いでいた。
「そういえば、ニュースで隕石が地球に急接近中だって放送してたな」
「多分それだね。回避不可能かな、姉さん」
「不可能だ。諦めろ、弟よ」
ぷちゅん。何とも気の抜けた擬音の後、大音量の衝突音が村中に響き渡った。以後、姉弟の姿を目視した者はいない。