第十九話
「主任、もうエクストラを獲得したプレイヤーが現れました。」
ーーIMO開発室、監査局にて問題は起きた。
しわくちゃのスーツに身を包んだ一人の若手が咥えタバコの男に報告をした。
「何?想定だと半年後の筈だ!それにイベント中だろうがッ!」
「俺にだってよく分かってませんよ…今情報を出します。ーーープレイヤー名HALCA…タカマガツハラ組の一人で従魔士スタートからの従魔王。猫又を従魔にしています。現在はヘッドギアによる生命維持装置が機能して強制ログアウトしています。M61が担当している者の一人で何らかの介入の痕跡が見つかりました。」
HALCA…あぁ、ネームドを開始早々単独撃破したプレイヤーか。と主任と呼ばれた男は納得した。
M61…通称マリーは進化する人工知能だ。他にも何体かのAIがそれぞれに分担しIMOを管理している。
そしてIMOの人工知能には特徴があった。それぞれに性格が決定付けられているのである。
先に登場したM61…マリーはのんびり屋な貴婦人。気に入った者にはとことん支援し、気に入らない者への対応は粗雑となる。その中で特にお眼鏡に掛かった者は優遇さえされているという。このHALCAというプレイヤーはマリーのお気に入りなのだろうと主任は当たりを付けた。
「なるほどな…それでどれだ?獲得条件の有無は…?」
エクストラジョブ…そのどれもが他を圧倒し、蹂躙することの出来るジョブである。
中には危険なジョブも…主任は問い掛けた。
「……〘魔ヲ統べル者〙です。レベルカンスト、従魔親愛度最大が5体、他にもワールドアナウンスをいくつかクリアしています。ネームド、それにエリアボス撃破による同盟システムの開示も、このプレイヤーの仕業です」
よりによってそれか…
ただの〘魔王〙ならば、まだ対処は出来た。
〘魔王〙は敵対NPC...モンスターを操ることが出来る。更に四人のプレイヤーを〘四天王〙というエクストラジョブに任命出来る権限が与えられている。が対となる〘勇者〙にPVPで倒されると能力を半減されモンスターを操る能力が暫くの間封印される。
勿論〘勇者〙側にもデメリットは有るのだがそれは置いておく。
同時に権限される上記のエクストラジョブはお互いの位置を知る事が出来る。
それならどれだけ良かったか…
と、主任は頭を抱える。
が、暫しの間考え直ぐに指示を出す。
「そうか…分かっちゃいたが仕方ねえ。早急に計画を見直せ。一人のプレイヤーに俺達が作った世界を打ち壊されるまえに…だ!」
主任と呼ばれた男は語気を強めそう言い放った職員達に緊張が走る。
一人の女性が遠慮がちに手を挙げ告げる。
「……ナーフ、しますか?」
主任は少し考え、やがて沈黙を破った。
「いや…それはダメだ。せっかく第2陣がこれからやってくる段階なんだ。売れ行きが落ちたら俺が上に何を言われるか分からん。 ーーそれにIMOは自由な世界がモットーで売っているゲームだ。それを開発側の俺達が反故にしたらそもそもが終わりなんだよ‥分かったら気ぃ引き締めろ!今から全員1時間休憩して来い!今日から暫く帰れないと覚悟しておけ!良いな?」
「「「はい!」」」
そして、彼等は終わらない調整という名の作業に取り掛かるのだった。




