表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/26

第二十話

救援の為に辿り着いたアイゼンの地は真っ赤に燃え上がっていた。


遠くでは剣戟の音が鳴り響き、そこら中にはフジミヤ、アイゼンの兵士がポリゴンを撒き散らしいる。


結構数を減らしているみたいだ。


指輪を覗き込むと疲弊したセツカの姿を確認出来る。


どうやら熱に弱っていたみたい。


ごめんね、セツカ…

こんなことになっているなんて想像出来なかった。


落ち込む私にゆっくりと駆け寄る足音。


「ハルカちゃん!」


「もっセルさん、セレーネさん達は?」


偶々私を見付けたらしいもっセルさんに状況を話して貰う。


どうやら交戦中の隙をみてアイゼンの領主と手の者が町中に油を撒いて火をつけて逃亡したらしいとのこと。


フジミヤ軍諸共に、自国の兵士や民さえも巻き込んで…


今にも泣き崩れそうなもっセルさんを支え、ログアウトを促し、私はセレーネさん達が向かった方角へ向かう。


やがて先程から聞こえてきた剣戟の音が近付いてくる。


そしてセレーネさんを目視した。



「セレーネさん!!」


「ウゥ…ウガァァアッッ!!」


「チッ…獣が!クソッ…!追っ手か?リンドウ、相手をしてやれ!さっさと終わらせろよ?」


「…誰に口を聞いている?……はぁ…まあよかろう。」


・北◯神拳伝承者現る!ww

・ハー◯様とケン◯ロウか?

・どっちかつうとラオ◯やろ

・あいつ強そうやなー

・勝てるんか?


セレーネさんは傷付き、その背には子供を庇っている。今にも倒れそうになりながらも体から何本もの槍と矢を生やしながらも懸命に戦っていた。


偉そうなでっぷり太ったおじさんが、筋骨隆々な大男に雑に吐き散らすと自分は重たそうな体を揺らしながら逃げようとしている。


こんなに傷付き、子供を助ける為に自分を犠牲にしているセレーネさん……許せない…許せないよ!


「よくもセレーネさんを…!《創造》!〈跳躍〉〈魔闘〉〈蹴闘術〉…バイカーシュート!ーーーえ?」


「威力は中々だ。だが…足りぬ。」


大男は私の蹴りを片手で受け切ると私を宙に投げ飛ばし、地面を蹴ると私のお腹に大男の拳が刺さる。


「ガハッ…!つ、よ…い…!」


「未熟な小娘よ。出会いが違えば良かったのだが…いや、これもまた…運命か…。」


大男は何故か少し悲しそうな表情を浮かべつつ懐から破砕棒を取り出す。


ヤバい…!これ以上ダメージを受けたらデスペナに…


「我が主君を護るため、第一の家臣登場ッ!なんちってー!だいじょぶー?」


「アカ…ネさん…?どう…して」


聞き覚えのある明るい賑やかな声。

間違いない。


けど、どうしてここに?

アカネさんは私の手を引き上げると回復薬を手渡してくれる。


それを飲む間セレーネさんが健闘してくれている。

助けに来たのにごめんね、セレーネさん。


「説明してる時間はなさそーだねー。今は協力してそのリンドウって奴を倒さないと!簡潔に述べるとソイツ、レベル80オーバーのシナリオイレギュラー徘徊ボスの一人だよッ!!」


「え?どうして知っているんですか?」


「クエスト踏んだリスナーから聞いた。リスナーがセレーネがピンチだって教えてくれて詳しく聞いていく内に正体が分かったの!急いで駆け付けたらハルカちゃんもピンチで今って感じ。とりあえず三人で協力して倒すよ!」


説明しながらも大男の猛攻を受け流し、余裕を見せるアカネさん。何なら少し圧してるようにも見える。


・おっしゃ共闘だ!

・セレーネ大丈夫かー?

・同盟…名前ないんだっけ?まぁ置いといてそのトップ三人が共闘するとか胸熱すぐる!

