2話
レオナルドはアルバードと共に、国王陛下の元へと訪れた。
「国王陛下、レオナルド殿下をお連れいたしました。」
「ご苦労、下がって良い。」
背が高く、筋肉質で日に焼けて浅黒い肌と、初老故の白髪混じりの髪の毛を後ろへと流している。
見た目だけでも随分と厳ついこの男は、ルミナリア王国を束ねる国王エドガーである。
元々の謁見予定から三〇分の遅刻である。
レオナルドはさもありなん、といった様子でいつも通りの口上を述べてから頭を下げた。
「…レオン、お前に仕事がある。」
全く反省の様子がない息子を咎めるでもなく、かと言って甘やかす口ぶりでもない、なんとなく不満そうな低い声でエドガーはとある手紙を執事から渡させた。
「その手紙をまずは読んでみろ。」
その手紙には、国境付近のマレリー地方を束ねるいくつかの領主たちが連名で、「不法越境者をなんとかしてくれ」ということが書かれていた。
マレリー地方は、王宮のある王都イリディアから馬車で二日ほどの場所にある、のどかな田園地帯である。
国境付近でありながら、そこに暮らす人々はみな穏やかで主に穀物の栽培と輸出で儲けを出している。
どうやらその辺の地域でここ数年不法越境者が絶えないという。
隣にあるバルレンシア共和国から様々な理由で必死に逃げてきた言葉の通じない客人を、村人たちは良かれと思って飯を分けたり布団を貸したりしたこと、初めこそ遠慮がちにおとなしく過ごしていたバルレンシアの移民たちだったが、気がつけば村人の三分の一ほどの人数に増えていた。
そしてその人数の増加に比例して、バルレンシア人の態度が横柄になり、綺麗にされていた街にはゴミがそこら中に捨てられたり、落書きや犯罪がどんどんと増えたという。
なぜこんなに増えているのかわからないが、とにかく国境警備隊の報告による越境者の人数がこちらにいるバルレンシア人の人数と明らかに差が出ているという。
領主たちは「見逃してしまっていた自分たち領主に責任があるが、ここまで不法越境者や不法移民が多いと、こちらの手に余るから国でなんとかして欲しい。」と訴えている。
レオナルドは「身勝手な領主たちじゃないですか。」とぼやくと、国王は顎をさすりながら何故?と返事をする。
「まあ良い、レオナルドよ、そなたももう一七歳。
来年には学院も卒業し、本格的に成人した王族のひとりとして公務についてもらうことになる。お前が王太子の素質に見合う器なのか見定めさせてもらう。
まずはこの案件を解決してみよ。
これは民にもお前の存在感を知らしめることになるから、心してかかれ。」
そう言うと、レオナルドは「どうすれば良いのでしょうか。」とまた返す。
「そんなのお前が考えてみよ、事情があるのかもしれん、あるいはどこぞが一枚噛んでいるのやもしれん。
移民を誘い込むブローカーがいるとしたら?
様々な状況が考えられるからな。
私が意見しても、実際に見てみぬことには何もはじまるまい。」




