第四十二話
私とスノウさんの一騎討ち。
緊張する‥心臓がバクバクとうるさい。
けど不思議と顔はニヤけてくるのが分かる。
ニヤける…?
そうか、私高鳴ってるんだ。
今日は連戦をしてるけどコトネちゃんとの戦いからの大本命スノウさんとの一騎討ち…
これで興奮しないならそいつはただの馬鹿…なのかも知れない。
「ふふっ…」
「へ?どうしたんですか、スノウさん?」
「ハルカと一緒に遊ぶの、楽しい。ハルカはどう思う?」
えへへ、そりゃもちろん楽しい!
スノウさんと遊んでいると不思議と時間があっという間に過ぎてしまう。
こんなに相性の良い人は初めてかも知れない。
スノウさんの手から何本もの苦無が飛んでくる。蹴りで払うと私の背後からスノウさんが突然現れる。
そっか…私今スノウさんと同じ気持ちを共有してるのか…そう思うとまた顔がニヤけるのを自覚した。
「ハルカ…行くよ?これは私なりのハルカへの気持ち…受け取って?ーー《模倣=創造》〈魔闘〉〈跳躍〉〈蹴闘術〉〈渾身擊〉…バイカー…シュート。」
ほわっ?!
まさかの、スノウさんがバイカーシュートを打ってきた?!
え?え?混乱が止まらない。
《模倣》でコピー出来るのってスキル一つだけだよね?
《創造》はユニークスキルであり誰も取得出来るはずが無い…つまりーー
《創造》以外のスキルは自力取得?!
このスキル回し…
完全に私の配信、切り抜き、動きを見て熟知してる?
速っ‥
何とか身体を捩って避けると更に追撃が飛んでくる。
このままじゃジリ貧だ。
私のMPも残り少ない。体力もイエローゾーンに突入した。しかしそれはスノウさんも一緒だ。
ーーここで勝負を掛ける!
「私も楽しいですよ。けど…今回は私の勝ちです!〈言魂〉〘 動くな 〙!〈合成〉《創造》〈豪腕〉〈投擲〉…行っけぇぇええ!希望の飛剣…ジャスティスソード シュート!!」
一瞬の硬直の時間にコンソールを操作しアイテムを取り出す。
取り出すのは余っていたキンキの角、エンキの牙、大量の鉄、大剣を〈合成〉し、更に創造を発動。
重量を大幅に増した鉄塊がスノウさん目掛けて高速で飛んでいく。
マスクドバイカー。シーズン15、マスクドバイカーソードの必殺技。
以前も似たような事をしてたけど、あれからソード熱が蘇って偶に見直してたんだよねー。
今回は第五十二話の最終回でラスボスに使った大剣のデザインに似せてみた。
くぅ〜…カッコいいなぁ…!!
「みご…と。強いね、ハルカ。」
「ありがとう御座います!スノウも凄く強かったです!というかバイカーシュートは反則ですよ?ビックリしたじゃないですか!」
「フフフ…さぷら〜いず」
「アハハハ!なんですかそれ!」
「今流行ってる芸人のやつ。情報収集は欠かさない。」
「あー…スノウ、昼番の時ずっとテレビ見てるもんね。」
「え、そうなんですか?スノウさん意外とテレビっ子なんだ。」
「ふふん!」
・あれ、最後の飛剣やっぱりソードだったんか
・まさかのバイカー対決…熱かった!!
・バイカー全シリーズ見直すか
・ハルカたんおめでとー!
・二人ともいい試合だった!先に脱落した四人も最高だったぜ!
・シニカル権蔵のやつかwww
・あいつトークは微妙いけどボケは一級品だよなー
決闘フィールドが解け、私の目の前に来たスノウさん。
私に抱き着くと上目遣いで声を掛けてくる。
「ハルカ。力を貸してほしい。私もシークレットジョブになりたい。」
「今更何を言ってるんですか?それは勿論ですよ。私の同盟メンバー総出で力を貸しますよ。アカネさん?」
「もう連絡はしてあるよーん。あと三十分以内には集まるはず。」
「流石ですね。ショミーさん、チキさん、モハメドさん。周辺を探索して簡易陣地作成の候補地を探しておいてくれますか。」
「了解だよーボス」
「はわわ…!やっぱり高いところから見下ろせる所が良いよね。」
「ふむ、コノ辺は少シ魔獣のレベルが高イみたいデスね。少し苦戦シソウでーす。」
「ならアタシらが手伝おう。幸いこの辺の地理は頭に入ってるからな。」
「琉歌さんありがとうございます。」
「私はアボウとカボウを探してくるわね。スノウさんはゆっくりしててください!」
「ん、感謝。ゆっくりハルカ分を吸収しとく。」
「スノウさん。なんですか、その変な養分は。」
「ん。ハルカからしか摂取できない希少な養分。効果は私のやる気が少し上がる。」
「そうすか…あー、今日は一旦此処で配信切りますねー。皆さんまたねー!ばいにゃー!」
・エンディングキマシ
・ばいにゃー
・ばいにゃー!!
