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第二十二話

「ハルカちゃん。もうすぐソウジロウ様達がホウゼンの領主屋敷を制圧するみたいよ。私達は間に合わないだろうけどハルカちゃんは行ってきたらどう?」


アカネさんからの提案に私は首をかしげる。


……あ、そっか。


位置入換の効果で転移できるんだっけ。


ユウヒも居るし気になるから行ってこようかな。


私名目上は総大将だし。


「すみません、気を遣ってもらって。それじゃあ少し行ってきます。アカネさん達はこの後どうするんですか?」


「んっふっふー。私と先に戻ってるプレイヤーNPC達でレベリングと活動資金を稼いでおくよ。あそこ、使っても良いんだよね?ついでに整備と開発もしておくよー」


あそことは魔猪の宴のことだろう。私達の同盟でしばらく独占してどんどん強くなって貰おう。まぁ二週間くらいしたら一律2000メルくらいで貸し出しもするけどさ。


「助かります!師匠はどうされますか?」


「ハルカに着いていこう。少し手を貸せ。印を施そう。」


そう言って乱暴に私の左手を掴むと師匠が右手に手を重ねる。何事かを早口で呟くと私の左手の甲には門の文字が崩し字で書かれていた。


「師匠、これは?」


「我の修める秘術の一つ、転印だ。日に三度だけ、その印を刻んだ者の元へ転移することが出来る。従魔士にも似たような手法は有るだろう?そこな娘達も連れてっても良いが赤いのはフジミヤに帰るであろう?白の娘よ、貴様はどうする?」


赤いのとか白いとか絶対装備を見て言ってるよね。まぁ、区別しやすいからいいんだけどさ。


「なるほど、位置入換みたいな能力なんですね。すごく便利そうですね。」


「ハルカさん、さっきまで戦っていた相手に馴染みすぎでは?もう少し警戒心をーー」


「まぁまぁ。セレーネはどうするー?一旦戻る?それとも連れてって貰う?」


「体力も回復しましたし、何よりハルカさんが心配なので着いていきますわ!さぁ、私を連れてお行きなさい!」


仁王立ちしてプリプリしてるセレーネさん可愛い。


まだ師匠のこと、信用してないみたい。


本当にセレーネさんは癒し枠だなー。


…リアルではお話しするだけでも畏れ多い人なのに。


えっと、ちょっと待ってよー?


新しく追加された役職割振りで…おぉ、有った有った!


「ふむ…まぁ、良かろう。」


「師匠、ちょっと待ってください。セレーネさん、アイゼンの代官やりません?」


「え?え?わたくしがですの?」



「ただの勘ですけど、セレーネさんに任せたいんです。正直少しでも早く復興させたくて。とりあえず1000万メル預けますね。追加の人員を後で来させますので。もッセルさんは……今精神的にかなり疲労してるのでソレビさん、ユイさん辺りを送りますね。」


アカネさんが同盟メンバーから寄付金を募り、更にアカネさん自身も800万メルを私に預けてくれた。


本当はもッセルさんにやって貰おうかなって思ったけど、セレーネさんの方が適任かもしれない。


確信はないけど、何と言うか女の勘だ。


セレーネさんなら立派な領地にしてくれるはず。


「良いでしょう、わたくしにお任せあれ。そう言うことならばメニー、居るのでしょう?」


セレーネさんが後方の茂みに視線を向け、堂々と声を掛ける。やがてがさがさと音を立て姿を現したのはギリースーツに身を包み鉄砲を方に担いだ気弱そうな少女だった。


「ふぇぇー!セレちゃん、怒ってる…?」


「怒って居ませんよ。ハルカさんの護衛、お願いできますか?」


プレイヤーネーム、メニーメニーマニー。面識はあるが、オドオドしていてあまりまともな会話をしたことがない。


けど…なーんか既視感…。私の知り合いにも似たような性格の人が居るんだけど、まさかね…?


「ぼ、ボクなんかハルカちゃんの足手まといになっちゃうよ…?影薄いし…プレイヤースキルも平凡だし。」


「そんなことは有りません。貴女の能力はわたくしが保証します。貴女は類い稀な才能がありますわ。影が薄い?それは貴女の長所でしょう?周囲に息を潜めじっと耐える事が出来る…それを苦もなくやり遂げてしまうのがメニーでしょう?プレイヤースキルが平凡?貴女のスキルは確かに平凡かもしれない。でもそれは言い換えれば誰もが模範とする姿勢そのものなのですよ?貴女の才能をわたくしは誇りに思いますわ。」


「あう…セレちゃん…ありがとぉ…!少しだけ自信で出てきたよ…。ハルカちゃん…ボクも着いて行って良いかな?」


「あはは。セレーネさんの人をみる目や直感は信頼に値しますからね。私は大歓迎です よ、メニーさん!」


ウィンドウを操作してセレーネさんを代官に設定。共有費から1000万メルをセレーネさんに送金しておく。権限は全て委譲でオーケー。セレーネさんなら善政を敷いてくれる筈。


何たってリアルじゃ世界有数の財閥の娘さんだもんね。帝王学とか学んでそう。偏見だけど。



「話は纏まったか?では行こうぞ、緑の娘よ。ハルカ、先に行け。でないと我が転印を使えぬ。」


「あ、はい」


んー、師匠が様子を見守って居たんだけど焦れたのか早く行けと仰る。仕方ない、行きますか。


「ハルカちゃん行ってら~!何かあったら連絡よろろろ~ん!」


「ハルカさん、いつでも私にも連絡して下さいまし!」


「はーい、行ってきます!〈位置入換〉指定、ユウヒ。」


こうして私は三ヶ所目の戦場、ホウゼンへと向かった。



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