第八話
ウーハー視点
□■□■□■
試合後…俺は一人取り残された。
弟の推しであるハルカ殿には逃げられてしまった…
少し残念だが、また、と言っていたのでまぁそのうちチャンスは来るだろ。
アキハル…アーハーにはどう説明するべきか…いや?奴のことだから会場内に居るかも知れんな。
〈気配感知》、《心眼》を駆使して知っている。魔力を捕まえ、包み込むと相手との距離が明確に分かる。
これにより俺はアーハーの魔力を感じ取る。
…うん。居たわ…すげぇ顔して俺を睨んできてる。何を言われるか知らんが仕方ない、向かうか。
「兄貴!ハ、ハ、ハルカさんは?!」
「とっくに行っちまったよ。すまねえな、フレ交換も会う約束も出来なかった。同盟メンバーと作戦会議だとよ。」
「そっか…今日はこの後配信するんだろうか?それより兄貴に使ったシャドウアサシンスタイル…あれ初見だよな。凄かったなー!どんな感じだった?!」
やれやれ…先程のすげぇ顔は鳴りを潜め、今じゃこんなに純粋そうな笑顔向けてくんだもんな…我が弟ながらよっぽどハルカ嬢に入れ込んでると見た。
8年くらい前にもこんな事あったか。ペルソナバイカーの格闘ゲームでランキング1位だったアキハルが突然現れたMIKEとか言うプレイヤーに負けて、それから1年くらいずっとマイクとやらとゲームで遊んでたな。
同年代らしいし、気が合ったんだろうな。
だがマイクは突然そのゲームを辞めちまった。
中学受験か家の事情かは分からねえがあの頃のアキハルの落胆ぶりは見てられなかった。
っと…そんなことより、質問攻めされる前に話をすり替えっか。
「んな事より他の団員の応援とシクステットの作戦会議だ。まだカンストしてねえ奴らのレベル上げも急がねえとな。ここで話してるのも良いがやる事はまだまだ有るぞ?」
「はっ?!そうだった!直ぐに動こう!いつもありがとな、兄貴!」
「気にすんな。お前はそのまま突っ走れ。他の事は俺達周りの人間でフォローしてやっからよ。」
好きな事に愚直で真っ直ぐ。愛騎晴、お前はそのままでいいんだ。
□■□■□■
ふぅー…
何とかウーハーさんから逃げる事に成功。
男の人と日常生活であまり関わらないから少し怖いんだよね。
前のバイトも店長はおばさんだったし、男性客は他の人がフォローしてくれてたから、何とかなってたっていうのもある。
基本的に大きくてゴツい人には苦手意識があるんだよねー。
ひょろひょろの人も顔が良くても骨折しないか心配で…あれ?
そう考えると私、普通の恋愛とか無理なのでは……?
いや、まぁそれは将来の自分に押し付けてとにかく今はスノウさん達に早く会いたいー。
「ハルカ殿ー!」
およ?私を呼ぶこの声は…
ハルナちゃんだ。
隣には沢山の袋を持った師匠とヤエモンさん、ジンゴさんの姿。
まーた師匠が何かやらかしたか?
「ハルナちゃん!どうしたの、こんな所で?」
「さっきの試合見てたのじゃ!ハルカ殿、どんどん強くなるのう…!わらわ、見てて興奮しっぱなしなのじゃ!」
「うむ。やるではないか。ニ人試合も少しは期待出来そうか?」
「相手が師匠でも負けませんよ?ね、ハルナちゃん!」
「クーックック…わらわも叔父上の知っているハルナでは無いということを見せてやるのじゃ!」
「…そうか。頑張れ。」
そう言って師匠は手元の袋を私にぽいっと投げてくる。
重ッ…!
これ、全部食べ物?
「リンドウ様がハルカ殿やその仲間達への差し入れとして買ってくれたものだ。構わず食べてくれ。」
とジンゴさんがカラカラと笑い、事情を説明してくれて納得。
なんだ、師匠も優しい所あるじゃん。
普段あんなキッツイ特訓させて来るのに実はツンデレだったとか?
ある…のかな?
「ほぼゼンイチロウ様の好みの辛いものばかりだがな。ハルカ殿、残さず食べる様に。との、言明だ。」
いや、違うわ。
私が辛いの苦手なのを知っててこの所業。
ーーやっぱり悪魔じゃん…
「ふぁい…ハルナちゃんまた後でね!」
「のじゃ〜!」
ハルナちゃんと別れ私は今度こそ貸切部屋に戻った。




