最終章〜白い花〜
最終章です。どうぞお付き合いください。
爾の計算でいけば僕たちが消えるのは 今日 だ。
最期ぐらいこんな廃墟から抜け出して。どうせなら綺麗なところで。
2人向かった所は白い花畑。
「渚」
爾がつぶやいた。
「爾」
僕がつぶやいた。
「・・・ぶふっ」
爾が吹き出す。
「・・・っぷ」
僕が吹き出す。
それから2人一緒に大笑いした。
「ぶはははっ暗いっつーの。キャラじゃねぇよなー」
「あはははは。本当だよねー。爾があんな顔でしゃべると怪しい宗教勧誘の兄さんみたいだよ」
「それどーゆー意味だコラ」
花畑に倒れこんで空を仰いだ。灰色の町とちがって、空が青い。花だって綺麗に色づいている。
そうだ。ここに初めてきたときもこの眺めだった。横に手を伸ばせばたくさんの白い花。天を見れば高く、青く澄んだ果てしなく続く空。
あの時と全く同じ服。あの時と全く同じ風。
違うのは隣に爾がいること。それから・・・今僕が笑っていること。
「最期ぐらい綺麗なとこいきてぇって思ってよかったー。俺この花のにおい大好きだ」
爾が大の字になって寝転びながら風の音にかき消されないように大きな声で言った。
におい・・・か。
僕は胸いっぱいに花の香りを吸い込んだ。
爾の髪の香りに似ていた・・・・・・・・。
「爾・・・僕ね、爾に会えてよかったと思ってるんだ。爾がいなかったら僕、今どうなってるかわからない。もしかしたら・・・ううん。絶対まだ町の人に声かけてる。パニック状態で、混乱してて・・・絶対今みたいに笑ってない。だから・・・その・・・何て言うのかわかんないけど・・・僕・・・・・・・・・・・・・・・爾?」
隣に爾はいなかった。
僕は起き上がって辺りを見回した。
「み・・・爾・・・?爾・・・爾っ!」
どんだけ名前を呼んでも、どんだけ辺りを見回しても、爾はいなかった。
消えたのか。消えてしまったのか。
時間がきたのか。時間がきてしまったのか。
「なん・・・・なんで爾だけ?僕は?僕は!?何で僕は消えてないの!!?」
僕の問いに、誰も答えてくれなかった。どんなに叫んでも、風の音にかきけされるだけだった。
「・・・・ったえてよ・・・答えてよっ!!いつも爾答えてくれたじゃんかっ!」
さっきまで笑っていたはずの僕の顔は
今はもうその面影すら残さずに
「みつる――――っ」
白い花びらが舞いました。1人の人間の叫びとともに舞いました。
風と共に踊る花びら。いつまでも変わらない風景。
白い花はすべてを知っています。すべてを記憶しています。
1人の人間がきたことも、花の上で涙を流したことも、灰色の町に入っていったことも、別の人間と出会ったことも、花の上で笑ったことも、叫びも。消えていったことも。
そしてその記憶はやがて白い花びらとなって宙を舞いました。
今まで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
まだまだ未熟ゆえ、思い通りにいかなくてイライラすることもありましたがなんとか最終章を迎えることができました。
これからもこのサイトにはお世話になろうと思っています。感想、評価いただけると嬉しいです。喜びます。栄養にもなります。
縁があったらまた。三沢でした。