・てえてえ、乙
・乙
はっ、そういえば大事なことを忘れてた。
「スノウさん、フレ登録と同盟参加お願い出来ます?」
「ん。もちろん。言い出すの遅い。ずっと待ってた。」
おぉ、アバターだからスノウさんの仮面を外した素顔から感情を感じる。
普段見慣れたスノウさん…深雪さんの顔のまま。
違いがあるとしたら髪の色が水色なのと瞳の色が赤ルビーと青サファイアなくらいだろうか。
今は頬を膨らまして少し赤らんでる表情だ。
普段とのギャップに思わず見惚れてしまう。
純白の翼をバサバサと動かし此方に抗議をする様な物言い。
何これ、天使?
スノウさんリアルでもゲームでも天使だったわ。
「すみません。遅くなりました。」
「謝るのか、頭を撫でるのかどっちかにするべき…。けど‥これはこれで良よき。」
「ふへへ、スノウさんもそんな顔するんですね。リアルだと全く真顔から変わらないのに。」
「私の感情はマイクを置いたあの日に置いてきた。⋯…けど、今はハルカが居るから楽しい。」
「うぅっ‥!スノウしゃん…!」
がばっと抱き着いてくるスノウさんの背中に腕を回す。
翼が邪魔だけど、この感触も悪くない。
フワフワのサラサラで凄く柔らかくて。
それでいてほんの少し草木の良い香りがして…って。
あれ、セレーネさん達…は。
「これが大人の恋愛なのですわね?とても素敵です。スノウ、わたくしと代わって頂けませんか?」
「んーん。ハルカの隣は譲らない。けど偶になら貸してあげる、よ?」
「私は犬か猫ですか。それとアカネさん、そのスクショどうするつもりですか?鼻息も荒いし、セーフティバイタル引っ掛かりますよ?」
過度な興奮状態や精神衰弱時などで強制ログアウトされるやつ。
それの正式名称がセーフティバイタル。
これは過去に色々な事故が起きた故法整備されたモノで、これが付いてないVRゲームハードを使ったら最悪逮捕とかも有り得る。
悪用しようと思えば幾らでも考え付く人は居るだろうからね。
「はっはっはー!私にはそんなモノ通用しにゃいのさー!だからもっと濃厚な絡みをーーブフォッ!」
「サクヤちゃんもアカネさん止めて?これ以上は少しヤバ……そういや、サクヤちゃんもソッチ側だったね…」
「ふぉぉおおー!ハルカお姉様の困り顔最高かよ!脳汁とヨダレが止まら…ハッ!ごめんなさいハルカお姉様!私イケない事してますよね。ご褒美を貰うだけの卑しいサクヤに罰を…待って?スノウが抱き着いているこの状況。もしかして今流行りのNTRというやつでは…?……ふぅ…新たな扉が見えそうです。」
サクヤちゃん!
そのドア開いちゃダメ!
貴方にはまだ清らかな心を保っていて欲し‥もう手遅れかな?
「お二人共ストップですわ。サクヤの教育上あまりよろしく有りませんし、アカネは本気で救急車呼ばれかねないので落ち着き下さいまし。」
「うっ…そうだった。確かそんな機能もあったっけ?」
「ええ。ですから落ち着きなさい。ハルカさんもスノウと一度距離を取って下さいまし。これ以上二人が並んでいると胸の辺りが…ゴニョゴニョ」
んん?
最後何て言っていたのか分からないけど、回していた手を離して一歩後ろにさがった。
それからわちゃわちゃしてると応援の皆が駆け付けた。




