第5章〜あと少しだけ〜
灰色の光。灰色の窓から淡く差し込む。
いつの間に眠りについたのだろうか。
隣を見れば爾はまだ目を瞑っていた。灰色の日光が彼を優しく包む。
「爾、みつるー」
爾の肩を揺さぶって声をかける。しばらくそうしていると、彼は眠たげにゆっくりと目をあけた。
「な・・・ぎさ?」
自然と僕は笑っていた。
「俺の推測と計算でいけば、自殺した人間。または何らかの理由で死んだ人間は皆1回ここにくるんだ。俺たちが死んだ日と秦が死んだ日。照らし合わせてみれば俺たちが秦みたいになるのは・・・・・・明日だ」
明日。明日には僕たちは・・・・・・・どうなる?
「約1週間ってとこだね。1週間で色が消える。灰色になる。ここにいる灰色の人たちも最初の1週間は色がついていたはずだ」
あぁ、なるほど。これで灰色の人の意味はわかった。僕たちがどうなっちゃうのかもわかった。
「要するに、感情のない生物。いや、物体になるってことでしょ」
「いや、それは違うと思う。あの時秦の体から出ていた光り。あれ、何だと思う?」
何だと思う?って・・・そんなのわかったら苦労しないよ。秦の中から出てきたってのはわかったけど。・・・でてきた?あれがでていったら感情も何もない灰色の人になるってことだよ・・・ね?ってことはもしかして・・・・・
「魂・・・・とか?」
「ビンゴ」
爾がにやっと笑った。その笑みの意味がわからない。
「渚は死んだらどうなると思ってた?」
死んだら?ってことは生前に抱いていた死の世界のイメージ?
「えぇっと・・・消えちゃうとおもってた・・・と思う。昔読んだ本では自殺したら死神になるって書いてあったから僕も死神になったりするのかなーって・・・」
魂を狩る。楽しそうだと思った。
「まー俺も似たようなもんだったな。じゃあ実際死んでみてどうだ?少なくとも消えるってことではない。だって俺も渚も現世ではないにしろここに存在している。じゃあ2つ目、死神説。これも違う。俺らは鎌もってないし魂狩んないし何より現世に行ってない」
そう。僕が生きているころに考えていた説はすべて嘘、だということだ。まぁたしかに死んで証明した人なんているわけないけどさ。
「僕たちは・・・どうなるの?」
魂が肉体(というか今のこの体)と離れるのなら。今度はどうなるんだろう。
「・・・それはわからない。それを推測するのは生前に死んだらどーなるのかを考えるのと同じことだ。なってみないとわからない」
そうか。推測はあくまで推測で、究明しないとわからないことなんだ。どんだけ想像を膨らましたって、現実はどうなるかわからない。 神のみぞ知る ってことか。
「でもこれだけはいえるよ」
「・・・?」
「灰色の人間になっても渚と一緒にいられる可能性があるってこと」
それから爾は照れくさそうに笑った。
あと24時間。
あと24時間で僕たちは消える。
でもかすかな希望がある。消えても一緒にいれるかもしれない。そんな希望。
もしかしたら24時間もないかもしれない。少しだけ、消えるのが伸びるかもしれない。
だから少しでもたくさん
爾の声をきいていたい。
爾のことを見ていたい。
だってはじめて僕を認めてくれた人だから。
ここまでお付き合いくださってありがとうございます。次章で終わりです。
最後までお付き合いください。よろしくお願いします。三沢でした。