・お!何なら俺らで付けるか?

・うさぎさんチーム!

・どの辺がうさぎさんだよ?ケットシーは?アカネのお店の名前。尚、女性率が高すぎて二の足踏んでるWW

・ハルカちゃんの同盟やろがい!んー、ピンクの悪魔とかどう?ww

・語彙力皆無の能無し共め。こうゆうのはシンプルのが良いんだよ!千変万化はどう?

・じゃあもじって閃片蛮花…でどう?

・中々的を射ているのでは?

・↑どの辺が?

・"蛮"に決まっとるやろがいWW


「はい!頑張りま…す…」


……熱い。


見れば大男の腕や足から炎が吹き出している。

大男が火を操っているのか、アバターでもこの暑さには堪えられない。


先ずは火をどうにかしなくちゃ。


「セツカ。弱ってるのにごめんね?この暑さどうにか出来る?」


「大丈夫だよ。このくらい……どうってこと…な、い!心配しないで、ハル…カお姉ちゃん。私はお姉ちゃんの従魔。お姉ちゃん…の為に…戦うの…!お姉ちゃんの願…いを叶え、る為に…居るんだ、から!〈銀世界〉発動!……はぁ、はぁ…ごめ、なさ…もうげんか…」


セツカがなけなしの魔力を使い二つ使える内の[奥義]を発動して指輪へ強制送還される。


セツカごめん…私が不甲斐ないばかりに…!


セツカのお陰か、周囲の温度は急激に下がり、大男の動きも少し精細を欠いている。


でもこのままじゃジリ貧かも…


『従魔との絆が一定値を超えました。〈従魔管理〉スキルに新たな力〈因子結合〉が追加されます。お互いを思いやる心…それは絆の力となり、貴方の助けとなるでしょう。』


え、アナウンス?

…いや、今は気持ちを切り替えなくちゃ…!


「アカネさん!」


「ナイス判断だよ、ハルカちゃん、セツカ!…セレーネごめん!…はぁああ!!……《必殺》夢幻流奥義…凪空(なぎそら)…!」


セレーネさんを後方に蹴り飛ばし、安全を確保したアカネさん。


私はセレーネさんをキャッチし、暴れないように抱き締める。私の方が筋力ステ高いのに力が強い…


一つ深く息を吐き、気持ちを切り換えたのか目を閉じ、一拍ーー

ーー開いた瞬間、刀を垂直に起こし、左手で掴んだ鞘を横薙ぎへ、刀は一気に振り下ろす。


その衝撃で微細な地揺れが発動し、次の瞬間には大男の左手が吹き飛んでいた。


え?え…?理解が追い付かない…


てか、アカネさん強ッ!

何が起きたのか全く理解が出来ない。


「ハルカちゃん!防御は私が崩すからとどめを!セレーネ、まだ動ける?」


そう言いながらも別の構えを取る。


あ、あれ見たことある。


アカネさんのオリジナル《必殺》の〈迦楼羅〉だ。


半身に構え高速の抜刀、からの速度を乗せた切り払いを何度も浴びせる。


相手の動きを封じ込め傷も増やすと言う食らうと怖い技だ。


うーん、アカネさん滅茶苦茶上手い。


私の制止から解き放たれたセレーネさん。


腕を胸辺りまで上げ雄叫びを上げる。


「グルルゥゥウアァー!……で…す…わ?!ガウウゥゥゥウアー!!」


あ、一瞬だけ正気に戻った。

セレーネさんはアカネさんと一緒に大男を牽制しているみたい。


っと、その間に新しく手に入れたスキル〈チャージ〉が完了したっぽい。


〈チャージ〉の効果によって、シュイン…シュイン…と一定の時間で音を上げる右足は銀色に輝く。


色々有りすぎたけど、簡潔に私の考えは纏まった。


自然と視界がクリアになる。


新たに手に入れた〈因子結合〉の説明文も読み終えた。


さぁ…私達の出番だよ、セツカ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