第三十八話
スノウさんが戻って来るまでに私は追加の魔物避けをあちこちに仕掛ける。
ハルナちゃんやほかの同盟NPCの皆が色々と教えてくれるからかなり助かる。
そのへんに生えてる雑草と変わらない多年草を調合すれば出来るのだから目から鱗だ。
「お待たせ。紗月、琉歌、ハルカにちゃんと挨拶して。」
「ケッ…テメェがあのハルカか!アタシは琉歌、猫獣人だ!」
「そんな低能な挨拶しか出来ないなんて育ちがたかが知れちゃうわよ?ワタシは紗月よ。スノウ様の弟子…とでも言おうかしら。」
「カァーッ!テメェが弟子たぁ大きく出やがったな!……おい。ハルカっつったか?…何頭を撫でてくれちゃってんだ、コラ?」
「おぉー‥中々の触り心地。これは…癖になりそうだぁ…ちゃんと手入れしてるみたいだし、ちゃんといい匂いもするよ?すー…はー。」
うんうん、獣臭さもない。
これはシャンプー系アイテム使ってるっぽい?
ほのかに柑橘類の香りがする。
「ちょッ!ハルカさん何してるの?幾ら初対面でも限度があります!というか失礼とは思わないの?!」
紗月さんが何か言ってるけど、撫でたいんだから仕方ないじゃん。
騎士王国スタートしてたら獣人は結構居るみたいだけど、多分他のプレイヤーに同じ事してバンされて終わりだったろうな。
「いやー‥ごめんなさい。そこに猫耳が有れば撫でて揉んで吸うのが流儀だと思うので。リアルじゃこんなことしたら一発で呼吸困難に陥るでしょうけど…」
「ハルカは猫アレルギー持ち。躊躇いなく猫を愛でられるってアカネに唆された。それがこのゲームを始めた理由。」
「ボ、ボス。それにしても失礼だとは思うよ?」
「です、です!」
「んー。私普段からこんなんだから気にしたことないかも。あ、もしかして琉歌さん達って結構いい育ちじゃないですか?」
「ーー何でそう思ったァ?」
何となく…と言いたい所だけど、ここは素直に話すか。
一旦配信はサイレントにしといて…
・およ?配信止まった?
・ミュートと暗転やろ
・ハルカさんどうしましたの?
・なんだなんだ?悪巧みか?
・リアル関係じゃねえ?
・確かにハルカ、ペルガの子達と距離近いもんな。この二人もリアル繋がり?
「人から触れられ慣れてない所とか、怒ってる風に見せて実は冷静に判断してる所とか…?スノウさんのリアルでの知り合いとかだったりします?芸能関係の線もある…?いやそれなら学園関係者の方が腑に落ちるか…どっちだろ?」
アイテム欄からお茶を取り出す。なんか喉が渇いた気がして。このゲームその辺も忠実に再現してるぽい?
数時間に一回食事しないと行けないし、激しく動けば当然喉も渇く。
あー、お茶美味しい。あ、スノウさん達も飲みます?どぞどぞ、フジミヤ家から貰った高級茶です。
「なっ?!」
「フフッ…流石はハルカ。自分で辿り着いた。琉歌はハルカの学校の先輩、紗月は…エトワールの妹だよ。」
「ブフォッ!!」
ほえほえ?
エトワールさんの妹?
思わずお茶を吹き出してしまった…
スノウさんに掛らなくてよかった。
あれ…?
確かton点館さんがスノウさんのお兄さんで、エトワールさんは彼女だってアカネさんが言ってた気が…
アカネさん、エトワールさん、ton点館さんは三人とも同じ大学の研究サークルの仲間だとも。
「あと琉歌も今日、ハルカは会ってる筈だよ?ほぼ毎日お昼休みに。」
「ふぇ?お昼…?」
うーん、お昼休みは毎日誰かしら告白しに来るけど、同じ人は毎日だと言われるとその人達は違うよね?
他に会うと言ったら担任とかクラスメイト…いや、一人いたかも知れない。
「もしかして…棗風紀委員長ですか?」
「はぁ…バレちゃしょうがねえ…ハルカ…いや、春風さん、正解だよ。琉歌の正体は風紀委員長の棗 麗香。こっちでは粗忽者プレイしてるんだけどねぇ。スノウさんには1年の頃から世話になってる。私の先々代の風紀委員長さ。ちなみに紗月こと笹島 灯里は先代ね?」
「ええー?!スノウさん、風紀委員長だったの…?はわわわわ…ぎゃんかわ」
学ラン姿(うちは女子校です)に身を包んだ深雪さんが『もう、ミクはダメだなぁ。女の子を毎日誘惑して騒動ばかり起こして…めっ!だよ?私だけを見て…?』とか何とか言われちゃったり…?
はわ!はわわわ…!
「昨日はウチの馬鹿姉がお世話になったそうで…ごめんなさいね、ハルカさん。」
「ーーあ…えっとすみません…妄想の中のスノウさんに耽ってました。せっかくのプライベートなのに…紗月さんもゲーム楽しんでだけなのにお邪魔しちゃって…」
これすっごい気まずい奴だ…え?
じゃあ何?
私、棗委員長の頭を撫でて耳を揉んで吸ってたの?
特大のやらかしだぁ!
はわわ…あばばばばバBA……
「ふふん。だから言った。ハルカに小細工は通じないって」
「クッ…悔しいがその通りだな。春風さん…じゃない、ハルカさん。こっちでも宜しく頼む。」
「ゆき姉の言う通りね。私は何も気にしてないわ。敵の首魁の妹だけど仲良くしてね?」
二人が私に片手を差し出してくる。
「わ、私からも宜しくお願いします。あの…私、同盟を持ってるんですけどお二人とも入ってくれませんか?人手不足で難儀してて…」
「フフ。なんか学校で見せる姿とは全然違うわね。良いわ。同盟、入ってあげる。」
「そうね。けど、ゆき姉のシークレットジョブ獲得までは手を貸してね?」
「ッーー!はい!」
「配信ミュートにしてくれてたんでしょ?私もロールプレイに戻るから戻していいよ。」
「了解です。どんな感じで説明します?」
「リアルの知り合いっていうのは伏せた方が良い。邪推する人が出たらキリが無いし。」
「ゆき姉の言う通り。そうね、ゆき姉の知り合いで通した方が無難でしょう。」
「それって私達も知らないふりが良いよね?」
今まで行く末を見守っていたチキさんが小さく手を挙げる。
「そうしてくれると有り難いわね。」
「分かった!」
「ふふ、私もそれでOKです。」
あ、モハメドさんやっぱりキャラ作ってたぽい?
ロールプレイに近い感じなのか。
「じゃあ戻しますよ。3.2.1…ーー」




